「BIMOTA」ハブステアの可能性を追求するイタリアンの美学
BIMOTA TESI3D Naked 積み上げた技術と理想をバイクの未来に繋げる 70年代初頭からフレームビルダーとして始まり、珠玉のコンストラクターとして名を馳せたビモータ。クロモリ鋼管を巧みに配したフレームが生み出すハンドリングに、多くのエンスージャストが憧れた。 が、その対極ともいえるハブセンターステアリングのTESI‐1Dを世に放ったのもビモータ。89年に同社のチーフエンジニアに就いたピエルルイジ・マルコーニ技師が、大学の卒業論文を元に作り上げたTESI‐1Dは、バイクの新時代の幕開けともいえる衝撃を与えた。 小規模メーカーゆえに幾度も経営危機を迎えるが、2005年にはヴァイルス984C32ⅤをOEMとしたTESI‐2Dをわずか25台だが販売し、翌06年に自社製のTESI‐3Dを発売した。そして2015年、フロントサスをカンチレバー方式に変更し、アップハンドルやタンデムシートを備えたTESI‐3D NAKEDが登場。そのファイナルモデルに宮城 光が試乗した。
ハブセンターステア機構は、ピエルルイジ・マルコーニ技師のボローニャ大学の卒業論文がベースとなっている
「走り始めた瞬間は、一般的なテレスコピックフォークのバイクと〝何が違うの?〞というほど違和感が無い。ところがブレーキをかけると、その違いに驚く」と、宮城。
「テレスコとまったく異なり、ハードにブレーキングしてもほとんどノーズダイブしない。ところが路面のわずかな凹凸に対しても前輪は追従して上下動する。以前、ホンダコレクションホールの動態確認テストで乗った、elfのGPマシンを思い出した(ロン・ハスラム選手がスタート直後、タイヤが温まる前に速さを発揮した秘密を理解できた)。
そしてロール軸がテレスコ車より遥か下方にあるためリーンした際に車体の上部を振らず、鋭く曲がり始める。コレは軽さとも敏感ともいえ、難しさを感じさせる部分ではあるけれど……。表現が難しいのだが〝ドライバビリティがあるのにスタビリティが高い〞と言えばいいのだろうか。端的に言えば『軽いのに不安定感が無い』。こんなに〝エンジニアがやりたかったコト〞を具現化したバイクは滅多に無い。だから、その想いに同意できる人にとって最高のホビーであり、高い満足度を得られる」
――ビモータは昨年、カワサキの資本によって復活した。そのため、ドゥカティのエンジンを搭載するこのTESI‐3D NAKEDもファイナルモデル(国内には10台ほど入荷予定。前後サスにオーリンズ製TTXショック、フロントブレーキにブレンボ製Stylemaを装備)をもって終了するので、興味のある方は今が最後のチャンスだ。
とはいえビモータのハブセンターステアは不滅。Ninja H2のエンジンを搭載する「TESI H2」がスタンバイしているからだ。開発にはTESI‐1Dの生みの親であるマルコーニ氏も加わり、既存のシステムでやり残した部分も大幅に改善しているというから期待大!
挑戦は’80年代から始まっていた
マルコーニ技師の大学の卒論(TESIはイタリア語で“論文”の意味)をベースに、1983年のミラノショーにテージのプロトタイプを発表(操舵は油圧式でエンジンはホンダVF400用)。そこから7年を経てTESI 1Dを世に出す。その後、何度も経営危機を乗り越え、現在はTESI 3Dのファイナルモデルと、次モデルにTESI H2が控える。