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【元MotoGPマシンエンジニア”ANDY”の整備講座】自分のバイクはどこまでイジっていい?

元HRCのエンジニアで、鈴鹿8耐に出場したライダーでもあるANDYが、これまでの整備やレースの経験で得てきた「本当に役立つ」メンテナンスに関わるアレコレをご紹介していきます!

PHOTO/K.MASUDA TEXT/ANDY

自分のバイクの整備でやってはいけないことはある?

「整備士じゃないけど、自分のバイクはどこまで整備していいのか?」「友達のバイクを預かって整備したけど、コレって違法じゃないよね?」と、どこまでがOKで、どこからが違法なのか、よく分からない部分も多いですよね。今回はそこを詳しく説明していきます。

結論としては、趣味の範囲で整備するなら整備士資格は不要で、どの場所で何をやっても、法的にはOKです(現実的に、できるかどうかは別として)。

しかし営利目的で整備をするなら、認証を取得した整備工場内でのみ分解整備ができます(’20年から特定整備と名称変更されたが、二輪は分解整備のまま)。

つまり、営利目的なのに未認証の整備工場で分解整備をした場合は違法となります。一方、自分のバイクはもちろん、友達のバイクの整備を手伝った場合でも、金銭の授受が発生していなければ、認証を取得した整備工場が必要無いので違法とはならないのです。

この法律的根拠は、道路運送車両法第78条「自動車特定整備事業を経営しようとする者は、自動車特定整備事業の種類及び特定整備を行う事業場ごとに、地方運輸局長の認証を受けなければならない」です。

バイクにおける「特定整備」には次の4種の整備が該当します。

1:エンジンの脱着
2:トランスミッション、プロペラシャフト、デフの脱着
3:フロントフォークの脱着
4:ブレーキキャリパ、ディスク、配管類の脱着

これらを取り外して整備する場合は、運輸局長から認証を受ける必要があるのです(5つ目にクルーズコントロールシステム部品の脱着もあるが、一部の最新車種のみ)。

一方、未認証工場でも可能な整備もあります。それはオイル&フィルター交換、タンク脱着、チェーン調整、空気圧調整などです。

認証工場でのみ分解整備ができると言いましたが、これらはすべて「ナンバーを装着して公道を走るバイク」に適用される法律です。ナンバーの無いサーキット専用車を未認証工場で、整備士ではない人がエンジンを降ろして工賃を受け取っても法律の適用外となり、問題ありません。

次に整備士資格についてです。実は整備士と言うのは資格であって、運転免許や医師免許のような「免許」ではありません。免許とは、法律で禁止されている行為を、所有免許の範囲に限り行っても良い、とするものです。

一方「資格」は、一定の基準に達している事が証明されたという証です。整備士は国家資格ですから、国が一定の技術・知識レベルにあると証明するものなのです。整備をしてもいいという「免許」ではないので、整備士資格の無い者が自動車の整備を行っても、実はOKです。

「じゃあ、整備士資格は意味を成さないのでは?」と思われそうですが、そんなことはありません。それは認証工場を運営する基準として厳格に定められているからです。

法律では、整備士の人数は、従業員の数を4で割った数(1未満の端数は1とする)以上であること、となっています。従業員数が2〜4名であれば1人、5〜8名であれば2人の整備士が必要となります。つまり、認証を取得しているショップには整備士が必ず在籍し、二級整備士以上のスタッフが必ず存在します。

しかし、無資格や法規基準に満たないショップも現実には存在します。大切な愛車を預けるなら、認証工場を持ち、整備士がいるショップを選ぶことが一番なのです。

ではどうやって見分けるのか?2つの方法を紹介します。

1つは黄色の認証看板があるか確認してください。分解整備をするバイクショップなら「特定整備事業、もしくは分解整備事業」と書かれた看板が掲示されています。

位置についても法規により見やすい位置に掲げることになっています。

2つ目は、各都道府県の整備振興会ホームページの認証工場一覧を確認してください。認証を取得していれば、多くの場合振興会に届けを出しているので掲載されています。

ただし認証工場でも振興会に入っていない場合もありますのでご注意を。

いずれにしても、法令を重く受け止め、遵守するショップは、ユーザーのためを想って整備してくれる、と言えるのではないでしょうか。

注意すべきポイントは「認証工場」と「営利目的」

営利目的でなければ、誰がどこでどんな整備を行っても法的には問題なし。友達のバイク整備もOKです。しかし、整備をショップに依頼するのであれば、認証工場を取得しているお店がマストです。

認証取得の要件には整備士の人数、面積、設備、工具など厳格な基準があり、すべてをクリアする必要があります。工賃を受取り、業として行う場合はこの認証(または指定)の取得が必須です。

しかし認証を取らず整備を行うお店も存在しますから気を付けて下さい。未承認の店舗が分解整備を行うと違法になります。

例えばビッグバイクのタイヤ交換や、ブレーキ部品の整備、フォークの脱着をしてはいけないのです。

認証工場でなければ営利目的の分解整備は×

黄色の「分解整備事業」の看板が掲示されていれば、そこは認証を受けている証拠です。信頼できるショップを選ぶ基準となります。未認証の店舗は価格こそ安いかもしれませんが、リスクがあると言わざるをえません。

自分のバイクならどんな整備をしてもOK

自分のバイクなら路上で分解整備をしてもOK。場所も整備内容も一切規制はありません。ただし、知識も無くむやみにイジるのは禁物。また、保安基準から外れてしまう違法改造はだめです。

用品店の駐車場などで行うときは許可を得るように。

法律違反に対する罰則は結構重たいのです……

未認証の状態で分解整備を行うと、経営者に対し50万円以下の罰金刑が科され、前科一犯となる重い罪です。また不正改造を行った場合、個人や法人に重い罰則が科せられます。

ですからショップ(用品店も)は違法改造車の入庫を嫌がるのです。ちなみに、整備不良の場合は反則金処理(青切符)となり、前科は付きません。

分解整備ってどんな作業?

 バイク(小型二輪)における特定整備とは、エンジン脱着、トランスミッション脱着、ブレーキ部品の脱着及び整備、フロントフォークの脱着、ステムまわりの脱着、ドライブシャフト、デフの脱着が該当します。

また追従クルーズコントロールシステムを装備している車両は、さらに自動運行装置整備に関する講習を受ける必要があります。250cc以上のバイクのタイヤ交換をするにはキャリパーを外すため分解整備となります。

一方、エンジンを搭載した状態で分解したり、フォークを外さずスプリングのみ交換する場合は分解整備には該当しません。フォークを外してオーバーホールする場合は分解整備となります。


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