刺激を求めるならコレ一択!? SSモデル国内仕様モデル試乗―直4等間隔爆発エンジン―
試乗インプレッション CrossTalk 宮城×河村×伊丹 直4等間隔爆発エンジンを搭載する200ps級国産スーパースポーツのパフォーマンスに迫った国内仕様モデル試乗を行なった。テストライダーは、本誌でおなじみのテスター・宮城 光、伊丹孝裕、本誌編集長河村で国内のフラッグシップモデルであるHonda CBR1000RR-R FIREBLADE SP、SUZUKI GSX-R1000R ABS、KAWASAKI Ninja ZX-10R SEに試乗。今回は貴重な試乗後の3人によるそれぞれのマシンの乗り味を対談方式でレポートしていく 。
同じエンジン型式なのにまったく違う それぞれのモデルの おいしいポイントとは?
河村 当初そういう意図はなかったのですが、宮城さんのなにげないひと言を本企画のタイトルに使わせてもらいました。「直4等間隔爆発の凄み」というのがそれで、同じ型式に縛ったことでモデル毎のキャラクターが鮮明になりましたね。
伊丹 ヤマハからYZF‐R1が登場するまでは、直4と言えば基本的に等爆とイコール。国産モデルを乗り継いできたライダーにとって馴染み深いエンジンですが、そもそもこ の形式の魅力ってどこでしょう?
宮城 やっぱり、いかにも回っている、爆発しているっていう感覚が分かりやすいところじゃないかな。回転が上昇していく時のタコメーターの動きの早さや、その時にエンジンから伝わってくるバイブレーションがダイナミックでしょ? オーバーレブ特性もよくて、回り切ったと思ってもさらに余力がある。エンジンらしさという点で、不等間隔爆発やV型にはない刺激が楽しめると思う。
自己修復機能を持つハイテク塗装
河村 刺激と言えば、CBRは突出していました。乗り始めは「あれ? 意外と力がないな」と思っていましたが、回転が上昇すると途中から一 気にパワーが炸裂。積極的に身体を使わないといけないこともあって、正直僕には手ごわいモデルでした。
伊丹 200psの領域では出力が少々高くても低くても誤差のようなものだと思っていましたが、CBRの218psはちょっと普通じゃない。 袖ケ浦のストレートは決して長くありませんが、明らかに他の2台とは加速感が違いました。
宮城 河村さんが言う通り、CBRは身体を使い、積極的に入力した方が活き活きと走る。従来のモデルは 軽快感をウリにしていたんだけど、 レース用に仕立てていく場合はホイールベースを伸ばしたり、フロントの荷重を増やしたりしながら安定性を高めていく必要があった。なぜなら、レーシングスピードでは軽さが敏感な挙動につながるからなんだけど、新型は最初からその領域を想定して作っていることが分かる。その意味で、「BorntoRace」というコンセプトに偽りはない。
どうやらウイングレットは効いている
河村 逆にスズキはフレンドリーですね。バイクなりに乗れるというか、 特になにもしなくてもスッとバンクする。想定している速度レンジが異なる印象を受けました。
伊丹 スズキはGSX‐Rに限らず、ストリートにプライオリティを置いていますから、そこにブレはないですね。機構は可能な限りシンプルにして、制御を切ったスッピン状態でも裏切りがなさそうな包容力に魅力を感じます。
宮城 GSX‐Rのキャスター角、 トレール量、ホイールベースはいずれも3台中、最小。クイックな動きはその数値通りのもので、分かりやすいよね。装備面では、今や電子制御サスペンションが当たり前になりつつあるものの、機械式にもいいところがあって、セッティングに対する反応が一定で素直。思いもよらないところでフィーリングが変わったりしないので、きちんとアジャストできるライダーにとっては好ましく、その意味で玄人ウケする。
河村 玄人という言葉はカワサキにふさわしいような印象がありましたが、いい意味で裏切られたのがZX-10R SEです。きっと気のせいなのでしょうけど、エンジンがあまりにもスムーズで、203psの最高出力を引き出せているんじゃないか、と思えるほど。スロットルに対する吸気音と排気音も心地よく調律されていて、驚きが多かったですね。
それぞれ異なるタイヤの銘柄
宮城 エンジンの過渡特性が抜群にいいよね。もっと細かく言えば、スロットルを少し開けて、チェーンにテンションが掛かる時の最初の開け口が本当によく作り込まれている。ここはスズキが得意とする部分で、それは今回のGSX‐Rでも体感できた。でもZX-10Rは後発なだけに、さらに緻密な印象を受けた。じゃあその先は? と聞かれると、そこもいい。低回転からトルクがついてきて、バイブレーションもなし。伊丹さんが最初に乗った時のひと言目が「ツアラーみたい」だったけれど、確かにそういう側面がある
伊丹 開け始めのコントローラブルな感じやトラクションの分かりやすさって、どちらかと言えば不等間隔爆発が得意とする部分だと思うのですが、直4等間隔でここまで仕上がっていると見事と言うより他ありません。ZX-10Rのデザインは長い間、キープコンセプトで新鮮味には欠けますが、逆に熟成という言葉の重みを思い知らされましたね。
MotoGPマン由来のスリムなフレーム
等爆以外にもいろいろとあるエンジンの爆発間隔
宮城 その通りだと思う。例えばメーターはTFTでもフルカラーでもないけれど、乗っている時の視認性は一番優れている。スーパースポーツに本気で乗る時は、車体から伝わる情報やコースの状態に専念していなくてはいけない。そんな時にメーターの細かい文字を読み取って、頭で解析している場合じゃない。その点、ZX-10Rの回転計や色の変化、必要最小限の文字情報は実に分かりやすく、ヘルメットとの距離感も適切で視線の移動量も少ない。こういうことを大切にするエンジニアかテスターがいるんじゃないかな
河村 レースの世界であれだけの活躍しているわけですから、カワサキのスタンスが今の最適解と言っていいのかもしれません。
宮城 SBKで5連覇、鈴鹿8耐でも優勝し、マン島TTも制覇。ありとあらゆるカテゴリーとコースを制しているのだから、そういうことになるよね。市販車にもその片鱗がきちんとあるから、ファンにとってはたまらないモデルなはず。
河村 CBRとGSX‐Rをおすすめするとしたら?
宮城 CBRはスキルによって感じ方が変わるんだけど、新しい引き出しを求めようとした時に応えてくれるモデル。GSX‐Rは自分の腕で操ることに満足を覚えたい職人気質 のライダーに合っているんじゃない かな。いずれにしても、モデルイヤーでガラリと印象が変わるのがスーパースポーツのおもしろいところ。 また違うカタチで乗り比べたいね。