バランスフリー構造の高性能サスペンションを体験

日立Astemo(4月から社名がAstemoに変更)のサスペンションブランド、SHOWAのバランスフリーサスペンション装着車に試乗してきました。新製品のZ900用と既存のZ900RS用が用意されていましたが、BFF(バランスフリーフロントフォーク) ノーマル車とも乗り比べられたことで、それぞれ特性の違いを理解できました。
PHOTO/Hitachi Astemo TEXT/S.KAWAMURA
問/日立Astemo(アフターマーケット)https://aftermarket.hitachiastemo.com/ja
同条件比較だから分かった操安の狙いの差異
バイクのカスタムには、三種の神器なんて言われるパーツの組み合わせがいくつかあります。そのなかでも、効果がわかりやすいのがリプレイスサスペンションです。
とは言え、その違いが分かるのは、装着して走り出した直後が一番。サスペンションに限らずカスタムパーツを試す際は、装着済みの車両のみで走り出したところで、その物の良さは分かっても、ノーマルとの違いまではなかなか理解できません。
しかし、そこは日立アステモも心得ており、試乗会にはサスペンションキット装着車だけでなく、ノーマル車も用意されていました。まずノーマル車に乗り、直後に同じコースでサスペンションキット装着車に乗るというスケジュールでした。

しかもZ900用だけでなく、すでに販売されているZ900RS用にも試乗でき、セッティングの方向性の違いが体験できるというフルコース。もちろんZ900RSも、サスペンションキット装着車とノーマル車が用意されていました。
試乗の順番はZ900ノーマル車からで、まずは直線路で加速とブレーキングを繰り返してみました。今のバイクのサスペンションはよくできているなぁなんて思いながら乗っていましたが、単体だけだと分からないであろう微細な差異も、直後にサスペンションキット装着車に乗りかえると理解できました。
跨った瞬間は、気持ち前傾姿勢というか前下がりになった感触。そしてピッチング方向の動きで、前後サスペンションの動く量とそのスピードがコントロールされているのが分かります。その違いはテストコースのワインディング路で、さらに明確に感じられました。


ワインディング路にはいくつかギャップがあったのですが、そこを乗り越えた際のショックの収束性があきらかに向上しています。接地感もわかりやすく、それほどスピードを出さなくても、旋回性まで上がっているかのようでした。
続いてZ900RSに乗ってみます。ノーマル車からサスペンションキット装着車に乗り換えると、Z900とは逆にややリア下がりな感触。とは言え腰砕け感はなく、コンフォート性が増した感じでした。

乗り比べられたからこそですが、比較するとZ900用はスポーツ性能が明らかに向上しており、ワインディングを楽しく走れそう。対してZ900RS用は乗り心地重視で、ツーリングで疲れが少なそうな印象を受けました。同じ構造でもそれぞれのコンセプトの違いは、操安の違いとしてはっきり出ていました。
個人的にサスペンションを換えた感があるのはZ900用で、スポーツライディングが確実に楽しくなると思いました。機会があるなら、走り慣れたワインディングでも試してみたいです。
KAWASAKI
Z900RS/CAFE Kit

BFRC-lite 価格:19万8000円
KAWASAKI
Z900 Kit

BFRC-lite 価格:未定
BFF(バランスフリーフロントフォーク)
ノーマルのφ41mmからφ43mmとすることで剛性を上げ、スライドパイプをチタンコーティングすることで作動性を向上。ガス加圧のサブタンクを持ち、キャプテーションを抑制(Z900用はアキシャルマウント世界初)。
フォークトップにスプリングプリロード調整機構を持ち、工具やコインで調整可能。アクスルホルダーに無段階の圧側/伸び側減衰力アジャスターを装備する。そのアクスルホルダーは、Z900RS用がアルミ削り出し、Z900用はアルミ鍛造製を採用(写真はZ900)。


BFRC(バランスフリーリアクッション)-lite
ガス室とオイル室を分けたサブタンク別体構造を採用し、キャビテーションを抑制。インナーロッドはチタンコーティングすることで作動性を向上させている。スプリングプリロード調整は油圧式で40クリック、アジャスタダイヤルは車体左側に装着する。
バランスフリー構造の減衰力アジャスターは圧側/伸び側とも無段階で調整できる。フロントフォーク同様、スプリングはAstemo社開発の材料を採用し、高強度と軽量化を両立、品質にも優れる(写真はZ900RS)。

