トラの原点・バーチカルツインの名車をおさらい!『いまトライアンフが熱い』
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MODERN CLASSICS 受け継がれるバーチカルツイン ’80~’90年代は実用車的な扱いを受けることが多かったものの近年では日本/ヨーロッパの数多くのメーカーが採用している並列2気筒。このエンジン形式に1930年代から力を入れて来たトライアンフはこれまでに数十種類以上のモデルを世に送り出しているのだ。
約70年に渡って生産が続く伝統のエンジン形式
左右に並ぶシリンダーが、直立=バーチカルなのか、前傾=フォワードなのかという違いはさておき、昨今では日欧の数多くのメーカーが手がけている並列2気筒。ただしこのエンジンに、最も愛情を注ぎ、最も多種多様なモデルを生み出してきたのは、イギリスのトライアンフだ。
33年に初の並列2気筒車として、6/1を世に送り出した同社は、37年に新設計の後継車、スピードツインを発売。そしてスピードツインを起点とするOHVバーチカルツインは、トロフィーやサンダーバード、ボンネビルなどに搭載され、半世紀の歳月を生きく抜くこととなった。
もっとも、80年代中盤でトライアンフの歴史はいったん途絶えてしまうのだが、90年に再興を果たした同社は、01年にDOHCバーチカル ツインを搭載する、新世代のボンネビルを発売。
![’16年の登場時は新世代のフラッグシップだったものの、多種多様な派生機種が登場した現在は、ボンネビルは1200ccの標準仕様という位置づけ](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/002_K1_3902-2.jpg)
![ストリートツインの兄弟車となるスクランブラーは、悪路走破性を高めるべく、アップマフラーや19/17インチのスポークホイールなどを採用](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/003_K1_3905-2.jpg)
16年からは、SOHCヘッドと水冷機構を導入した現行シ リーズの展開が始まり、近年の同社のラインナップには、10機種以上の並列2気筒モデルが並んでいるのだ。
生産年数の合計は約70年で、過去に販売した車両は数十種類以上に及ぶ。ここまでバーチカルツインに力を入れて来たメーカーは、世界で唯一、トライアンフだけなのである。
エンジン形式はバーチカルツインだが現代は不等間隔、元祖は等間隔爆発
OHV時代のトライアンフ製バーチカルツインが、左右のピストンが同じ動きをする360度クランクを採用していたのに対して、’01年型 ボンネビルを起点とする DOHCシリーズは、360度と270度を併用。
![650cc 360°クランク 1967 BONNEVILLE T120](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/006_K1_3999-2.jpg)
そしてSOHC&水冷を導入した’16年以降の現行シリーズは、全車が270度クランクとなった。なお現行の900/1200ccという排気量は、振動緩和用のバランサーが普及していなかった’60年代には、考えられない排気量である。
![1200cc 270°クランクBONNEVILLE T120](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/eg1.jpg)
![900cc 270°クランク STREET SCRAMBLER 900](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/eg2.jpg)
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クランク位相角の差異は意外に分かりづらい?
80年代以前のOHVモデルが、排気量:350~750㏄(人気が高かったのは650㏄)、クランク位相角:360度だったのに対して、現行車は、900/1200㏄ともに270度で、OHV時代には存在しなかったバランサーを装備。では新旧バーチカルツインを乗り比べて、どこに差異を感じるかと言うと、一番は振動だ。
OHVモデルの振動が高回転域で過大になるのに対して、現行モデルは常にスムーズ。この点は多くのライダーが、後者に軍配を上げるだろう。 ただしクランク位相角は、評価が難しいところ。
現行モデルの270度は、昔ながらの360度と比較 すると、トラクションや鼓動感で有利と言われているけれど……、トライアンフのOHVバーチカルツインは360度でも、トラクションと鼓動感がすこぶる濃厚なのだから。いずれにしても、クランク位相角だけでエンジン特性は語れないのである。
ちなみに、270度クランクの並列2気筒には、ライダーにとってノイズとなる慣性トルクが適度に緩和でき、燃焼トルクが瑞々しく感じ られるという美点が備わっていて、実はその資質は、120度クランクの並列3気筒と共通なのである。
言ってみれば現代のトライアンフ製バーチカルツインは、同社にとってもうひとつの柱である、並列3気筒に通じる特性を身につけているのだ。
インプレッション 新旧バーチカルツイン
さて、ここからは新旧バーチカルツインのインプレである。まずは67年型ボンネビルの率直な印象を述べると、とにかく軽快! 現行車と比べると、かつてのトライアンフは、押し引きもハンドリングもエンジンの吹け上がりも、すべてが軽いのだ。
もっとも調子に乗って飛ばし始めると、前述した振動に加えて、車体の頼りなさが気になるが、法定速度では問題にならない。以下は今回が人生で2度目のOHVトライアンフ試乗となった、編集長の言葉。
「ムチャクチャいいですね(笑)。多少の慣れは必要ですが、これだったら今でも普通に楽しめます。個人的には、アクセルを開けたときの車体のグリップ力に感心しました。飛ばしたときのことは何とも言えませんが、僕はこのエンジンと車体にかなりの好感を持ちましたよ」
予想以上の大絶賛だが、60年代のボンネビルは、〝世界最良のスポーツバイク?と呼ばれていたのである。その資質は現代でも健在なのだ。 ただし、大の旧車好きでありつつも、最近は旧車特有のトラブルが面倒……と感じる僕が、今回の3台で最も好感を持ったのはスクランブラーだった。
アップライトで、現行ボンネビルより20kg以上軽く、アップマフラーのおかげで重心が適度に高く、フロントに昔ながらの19インチを履くスクランブラーは、現行車の中で、往年のボンネビルやトロフィーなどに最も近い、軽快感とスポーツ性が満喫できるのだ。
もちろんそれでいて、現行車ならではの快適性や安全性は備えているから、守備範囲はOHVモデルより格段に広い。スタイルに対する賛否はありそうだが、往年の感触を安心して楽しみたい人は、1度はスクランブラーを体感するべきだろう。
いやでも、そういう意味では、1200㏄のボンネビルにも、往年 の感触は備わっているのだ。ただし、エンジンフィーリングもハンドリングも重厚なこのモデルに乗って、僕が思い出したのは、50~60年代のサンダーバードである。 同時代の他のOHVモデルと比較すると、圧縮比が低くてバルブタイミングが控えめで、穏やかな特性だったサンダーバ ードは、エンジンをブン回して元気よく走るのではなく、低中回転域を使って淡々と巡航するのが最高に気持ちよかった。
現行ボンネビルもその点は同様で、スクランブ ラーでは通過点に過ぎない1000~2000rpm台を使っても、なかなか濃密なトラクションを得ることができる。 車名が車名なだけに少々ややこしいけれど、僕個人としては、現行ボンネビルの上質でしっとりした乗り味は、往年のサンダーバードの資質を引き継いでいるように思う。
なお冒頭で述べたように、現在のトライアンフは10機種以上のバーチカルツインを販売しているが、今回の試乗で67年型ボンネビルの資質に改めて感心した僕は、エンジンの吹け上がりが軽やかな900㏄モデルをベースにして、さらに軽量なライトウェイトスポーツを作って欲しいと思った。ちなみに、60年代のOHVモデルの装備重量は、ガソリン満タンで200㎏前後である。
1967 BONNEVILLE T120
![本来のメーターはスミスだが、試乗車は社外品に換装。メッキ仕上げのヘッドライトボディには電流計が備わる](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/009_K1_4011-2.jpg)
![ティアドロップタイプのガソリンタンク容量は、北米仕様:13.6L、欧州仕様:18.1L](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/010_K1_4001-2.jpg)
![フラットなシートは座り心地が抜群。シートの座面高は775mm](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/011_K1_4004-2.jpg)
![ズバババッ! という威勢のいい排気音を奏でるマフラーは、消音機構を備えるものの、限りなく直管に近い構造](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/013_K1_4026-2.jpg)
![プレス成型のブレーキ/クラッチレバーとメッキ仕上げのスロットルホルダーも、かつての英車の定番パーツだ](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/016_K1_4035-2.jpg)
![振動緩和に貢献するタル型グリップは、’60年代中盤からさまざまな英車が採用](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/017_K1_4037-2.jpg)
![ブレーキドラムはF:8/R:7インチで、フロントは2リーディング式。カバード式リヤショックは、純正スタイルを踏襲するヘイゴン。タイヤはF:19/18インチ](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/015_K1_3996-2.jpg)
![](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/012_K1_4032-2.jpg)
BONNEVILLE T120
![](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/018_K1_3896-2.jpg)
![メーターは’64年以降のOHVトライアンフが採用した、スミス製グレーフェイスを思わせる](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/019_K1_3969-2.jpg)
![ライディングモードやグリップヒーターを標準装備する](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/020_K1_3963-2.jpg)
![パッと見は空冷風でも、現行バーチカルツインは全車水冷。気化器はインジェクションで、スロットルボディは’66年以 前のアマル・モノブロックキャブを再現](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/021_K1_3954-2.jpg)
![燃料タンクはOHV時代の欧州仕様に通じる雰囲気](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/022_K1_4069-2.jpg)
![シートは現行車の基準で考えればかなり肉厚で、後方にはメッキ仕上げのグラブバーが備わっている](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/023_K1_3966-2.jpg)
![スポークホイールのサイズは2.75×18/4.25 ×17](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/024_K1_3957-2.jpg)
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STREET SCRAMBLER 900
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![乗車中は回したくなるけれど、1200ccと比較すると、900ccはロングストローク。アップマフラーの排気音は、ボンネビルより歯切れがよくて乾いた印象](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/027_K1_3915-2.jpg)
![シンプルなメーターは’60年代以前のトロフィー風](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/028_K1_3930-2.jpg)
![左スイッチ上部のiボタンで液晶画面の表示切り替え&各種設定を行うことは、現行ボンネビルと同様](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/029_K1_3933-2.jpg)
![細身のガソリンタンクは軽快感の演出に貢献](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/030_K1_3923-2.jpg)
![シートは独創的な2ピース構造で、小ぶりなタンデム用はオプションのキャリアと差し替えることが可能](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/031_K1_3926-2.jpg)
![ブラックリムのスポークホイールは2.75×19/4.25×17。Fキャリパーはブレンボ 4ピストン](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/032_K1_3921-2.jpg)
![](https://ridersclub-web.jp/wp-content/uploads/2024/06/033_K1_3912-2.jpg)