ブレーキフルードはこまめに交換しよう【もう一度、オイルについて考えてみる:Think with A.S.H.】
エンジンオイルと同様に、定期交換が必要なことが知られているブレーキフルード。だが、一般的な認識されている以上に、安全面でも性能面でも重要な要素なのだ。
PHOTO/Y.ARAKI, K.MASUKAWA, K.ASAKURA TEXT/K.ASAKURA 取材協力/ジェイシーディプロダクツ http://www.jcd-products.com/
エンジンオイル以上に重要? ブレーキフルードに注目
これまではエンジンオイルについての基礎知識、その重要性や性能の違いについて学んできた。だが、バイクにはオイル以外にも、定期的に交換すべき液体部品が使われている。燃料であるガソリンは完全な消耗品であるが、水冷エンジンであれば必須の冷却水も要交換。そしてブレーキフルードも同様だ。
「ブレーキフルードは、頻繁に交換すべきですね。使い方によっては、エンジンオイルと同等か、それ以上の交換頻度が求められます」
そう語るのは、本企画で講師を務めてくださっている、高性能オイル&ケミカルブランド「A.S.H.」を展開するジェイシーディプロダクツ代表の岸野 修さん。しかし、ブレーキフルードを、エンジンオイルのように頻繁に交換するとは、あまり聞かない話だ。一般的に言われるのが車検時での交換、つまり2年に1度程度で交換する人が多いだろう。
「よほど使用条件が厳しいのでもなければ、2年に1度の交換でも最低限のブレーキ性能は確保されるでしょう。ですが、ブレーキシステム本来の性能を発揮することは出来ません。バイクのブレーキに多く使用される、DOT4規格のブレーキフルードは、グリコールエーテル系の素材を使用しています。沸点が高く、温度上昇によっての膨張率が低い、ブレーキフルードに適した素材ですが、吸湿性が非常に高い。水分が多くなったブレーキフルードは性能が大きく落ちてしまいます」
下の表にまとめてあるが、そこにあるドライ沸点を見てほしい、新油(新品)の状態で、DOT4のドライ沸点は230℃以上。つまり、温度がそこまで上がるとブレーキフルードが沸騰、べーパーロックが発生し効力を失う。もうひとつのウェット沸点とは、水分を3.7%含んだ時のデータで、155℃以上とされる。規格で定められた範囲内ではあるが、3割も性能が落ちている。
グリコールエーテル系 | ドライ沸点 | ウェット沸点 |
---|---|---|
DOT3 | 205℃以上 | 140℃以上 |
DOT4 | 230℃以上 | 155℃以上 |
DOT5.1 | 260℃以上 | 180℃以上 |
シリコン系 | ドライ沸点 | ウェット沸点 |
DOT5 | 260℃以上 | 180℃以上 |
「ブレーキフルードを半年も使用すると、だいたいウェット沸点まで性能が落ちます。それでも、街乗りレベルであれば問題が起きることはないでしょうが、車検ごとの交換はあくまで最低限と考えるべきです」
また、ブレーキフルード次第でブレーキの使いやすさも変わってくるのだという。「エンジンオイルと同様に、素材の粘度特性でタッチやフィーリングが変わってきます。また、沸点に達しなくても、ブレーキフルード内で気泡の発生が始まるボイリングポイントという温度があります。気泡が発生すれば、ブレーキ効力は落ちますしタッチも悪化します。A.S.H.のブレーキフルードは、ボイリングポイントを高く設定しています」
ボイリングポイントはDOT規格で定められてはいない。つまり同じDOT規格に適合するブレーキフルードであっても、製品によって性能は異なる。ボイリングポイントが高い方が、ブレーキ効力もフィーリングも変化が少なく、高性能なブレーキフルードであるといえる。「もともとは、四輪のル・マン24時間耐久レースで使うために開発したものなのです。
370km/hの最高速から一気に120km/hまで減速するコーナーでは、ブレーキローターの温度は1300℃に達します。そこで、ブレーキ効力を落とさず、フィーリングを変えないためのブレーキフルードです」
バイクのブレーキでは、そこまでの負荷はかからないが、その分性能に余裕があるということ。効力が安定し、より緻密なブレーキコントロールが可能になるはずだ。A.S.H.のブレーキフルードを使用すれば、ブレーキングでの悩みが解消してしまうかもしれない。
ブレーキフルード劣化の最大の原因は水分の混入制動時の熱も大敵
ブレーキシステムはシールやガスケットで気密を保っているが、厳密には密閉されておらず水分の混入は防げない。その水分が、ブレーキフルードを劣化させる最大の要因となる。また、キャリパーのシールやマスターシリンダーのカップといった、内部で擦動している樹脂部品の削れカスがブレーキフルード内に混ざるとスラッジ発生のもととなる。
ブレーキは走行中の運動エネルギーを熱エネルギーに変換して、車速を落とす装置と考えていい。ディスクローターとブレーキパッドの摩擦で発生した熱の多くは、ディスクローターやキャリパーを介して発散されるのだが、一部はブレーキフルードに伝わり、やはり劣化の原因になるのだ。
A.S.H.のブレーキフルードは3タイプ!
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