直4等間隔爆発エンジンの魅力–KAWASAKI Ninja ZX-10R SE 編
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世界選手権5連覇の実力 スーパースポーツを手に入れ、それを操る醍醐味はエンジンに因る部分が多い。その形式はメーカーによって様々なこだわりがあり、時代や流行によって変遷している。そんな中、公道用市販車に最も近いとされているモデルで争うSBK(※スーパーバイク世界選手権)で圧倒的な強さを誇り、昨年で5連覇を達成しているのが「KAWASAKI Ninja ZX-10R SE」。市販車最強のエンジンを持つ200ps級国産スーパースポーツのパフォーマンスに迫っていこう。
漢カワサキというイメージとは裏腹にエンジンは上質そのもの
カワサキの直4スーパースポーツと聞けば、パワフルなエンジンを大柄な車体で包み、ストレートを突き進むイメージがあったのだが、どうやらそれはひと昔前のこと。今回初めて乗ったZX‐10R SEはまったく違っていた。 なぜなら武骨さや荒々しさは微塵もなく、上質そのものだったからだ。
近年、取材の現場から少し離れていたこともあるが、これには驚かされた。どこにも尖った部分がなく、コンパクトなライディングポジション、耳に心地いいエキゾーストノート、コントローラブルなエンジン、介入を感じさせない自然な電子制御、そして快適な乗り心地……と、そのすべてがポジティブな方向に裏切られることになった。
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ツアラーとまでは言わないが、足着き性も含めて街乗りでも難なく使え、おそらく長時間の高速巡行でも疲労は少ないだろう。それでいてコーナリングも楽しく、かつての「漢カワサキ」感は皆無。予想外の万能性に時代の変化を実感した。
その印象に大きく貢献しているのが、SEならではの電子制御サスペンションだ。ショーワのBFFとBFRCライトをベースにしたそれは、減衰力をロード/トラック/マニュアルの3パターンに切り換えることができ、今回選択したトラックでも過度な硬さはない。
ペースが遅い時はしなやかに動き、速度を上げたり、ブレーキングで大きな荷重を掛けた時はストロークを適度に抑制。より正確に書くなら、そうした制御をまったく気づかせないほど、タイヤが自然に路面を捉え続けてくれるのだ。
エンジンもそれに見合ったもので、パワーモードをフルにし(他にミドルとローがある)、203?の最高出力を解放しても開けていける。もちろん、過渡特性やトラクションコントロールが適切に機能してくれるからだが、パワーが不自然に間引かれることはなく、スロットルを開けた分だけ、欲しいと思った分だけ、加速力を得ることができる。
細かい部分のきちんと仕立てられていて、例えばクイックシフターの作動精度は完璧。特にシフトダウン時の見事なブリッピングと滑らかなギアの切り換わりは感動すら覚える。キズを自己修復するというペイントも含め、カワサキはユーザーの気持ちを満たすのが上手だ。
“どこからでも開けられるトルクが魅力”(宮城)
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“ツアラーにもなり得るオールラウンダー”(伊丹)
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Details & Specifications –KAWASAKI Ninja ZX-10R SE
ホンダがCBR900RRをデビューさせてほどなく、カワサキにも似た動きがあった。それがZX-9R(’94年)の存在で、ZZR1100の力強さとZXR750Rの機敏さが1台に凝縮されていた。このモデルは成功し、’04 年についにZX-10Rへと進化。特に’11年のフルモデルチェンジ以降の活躍は目覚ましく、まずは’13 年にSBKでタイトルを獲得。
’15年からは5連覇を達成し、さらに’19年には鈴鹿8耐も制覇するなど、最強最速の名を欲しいままにしている。現行モデルは’19 年型として登場。左ページにある通り、全3機種のグレードで構成される。絶対的なパワーよりもスムーズな出力特性を身上として、他メーカーのモデルとは一線を画す仕上がりを持つ。
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赤いヘッドカバーにみる凄み
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Ninja ZX-10R SE 270万6000円
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Ninja ZX-10R KRT EDITION 210万1000円
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Ninja ZX-10RR 298万1000円
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Specifications Ninja ZX-10R SE
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