理想のカスタムがきっと見つかる/カワサキ Z900RS カスタムインプレ〈STRIKER〉
パーツメーカーやバイクショップが製作したコンプリートマシンに、青木宣篤さんがテストライド。そのマシンの本質をズバリ見抜き、各パーツによるライディングへの効果も探る。
問/カラーズインターナショナル
TEL045-949-1345 https://www.striker.co.jp/
走りの本質を知る男が創ったリアルスペックマシン
ストライカー代表の新辰朗さんは、全日本ロードや鈴鹿8耐で活躍し、海外レース参戦経験も豊富なプロのレーシングライダーである。’95年に現役を引退されたが、今もサーキットで披露する走りは鋭い切れ味で、現役時代さながらだ。
Z900RSのカスタムにあたっても、新さんご自身がテスト走行を繰り返して仕上げたとのことなので、乗る前から安心感がある。そして実際にライディングしてみて、同じレーシングライダーとして「なるほど、やはりそう来ますよね」「ああ、そういうことですか」など、納得できることが非常に多かった。
ストライカーが手がけたZ900RSをひと言で表せば、本物のレーシングマシンだ。新さんがライディングに対して非常に真摯に向き合っていることがよく分かる。
誤解してほしくないのは、「本物のレーシングマシン」の真意だ。レーシングマシンと聞くと、「かなりの高速域に対応するのだから、一般ライダーには扱いにくい」というイメージを持つかもしれない。
しかし、そのイメージは事実とは真逆だ。深く車体を寝かせて限界域で走るためには、徹底的に扱いやすくなければならない。どこかに少しでも気になる点があったり、わずかでも不安を感じるようでは、限界領域まで攻める気にならないからだ。
ストライカーのZ900RSは、とことん安心してサーキットを攻めることができた。跨がった瞬間には「少し遠いかな」と感じたセパレートハンドルのポジションも、攻めるほどにしっくりくる。
人気のイベントレース、テイスト・オブ・ツクバ仕様とのことで、エンジンはチューンされており、同社のフルエキも装着しているのだが、驚くほどクセがない。感覚的な話になるけれど、ノーマルのパワーグラフにそのまま上乗せされているようなフィーリングで、とても自然だ。
トルク、パワーともに向上しているが、扱いやすさは維持。だからどのバンク角からでも躊躇なくスロットルを開けられる。これこそが「本物のレーシングマシン」たる所以だ。
車体まわりのチューニングも秀逸で、スロットルを開けて後輪にパワーをかけるほどにグイグイと旋回力を増す。「ネイキッドもこんなに曲がるセッティングが可能なのか!」と驚かされると同時に、「スポーツライディングの本質を突き詰めるって、こういうことだよね」と思う。
ペースを上げてもまったく不安感はないどころか、どんどんペースを上げたくなる(笑)。だが、足まわりは硬すぎることがなく、常に高い接地感を発揮してくれる。
まさに本物のレーシングマシン。だが新さんは「サーキットに特化したつもりはないんだ。いいマシンは、どこを走ってもいいものだからね」と言っていた。じっくりと噛み締めたくなる言葉だ。