【ライダーの憧れ?!”ヒザを擦りたい”】Part04:曲がり初めに成功の秘訣がある!
サーキットでのスポーツライディングに目覚めたライダーたちが、最初に憧れることと言えば……いつの時代もやっぱり「ヒザ擦り」のはず。カッコよく、見ていて安心できる理想的なフォームでのヒザ擦りは、要点をひとつずつしっかり押さえてクリアすることで、きっと達成できる!!
どこから曲がり始めるのか? そこに成功の秘訣がある!
ライディングフォームを学び、定常円の特訓でヒザ擦りの感覚を身体に染み込ませた平嶋さん。さらに、リアサスペンションのプリロードを抜くなどの小技も駆使した結果、筑波サーキット・コース1000で一番走りやすいと本人が感じた左ヘアピンカーブでは、ホンダ・CBR250RRでもヒザを擦れるようになった!
写真として切り取れば、それはもう完璧である。 ただし中野さんは、今後の課題としてこのようなことを指摘する。
「約1時間の練習でヒザ擦り達成、本当に素晴らしいです。左コーナーで擦れてしまえば、右でのヒザ擦り達成も時間の問題だと思います。ただし現状で気になるのは、コーナーの立ち上がり側だけでヒザを擦っているところ。これは右図のようなラインになっていることが要因ですが、これだと立ち上がりでいつまでもダラダラと車体を寝かすことになり、転倒やオーバーランのリスクが高いんです。進入ではもっとコース幅をいっぱい使い、コーナー前半からヒザを擦れるようになると、スムーズな走りにつながりますよ!」
ヒザ擦りはライダーの憧れだけどそれだけを目的にしてはいけない
サーキットでのファンライドを楽しむ方々が、ヒザ擦りに憧れる気持ちとは、とてもよく理解できます。まあ、一度体験してしまえば「こんなものか……」なんて思うかもしれませんが、未体験のライダーにとっては悲願なんてこともあるはず。エキスパートライダーだって、MotoGPライダーのような〝ヒジ〞擦りに話を置き変えたら、きっと理解できることでしょう。
ただし、ヒザ擦りを最終的な目的や楽しさにしてしまうのは、スポーツライディングの本質ということを考えたときに、少し違うのではないかと思います。ヒザを擦りながら走るライディングスタイルはケニー・ロバーツさんが確立したとされ、それから約50年間、ロードレーサーたちはヒザを擦りまくってきたわけですが、だからと言って、ヒザを擦らなければ速く走れないわけではないと思います。実際、近年のMotoGPでは、よりリーンウィズに近く足をあまり開かないライディングフォームもトレンドになっていますし。
でもやっぱり私は、サーキットをそれなりのペースで走るならしっかりヒザを擦りたいです。これは、ニースライダーが路面に触れることで、〝センサー〞が1個増えるような感覚があるから。「このあたりが限界ですよ」という情報を感じやすくなり、安心感を得られるんです。
また、これは余談ですがレースの世界では、スリップダウンでイン側に転びそうなときに、ヒザで路面を押して立て直したなんてことも……。まあ実際には、ステップワークとかハンドル操作も本能的にしているんでしょうが、「ヒザに救われた!」なんて場合もあるのです。
だから現役時代、私はニースライダーのグリップ感にもけっこうこだわっていました。プロになった頃にはすでに、滑りにくい革製の時代は終わり樹脂製が主流だったのですが、当時はまだ、滑りすぎて路面の状況が把握できないスライダーも多くありました。世界選手権に参戦するようになってからも、性能が気に入っていた某メーカーのスライダーを何十個も海外まで持ち運んでいました。
近年は、どこのレザースーツメーカーも似たようなグリップ性で、こういう話は聞かなくなりましたが、ヒザ擦りへの憧れついでに、グリップ感や耐久性などスライダーの性能に目を向けてみるのも、マニアックで面白いかもしれません。
やや話が脱線しましたが、この特集を読んで「よし、自分もヒザ擦りに挑戦を……」と考えている読者も多いと思うので、最後にふたつ、注意とアドバイスを。
まず、ヒザ擦りは安心感を得ながらサーキットを気持ちよく走るためのテクニックであり、速度を守って安全に走るべき公道でやることではありません。ぜひ本誌が主催するライディングパーティに参加して、サーキットで挑戦してください!
そして、ヒザ擦りを達成するために必要となるのは、やっぱり基本となる正しいライディングフォームやブレーキングやライン取り。ヒザを擦ることばかりに心を奪われず、それらをしっかりマスターしながら、憧れのヒザ擦りを達成しましょう!