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【Historic Bikes/KAWASAKI 900Super4 Z1(カワサキ・900Super4 Z1)】〜元祖ビッグバイク。Zの原点がここにある〜

※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。

激化する開発競争の末に誕生したZ1

世界最速の座に就くという極めてシンプルなコンセプトを掲げられ、67年に開発プロジェクトが立ち上げられ69年に発売を開始したカワサキ・500SSマッハIII(H1)。その時に発表にされた「最高速200km/h」、「ゼロヨン加速12.4秒」という数値が目標の達成を世界に知らしめることになった。

そんなH1とほぼ時を同じくして、カワサキ社内ではもうひとつのプロジェクトが進行していた。それが後の900スーパー4、いわゆるZ1の誕生をもたらした開発構想だ。 というのも、カワサキはH1の成功に安心してはいなかった。なぜなら、そこに搭載される2ストロークエンジン(498cc3気筒)は当時からすでに排ガスや騒音を問題視する声があり、遅かれ早かれアンチ2ストロークの波が押し寄せるのは明白だったからだ。

事実、70年には厳しい環境基準を定めたマスキー法がアメリカで適用されるなど、4ストローク化へのシフトが急務だったのである。 だからと言って、単なる4ストロークではビッグマーケットであるアメリカで戦えない。H1を超えるパフォーマンスを持っていることは必須だ。そこでまずエンジンの仕様を750ccDOHC並列4気筒にすることが決まり、開発が本格化。量産の目途もつき始めた68年、ホンダから突如発表されたのがCB750フォア(K0)だった。

排気量も並列4気筒という形式もカワサキの構想とまったく同じ。ホンダのシングルカムに対し、ツインカムだったことはスペック上のアドバンテージだったが、まだ製品化されていない以上、絵に描いた餅である。そこでカワサキは計画を変更。ホンダをパワーで圧倒するという決定を下し、完成に至ったのが市販車史上前例のない、903ccもの排気量を持つZ1だった。 72年秋、満を持して生産が始まったそれは世界中で爆発的なヒットを記録して大排気量マルチ時代の到来を決定づけたのである。

1972 900Super4 Z1/’67年に開発がスタートし、途中排気量の拡大など紆余曲折の末に’72年11月に発売を開始。カワサキ初の空冷4ストローク並列4気筒だ
1972 900Super4 Z1/’67年に開発がスタートし、途中排気量の拡大など紆余曲折の末に’72年11月に発売を開始。カワサキ初の空冷4ストローク並列4気筒だ

「エンジンがザラついているように思うかもしれないけれど、これが正しいZのフィーリング」

さて、目の前のあるZ1はバイク王が維持・管理している個体だ。年式はZ1Aと呼ばれる74年型で、この年式の途中からエンジンが無塗装のアルミ地になったことが外観上の主な特徴である(初期型はブラック塗装)。

このZ1で走り始めた宮城はひたすら周回を重ね、戻ってくると開口一番「エンジン完璧!すごく気持ち良かった。スロットル開け始めのレスポンスがよく、キャブレターの同調もしっかり取れているからバラつきもまったくない。久しぶりのこんないいコンディションのZに乗ったよ」と上機嫌だ。 宮城はかつてZ1100Rを所有するなど、カワサキ車との縁は意外と深い。しかしその究極はZ1のエンジンを搭載した「モリワキ・モンスター」だろう。

「まだノービスだった頃、できるだけパワーのあるバイクで練習したかったから森脇さんにお願いして鉄フレームのモリワキ・モンスターを譲ってもらい、アルミフレームのマシンに乗せてもらったこともある。このZはノーマルだけど、ちゃんと共通する部分があって昔を思い出せたよ。ホントそれくらいよく走る。現代の感覚からすればエンジンがザラついているように思うかもしれないけれど、これが正しいZのフィーリング。回転の上昇と鼓動感がきれいにリンクするからスロットルを開けるのが楽しく、ハンドリングも自然。いやぁ素晴らしい」

アルファベットの最後を締めくくる「Z」には「これ以上はない」という意味が込められているが、そこに託した思いは今なお乗り手の心を揺さぶるのである。

KAWASAKI 900Super4 Z1(カワサキ・900Super4 Z1) ディテール

タンクからテールカウルに至る丸みを帯びた伸びやかなフォルムが美しい。’78年のZ1-R の登場以降、スクエア化が進んだ
タンクからテールカウルに至る丸みを帯びた伸びやかなフォルムが美しい。’78年のZ1-R の登場以降、スクエア化が進んだ
メーターは日本電装(現デンソー)製。各種インジケーターがこの並びになったのはこの’74年型からで’72~’73年の生産車は順番が異なる
メーターは日本電装(現デンソー)製。各種インジケーターがこの並びになったのはこの’74年型からで’72~’73年の生産車は順番が異なる
耐久性に優れる組み立て式のクロモリ鍛造クランクシャフトが投入されたエンジン。ボア×ストロークはともに66mmというスクエアな仕様で外観がシルバーになったのは’73年の途中から。初期型はブラック仕上げとなる
耐久性に優れる組み立て式のクロモリ鍛造クランクシャフトが投入されたエンジン。ボア×ストロークはともに66mmというスクエアな仕様で外観がシルバーになったのは’73年の途中から。初期型はブラック仕上げとなる
キャブレターには強制開閉式のミクニ製VM28SCを採用
キャブレターには強制開閉式のミクニ製VM28SCを採用
Z1のアイデンティティにもなっている4本出しマフラーはその数によって4気筒エンジンであることをアピール。堆積したカーボンを除去できるように脱着式のバッフルを内部に備える
Z1のアイデンティティにもなっている4本出しマフラーはその数によって4気筒エンジンであることをアピール。堆積したカーボンを除去できるように脱着式のバッフルを内部に備える
ヒンジによって支持される開閉式のシートを装備。内部にはエアクリーナーボックス、バッテリー、車載工具が収納されている
ヒンジによって支持される開閉式のシートを装備。内部にはエアクリーナーボックス、バッテリー、車載工具が収納されている
マフラーと同様、Z1の個性を決定づけた流麗なティアドロップ型の燃料タンク。容量は18Lで’75年型以降は16L
マフラーと同様、Z1の個性を決定づけた流麗なティアドロップ型の燃料タンク。容量は18Lで’75年型以降は16L

Specifications:KAWASAKI 900Super4 Z1(カワサキ・900Super4 Z1)

エンジン空冷4ストローク並列4気筒
バルブ形式DOHC2バルブ
総排気量903cc
ボア×ストリーク66×66mm
圧縮比8.5対1
最高出力85hp/8500rpm
最大トルク7.5kg-m/7000rpm
フレームダブルクレードル
サスペンションF=テレスコピックフォーク正立式
R=スイングアーム
ブレーキF=シングルディスク
R=ドラム
タイヤサイズF=3.25 -19
R=4.00 -18
全長/全幅/全高2005/800/1150mm
軸間距離1490mm
乾燥重量230kg

※この記事は過去に掲載された記事を再編集した内容です。

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