【バトラックス ハイパースポーツ S23×青木宣篤 公道インプレッション】ワイドレンジの極み
サーキットで高性能を発揮するタイヤだから、公道では扱いにくい?そんな思い込みを過去へと吹き飛ばすのが、ブリヂストンS23だ。サーキットテストを経て、ウエット路面の公道をS23で走った青木宣篤さんは、グリップ力、接地感、そして安心感のすべてが得られることに驚いた。
PHOTO/S.MAYUMI TEXT/G.TAKAHASHI
取材協力/ ブリヂストン 0120-39-2936
https://www.bridgestone.co.jp/products/tire/mc/
高荷重域でも低荷重域でも安心して走れるという魔法
サーキットは、基本的にシンプルな場だ。タイヤに求める性能は、グリップ力と接地感。これに尽きる。
レースでは、路面温度に基づいて最適な仕様のタイヤを選べる。スプリントレースなら、1セットのタイヤで走るのは40分程度。その間、タイムさえ出ればいい。
だが、公道はそう簡単ではない。路面は刻々と変化する。舗装の種類や状態、乾燥度合い、温度は不安定そのもの。快適性やライフも重要だ。
ブリヂストンのS23は、それらの複雑な条件にしっかりと対応する。しかし、ただ公道を走れるだけなら、数多ある公道用タイヤと変わらない。S23に驚かされるのは、高いスポーツ性も備えていることだ。
以前サーキットでテストした際、S23は極めて高いグリップ力を見せてくれた。ケース剛性が向上し、スーパースポーツモデルのハイパワーエンジンにも音を上げなかった。しかもコントローラブル。文句ナシのスポーツ性能は、フラッグシップモデルRS11さえ超えそうな勢いだったのだ。
だが、バイクの世界では「アチラを立てればコチラが立たず」が常識である。S23が高速・高荷重のサーキットで高い性能を発揮するタイヤなら、低速・低荷重の公道では扱いにくさや気難しさを見せてもおかしくない。
しかし、荷重がかかりにくい公道でも、S23は高いグリップ力を発揮し、豊かな接地感をもたらしてくれたのだ。これは本当にすごいことだ。
特に今回のテスト車両はスーパースポーツ、BMW・M1000RRである。高荷重設定で、およそ低速走行向きとは言いがたいバイクだ。
にも関わらず、S23はしっかりと機能し、安心して走れた。サーキットでの高性能からすれば硬くて強いタイヤのはずだが、公道ではしなやかに路面に追随する。まるで魔法だ。
先ほどちらりと「ケース剛性が向上し……」と書いたが、それだけでは高荷重域と低荷重域という二律背反を満たすことはできないだろう。ブリヂストンの技術者に聞くと、「いろいろやってますので」とのことだったが(笑)、まさにその通りだと思う。ただグリップを上げただけでは、ただケース剛性を高めただけでは、この魔法は成り立たない。
どうやらグルーブ(溝)にかなりこだわったそうで、相当なテストの末にS23のパターンが決まったとのこと。走行時のタイヤの挙動を可視化する技術「アルティメットアイ」も功を奏しただろう。
MotoGPで培われた試験技術「アルティメットアイ」が、公道でも役に立っている。サーキットを実験室として、そこで得た知識と経験を公道にフィードバックする。S23は、魔法のようなワイドレンジさとともに、極めて健全なレースの存在意義も示してくれる。
(青木宣篤)
フロント | 価格 | リア | 価格 |
---|---|---|---|
120/70ZR17 | 2万7830円 | 160/60ZR17 | 3万7400円 |
180/55ZR17 | 4万1140円 | ||
190/50ZR17 | 4万2130円 | ||
190/55ZR17 | 4万3010円 | ||
200/55ZR17 | 4万5650円 |
このタイヤは「公道からサーキットまで」を非常に高い次元で具現化している
前後タイヤとも、グリップレベルは前作S22を上回る。特にリアタイヤのグリップ向上は圧巻。エッジからトラクションエリアでのグリップ力はフラッグシップモデルであるRS11にも匹敵する。フロントタイヤはケース剛性が向上し、今まで以上に思い通りのライントレースが可能だ。
性能は向上しながら、コントロール性も高い。扱いやすい特性なので、ビギナーからエキスパートまで満足させる。今回の公道テストも踏まえると、自走でのサーキット走行会参加に最適なタイヤと言える。