バイクエンジンの基本やトリビア、歴史を彩った名作などを詳しく解説
2ストロークの復活と頂点後の突然の終焉
レプリカと言えば、ハズせないのが「2ストローク」。そもそもホンダ以外のメーカーは2スト主体だったのが、大排気量化や4気筒の登場で、一気に4ストにシフトしたため、70年代中頃は2ストは消滅寸前だった。しかしヤマハが市販レーサーTZ250 の技術を投入した、水冷のRZ250 を80年に投入したことで一気に復活。しかも、バイクブームの影響でWGPや全日本などのレースもメジャー化したため、GPマシンと同じ2ストエンジンが人気を博したのも当然の成り行きと言えた。
また「ピーキーで扱いにくい、低速時のトルクが弱い」といった2ストならではのエンジン特性も(そこに惹かれたマニアックなファンも多かったが)、ヤマハのRZ250R(83年)が装備した排気デバイス「YPVS」により大幅に改善され、同様な機構をライバル車も備えた。そして80年代中頃を過ぎると、市販レーサーと同時開発した、「保安部品付きレーサー」のような2ストレプリカも登場。この流れは、90年代半ばに2ストロークエンジンが排ガス規制や燃費・省エネに対処できずに姿を消すまで続いたのだ。
そして90年代は、意外なことにエンジンにとって革新的な技術はあまり登場していない(もちろん既存の技術の熟成・進化は図られていた)。そんな中で注目されたのは92年に販売されたホンダのNR750。楕円ピストン8バルブのV4エンジンは、まさにレーシングテクノロジーからのフィードバック。しかし残念ながら、あまりの高コストとレースレギュレーションの変更により間もなく終焉を迎えてしまった。
扱いやすさを追求する海外メーカーの猛追
さて国産バイクのエンジンばかり解説してきたが、外国勢はどうなったのか? じつは国産メーカーのように、短いサイクルでエンジンのレイアウトを変更したり、全面刷新されることはほとんどなく、基本レイアウトを80年代以前から踏襲するものが多かった。こう言うとほとんど進化していないように感じるが、そんなことは決してない。
ドゥカティは伝統の空冷L ツインをベースに、88年に水冷4バルブDOHCの851を登場させたし、フラットツイン一辺倒と思われがちなBMWは90度寝かせた水冷4気筒を縦置きに搭載したK100を83年に発売している。そしてこの2台で注目すべきは、フューエルインジェクション(FI)の採用。その後もドゥカティやBMW はFI を熟成して行くが、なぜか日本メーカーがFIに本腰を入れたのは90年代後半からだった。
日本メーカーも黙ってはいなかった。15年のYZF-R1 を皮切りに、各メーカーが次々と新作を投入。バイクのエンジンはここにきて、高回転・高出力を追求した時代から、いかにライダーが扱いやすく、効率よく使えるかの時代へ明確にシフトしている。躍進する海外メーカーと、栄華を築いてきた日本メーカーのエンジン制御における熾烈な争いは今後も激化を極めていくだろう。その動向からは目が離せない。
バイクエンジンにおける注目すべき次世代の電子制御は?
エンジンパワーモード
最高出力やトルク、スロットルレスポンスを、レイン、スポーツ、レース等の走行シーンに合わせて切り替え可能。スリックタイヤ装着時のモードを装備する車種もある。
トラクションコントロール
後輪の空転を検知し、電子制御スロットルや点火・燃料制御でトルクをコントロールして、最大効率でトラクションを得る装置。介入レベルやオン/オフの選択が可能。
オートシフター
スロットルを戻さず、クラッチも切らずにペダル操作のみでシフトアップ可能。トラクションが途切れないので、コーナー立ち上がりのバンク中でもシフトアップできる。
DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)
奇数ギヤ/偶数ギヤそれぞれにクラッチを装備する有段式ミッションを採用するホンダのオートマチック機構。フルATはもちろんボタン操作によるセミATでも走れる。]]>