第2次250ccクラスのブームを切り拓いたパイオニア KAWASAKI Ninja 250
カワサキが250ccクラスに再びフルカウルスポーツを投入してから10年以上が経過。さらに20年秋、このクラスに4気筒エンジンが登場したことで、若者のみならずアラフィフライダーも再び注目の国産250ccスポーツ。今回はそんな250ccクラスの再ブームを開拓したKAWASAKI Ninja 250の実力をチェック!
Tester 伊丹孝裕 Takahiro Itam
二輪専門誌の編集長 を務めた後、フリー ランスのライターへ。 マン島TTやパイク スピーク、鈴鹿8耐 といったレースでは ライダーとしても活 動してきた
軽さと寛容さがバランスしたこのクラスのパイオニア KAWASAKI Ninja 250 KRT EDITION
一時期、存在感を失っていたフルカウル&セパレートハンド一 ルの250㏄スポーツ。それを08年に突然復活させ、現在の盛り上がりの下地を築いたのが、カワサキの初 代ニンジャ250だ。13年には大きな改良が施された2代目が登場し、18 年になるとフルモデルチェンジを敢行。その前年にデビューし、瞬く間に最速の座に上り詰めたCBR250RRを迎え撃つため、エンジンもフレームも全面的に刷新されたモデルが、この3代目ニンジャ250である。
印象的なのは2代目比で大幅にコンパクトになったエンジンだ。カムチェーンやプライマリーギアの配置を変更して全高を抑え、クラッチの小型化、新クランクの採用、さらには冷却水やオイル量の低減ギヤの 肉抜きといった部分まで見直されたそれは、合計8㎏も軽くなった車体に大きく貢献。もちろん、最高出力も引き上げられ、6ps増の 37psに到達した。
200psが206psになったのとはワケが違う。一気に20%近くもパワーが上乗せされ、そのフィーリングがまったく異なるものになったことは想像に難くないだろう。事実、2代目までのエンジンは回転の上昇が緩やかで、どこか牧歌的な鼓動感があった。
ところが、現行のエンジンは明確に高回転型ユニットとして生まれ変わっている。スロットルを開けると「シャーン」と鋭く吹け上がり、最高出力を発生する12500rpmまで軽々と回る……のだが、実は体感的においしいのはその先だ。
なぜなら、13000rpmを超えてからもうひと伸びし、そのまま抵抗なくレブリミッター(14000rpm)に当たるキレのよさがあるからだ。そのぶん、低回転から中回転域のトルクは薄くなっているのは致し方ないところ。とはいえ、扱いづらさを覚えるほどではなく、街中での実用性はちゃんと確保されている。
ユニークなのは、エンジンの軽さに対し、足まわりやハンドリングは穏やかさが重視されているところだ。大径の正立フォークとリンク式リアショックはゆったりと大きくストロ ーク。旋回力もキビキビやクルリといった類のものではなく、体重移動などを意識せず、車体に身体を預けたまま、クルージング気分で流すくらいがちょうどいい。
ZX10RRを頂点とするスーパースポーツの末弟がZX25Rだとすれば、このニンジャ250はニンジャH2/SXやニンジャ1000を筆頭とするスポーツツアラーの流れの中にあるモデルだ。単に4気筒か2気筒かという違いに留まらず、ハンドリングも含めてキャラクターが分けられているところに抜かりなさを感じる。価格も含め、すべてがちょうどいい秀作と言えるだろう。
Ninja H2の流れを汲むチンスポイラーがアグレッシブなイメージを強調。’18年型としてデビューした時にフレームは一新され、より軽量コンパクトになった