油冷エンジンがついに復活! 冷却効率を高めた新エンジンで登場 SUZUKI GIXXER SF250
SUZUKI GIXXER SF250 ニーゴーの魅力がすべて詰まったスズキの良心 2019年東京モーターショーのスズキブースでは油冷の復活が話題になった。その時に発表されたモデル「ジクサーSF250」と「ジクサー250」がいよいよデビュー。正確には復活というよりもまったく新しい機構として開発されたもの。今回はジクサーSF250のインプレッションを通して、その性能に迫っていこう。
乗れば誰もが分かる数字以上の魅力
バイクブームど真ん中世代の僕にとって「油冷」というワードは決して外せない。85年にデビューしたGSX‐R750はまさに衝撃で、空冷でも水冷でもないこのエンジン冷却システムは、ヨシムラの活躍もあってあこがれの対象だった。 その後、リアルに油冷モデルに触れてきた。だからこそGSX‐R750系油冷エンジンの最終モデルとなった、バンディット1200/Sの「油冷ファイナルエディション」という名称には一抹の寂しさを覚えた記憶がある。
そしてGSX1400以後、油冷をうたったモデルは存在しなかった。 ようやく油冷という単語を聞いたのは、昨年の東京モーターショー。そこには新開発の油冷エンジンを搭載したジクサー250とジクサーSF250が参考出品されていた。 かつての油冷エンジンは細かく美しい空冷フィンが併用されていたが、ジクサーのエンジンにはそれが無い。高い流速でオイルを流すことにより、効率的に冷却できるという。
新開発油冷SEPエンジン
そうは言っても油冷という響きだけで昂るものがあるのは事実。期待を込めてスタートボタンを押した。スロットルを全く開けずにクラッチを繋いでみる。249㏄単気筒は、ストールの気配なくスルスルと走り始め、そのまま2速にシフトアップしてみても普通に走り続ける。この低速トルクが太くて粘るエンジンの特性は、ギクシャクすることもなく街乗りで実に扱いやすい。加えて車重が軽く、フルカウルをまとっているのにハンドル切れ角はたっぷりなので、Uターンは……なんて言い訳はできない。
トップギア6速で60㎞/h走行時は4000回転。この速度域なら、シフトダウンせずとも十分に加速してくれる。そのまま速度を乗せていくと100㎞/hで6500回転まで上昇。ただし、そこからTOPロールオン加速を行うと、まだ最大トルクの発生回転に達していないため、トルクフルとは言えない。元気に加速したいのであれば、ギアを一つ落とす操作は必要だ。
ワインディングでスポーツするなら5000回転以上はキープしたいところ。そこから最高出力を叩き出す9000回転を超え、レッドゾーンの始まる1万回転まできれいに回ってくれる。最初はトルク型のエンジンかと思ったが、期待以上に高回転も楽しめる味付けだ。26psという最高出力は決してライバルをリードするものではないが、ステージがサーキットでない限り、スペックに不満を感じることはないだろう。
サスペンションはフロントが柔らかめ、リアが硬めのセッティング。特にリアショックは1Gでの沈み込みが少なく、跨ると腰高な印象を受ける。とは言えシート高は800㎜なので、足着き性は良好だ。セパレートハンドルを装備するが、それはスーパースポーツライクな低い位置に備えられたものではなく、上半身は自然な前傾となる。
ハンドリングだが、先にも述べた柔らかめのフロントセッティングにより、ブレーキングでフォークを縮めるというより縮んでしまう。もちろん腰砕けになるようなことはないが、リアが硬めなので、ライダーが高い位置にいる状態から、フロントを軸にくるりと向きを変える印象を受けた。
意識して向きを変えるような入力を必要とせず、バイク任せでコーナーをクリアしていってくれる。車体のベースとなったジクサー150から、ねじれ剛性を高めたメインフレームに、前後に装着されたダンロップ・スポーツマックスGPR‐300の特性も相まって、実にスポーティな味付けと言える。
重箱の隅をつつくなら、スクリーンの低さが気になった。せっかくのフルカウルなのに、上半身のウインドプロテクションが期待できないところが惜しい。もうひとつはブレーキレバーの調整機構。レバー位置は決して遠くはないが、新規需要獲得を狙うのであれば、あらゆるユーザー候補に向け採用してほしかった。
ただしこれらは、あえて探せばのレベル。戦略的な価格設定が先行してしまうかもしれないが、実車を目にし、乗ってしまえば、だれもがその数字以上の魅力に気づくはずだ。(河村聡巳・ライダースクラブ編集長)
あらゆるシーンで楽しめるオールラウンダーさが魅力 GIXXER SF250-DETAIL-
伝統の油冷ではなく、革新の油冷を新開発
ネイキッドもラインナップ
3種類のカラーラインナップ
「もしかするとこれで充分なのかもしれない」伊丹孝裕
排気量問わず、年々車体価格が上昇する中、スズキらしいコストパフォーマンスの高さが光る一台だ。とはいえ、「価格を踏まえると及第点」というような前置きを必要とするわけでもなく、スポーツバイクとして満足度の高いパフォーマンスを発揮。伸びやかに回っていくエンジンは実に心地よく、パワーにまったく不足はない。レーシングライクなデザインながらポジションは快適で、ツーリングや街乗りも幅広くカバー。高い万能性が魅力の一台だ。