【速報】ホンダの奇跡。“ほぼ”純GPマシン、RC213V-Sを2190万円で発売。【7/13予約受付開始】
2190万円(日本仕様)、159ps、170kg(欧州仕様)! ついに、ホンダからRC213V-Sの発売が正式に発表された。
お値段なんと、2190万円(日本税込)。
ドイツは18万8000ユーロ、オーストラリア24万4000オーストラリアドル、アメリカ18万4000ドル)。
欧州仕様は乾燥で170kg。サーキット仕様のキットを装着すれば160kg(RC213Vは158kg(レース後))。
同じく出力は、117kW(159ps)。キット装着で158kW(215ps)(RC213Vが175kW以上)。
まさに、MotoGPマシン、RC213Vに肉薄する存在だ。 発表会はスペインのカタルーニャサーキットのパドックに設けられた特設ドームテント内で行われた。
テントの中では鈴木哲夫執行役員をはじめとした錚々たる面々によって、RC213V-Sがプレゼンテーションされた。 この記事は、日本で、スペイン取材チームの送ってくれた写真と、ホンダ発表のリリースを元に書いているので、詳細については、以降の弊社刊の出版物をご参考にされたい。
ヒザどころかヒジを擦るほどのアグレッシブなライディングで、一気に注目を集めた、MotoGPライダー、マルク・マルケス。RC213V-Sは、いわば彼が乗るRC213Vの公道仕様だ。
『フルレプリカ』『レーシングマシンそのまま』とは、何十年も前から、スポーツバイクにおいてさんざん使われてきたキャッチコピーだ。しかし、リリースを仔細に読んでいくと、今回の場合、この言葉は多少違うニュアンスで使われていることに気が付く。
ご存じの通り、ホンダにとってレース活動はずっと『走る実験室』だった。そして、その成果を市販車にフィードバックするというスタンスだった。 しかし、今回は『MotoGPマシン自体をストリートバイクとして走らせる』というプロジェクトなのだ。
ここからは、まだ試乗した外部のライダーはいないので、想像を交えて語る部分もあるが……当り前の話だが、MotoGPマシンは馬力がある、軽い……などという以上に『究極的に乗りやすいバイク』なのだそうなのだ。
写真は、マルク・マルケスのRC213V-Sのライディング。リラックスしたフォームだが、それでも後輪の後には黒々とブラックマークが付いているのが見える。
馬力があるとか、レーシーだとか言うと『危険だ』と思う人もいるかもしれないが、本当に乗りやすいバイクは安全だ。ましてや、熊本工場で熟練メカニックによって、毎日1台づつ作られるようなバイク。無駄に公道で危険なことをするライダーの手に渡るとは思えない(2190万円だし)。
Japan as Number One
Japan as Number Oneという言葉は、多くの分野において過去のこととなってしまった。ことにIT情報技術産業などでは、シリコンバレーを中心としたアメリカの後塵を拝して久しく、また別の意味で、深圳をはじめとした中国や、台湾などの工業力にも大きく水をあけられている。 しかし、ことバイクに関しては、いまなお日本、そしてホンダは間違いなく世界の頂点に君臨する。
そのホンダが、その頂点の技術を尽くしたバイクを少量とはいえ、工業製品として量産して市販するという意味はとてつもなく大きい。ここに、日本の武器があり、世界に伍して戦うためのヒントが何かあるかもしれない。発表された資料によると、公道走行状態のRC213V-Sは完成車のパッケージとして、RC213Vのフィーリングを再現しようとしたとのこと。
市販状態でのホイールベースはRC213Vから30mm+の1465mm。前後16.5インチのホイールを使うRC213Vに対して、120/70ZR17、190/55ZR17のタイヤを装着する。
ちなみに、標準装着されるタイヤはプレミアムな高温時のグリップ性能を発揮するブリヂストンのRS10。 フレームは切削加工で作られた部品を中心に、ベテランメカニックが手作業で溶接しボックス構造を作るという。RC213Vと同じ工程で製作することで、『ワークスマシン』に近いマスの集中と、軽さ、高い剛性を得ている。
組み立ては熊本工場のベテラン作業員がかかりきりで、ほぼ1日1台ずつの生産となるという。ビスはほぼすべて軽量高剛性なチタン製だが、チタンビスは締結に必要な伸びがわずかしかないため厳密なトルク管理を必要とする。それゆえ、組み立てにはインパクトドライバーは使えず、熟練工が手作業でトルクレンチを使ってひとつひとつのネジを締めていくという。
一方、クローズドコースでのみ利用可能な『スポーツキット』を組み込むことで、RC213Vの世界に近付いた速度での走行を実現する。このキットにはECU、フロントラムダクト、データロガーセット、エクゾーストマフラー、配線キット……などが含まれており、レーストラックでの走行のための条件を整える。
少量生産のため砂型で作られるV型4気筒1000ccエンジンは360°位相クランクで、カムギア駆動。800ccのRC212V並のコンパクトさを実現している。
ただし、公道走行車両として現実的なメンテナンス性を実現するために、バルブを閉じるためのメカニズムはニューマチックではなくコイルスプリングを使用。
また、ミッションもRC213Vに使われるシームレスミッションではなくコンベンショナルなものが搭載されている。
車両全体がまとう雰囲気は、明らかに市販の量産車のそれではなく、手作業で少量だけが作られるファクトリーマシンのそれ。 この削りのミル跡も生々しいフロントのアクスルからラジアルマウントのブレーキキャリパーまわり、割りピンが刺さっているチタンのアクスル、などを見ても、まるでファクトリーマシンのようだ。
その他にもチタンコーティングの施されたインナーチューブやオーリンズのリザーバータンクなど、バイクに詳しい人が見たら飽きることのない写真だといえるだろう(さすがに温度依存度の高いカーボンディスクは公道では使えなかったようだが……)。