『YAMAHA YZF-R25/R3』小排気量にも継承されるヤマハのハンドリング
YZF-R1が確立した「ハンドリング=ヤマハ」は、兄弟モデルであるYZF -R25/R3にも受け継がれているのだろうか? その実力を検証してみる。「毎日乗れるスーパーバイク」をコンセプトに掲げ2014年に登場したモデルがYZF-R25。翌’15年にはYZF-R3が加わり、ラインナップが充実。今回、その最新モデルを改めて試乗してみた。そこにあったのは間違いなくヤマハハンドリングだった。
曲がる醍醐味のすべてがここにYZF-R25/R3 軽快なR25 ツウなR3
伊丹 前回のYZF-R1のハンドリングに引き続き、今回検証するのはYZFシリーズのエントリーモデル、R25とR3です。19年にモデルチェンジを受け、フロントフォークが正立から倒立になり、ライディングポジションが見直された点が大きな変更箇所になります。
中野 こうして同じ条件で乗ると明白ですが、R25はエンジンに対して車体が勝っていて、安心感が高いですね。少々無理をしてもフレームやサスペンションがカバーしてくれるため、なんでもできる。対するR3は低中回転域の力強さが印象的です。パワーと車重、それを受けとめるグリップの関係性が絶妙で、誰が乗ってもバランスのよさを楽しめるのではないでしょうか。
伊丹 車重は同じで、最高出力はそれぞれ35㎰/12000rpm(R25)と42㎰/10750rpm(R3)になっています。R25の方がこまめなシフトチェンジで高回転をキープするようなイメージですが、R3の方が車速がのるため、R25がまだ引っ張っている領域でもシフトアップすることになります。
中野 そうなんですよね。R25はギアがひとつくらい違っていても意外と影響が少なく、そもそも回転の上昇も緩やかなため、気を遣わずに走れるのがポイントです。その点、R3はバランスがいいからこそ、ついついコースを攻略していきたくなります。
実際どんどん攻めちゃったのですが、ヘアピンを立ち上がった時にリアタイヤがホッピング寸前までいって、バイクがちゃんと「ここが限界」と教えてくれます。言い方を変えると、そこまでカッチリ開けて走れることを意味し、ライディングを学ぶ格好の素材だと思います。
Cross Talk 中野真矢&伊丹孝裕
YZF-R25
R25とR3はどこが違う?
伊丹 ヤマハハンドリングという視点で評価すると、どうですか?
中野 R1のパートで少しお話しましたが、ヤマハハンドリングのカギは2次旋回のよさにあります。スロットル開け始めのレスポンスがリニアなことがまず大切な条件で、そこがちゃんとしつけられていると荷重がスムーズにリアサスペンションへ移行し、リアタイヤが路面に押しつけられ、旋回力が引き出されます。
そのプロセスが一番分かりやすいのがR25とR3で、特にR3は顕著。右手をひねる、チェーンが張られる、サスペンションが踏ん張る、タイヤにトラクションがかかる……という流れが、文字通り手に取るように伝わってきますよね。R1だと流れる時間が速すぎてスキルを選びますが、このクラスならヤマハハンドリングの意味を、もっと言えばライディングの醍醐味を誰もが堪能できるのではないでしょうか。
伊丹 ハンドリングを作るためのレシピというか、黄金比のようなものはヤマハのライダーに受け継がれているのですか?
中野 スロットル操作一発目でパワーがきれいに立ち上がるキャブレターセッティングを叩き込まれ、それが旋回の良し悪しを決めると教えられたように、今も継承されているノウハウはあるでしょうね。ヤマハのライダーは「コーナーで負けるわけがない」という意識が高く、そういうハンドリングを作らせてくれる社風があったのですが、今回の試乗を通し、あらためてその一端を確認することができました。
YZF-R25/R3 DETAILS
シリーズの末弟ながら、サイドカウルにはフィンが設けられるなど空力パーツも抜かりなく装備されている