モータージャーナリスト伊丹孝裕が語る! 『ダイネーゼ』その魅力に迫る
身体能力を最大限引き出し、最高峰の安全性で守ってくれるブランドがダイネーゼだ。トップライダーはもちろん、ジャーナリストにとってもそれは同じである。
伊丹孝裕
2輪専門誌の編集長を務めた後、独立。マン島TTやパイクスピーク、鈴鹿8耐といった国内外のレースではレーシングライダーとしても活動してきた
モータージャーナリスト伊丹孝裕『私がダイネーゼを選んだ理由』
07年の春、それまで勤めていた出版社を辞めてフリーランスの身になった。長年、思い描いていたマン島TTの参戦準備を始めるためだ。その時、僕は35歳になっていて、子どもはまだ保育園に通っていた。時間的にも金銭的にも猶予はまったくなく、目標まで可能な限り最短距離で突き進もうと決めた。
ケガをして足踏みするなど、もってのほかである。 参戦資格を得るには、なにはなくとも国際ライセンスへ昇格しなければならない。サーキット毎に開催されている選手権に出場してランキング上位でシーズンを終える必要があり、マシンは間違いのないホンダを選択した。
妙な天邪鬼精神やエンスージアズムに駆られて少数派のマシンに手を出している場合ではない。 その一方で、身体を守る装具にはダイネーゼを選んだ。当時は今ほど取扱店が多くなく、しかも高嶺の花のようなイメージもあって日本ではまだメジャーとは言い難かった。 しかしながら、袖を通せばすぐに身体に馴染んでくる着心地は他のものとはまったく異なり、「これなら」と思えたのだ。
誤解を恐れずに書くなら、革自体は他のメジャーなブランドに対して圧倒的に柔らかいわけではない。着る時にはちょっとしたコツも要したものの、胸元のジッパーを引き上げた瞬間からピタッと吸い付いてくる一体感は格別だった。ライディングフォームを取り、体重を前後左右上下へと移動させる時のスムーズさに特化していて、裁断方法やシャーリングに独自のノウハウが詰まっていることは明らかだった。
ちょうどその頃、「レーザーレーサー」と呼ばれる製品が水泳界を席巻していた。独自の製法と素材によって選手の身体能力を引き上げ、世界記録を連発した競技専用の水着だ。無論、実際に触れたことはないのだが、ダイネーゼのフィット感と効用にはそれをイメージさせる高い機能性が感じられた。
ところで、最大の懸案事項がサイズだった。一般的なアジア人の体型と欧米人のそれとの間には決定的な差があり、海外ブランドの多くが日本で浸透しない主因がそこにある。 その点に関して、ダイネーゼほど無理なく身体を包み込んでくれるブランドは他に知らない。
身長174㎝、体重64㎏前後が僕の基本スペックだが、これまで着用した3着のスーツは既成サイズでなんの違和感もなく、フルオーダーで1着作った時の動きやすさは、もちろんそれ以上。コンパクトなポジションを持つ600㏄のレーサーを自在に操らせてくれただけでなく、念願だったマン島へと導いてくれた。
縁あって、そんなダイネーゼの一員として復帰することになり、今後着用していくのがエアバッグ内蔵の「ミサノ2D‐AIR」である。 50歳が近づいてきた今、身体能力は少なからず衰えてきている感が否めない。アクシデントの可能性はこれまで以上に考えておくべきで、それ対する万全の備えが、このレーシングスーツに他ならない。
ダイネーゼは72年にイタリアで誕生した。その年から数えて、世界GPの最高峰クラス(MotoGPも含む)では19名のチャンピオンが誕生しているが、その内の実に10名が一度はダイネーゼに身を包みシーズンを戦った経験を持つ。その圧倒的な信頼と実績に包まれているという安心感は他に代えられるものではない。
エアバッグのカバー範囲は広いがシルエットはスリム
首や鎖骨、肩をカバーするエアバッグを内蔵するが、そのシルエットはスッキリとしたもので違和感は皆無。もちろんバックプロテクターやチェストガードの併用も可能だ
動きやすさとフィット感を両立するグローブ&ブーツ
スーツと併せて使用しているのがSteelProグローブとAxial D1ブーツ。ブーツ内部にはカーボン素材の可動システムが内蔵され、抜群の操作性と保護機能を実現。履いた直後から馴染む
背中のハンプに収納されるシステムはわずか650g
エアバッグに対する心配は重量や異物感だと思うが、異常な姿勢や加速度を検知し、GPSとも連動する電子制御システムは約650g。その反応速度は0.015秒に過ぎず、0.03秒後で完全膨張に達する