進化を続ける究極の空冷OHV! サンダンスのSUPER XR
HARLEY-DAVIDSON SUPER XR by SUNDANCE ハーレーのスポーツスターをベースとしながらシリンダーからクランクケース内部まで独自のチューニングを施し、今も進化し続ける一台。
OHVを信じ続けたエンジニアの執念
空冷OHVのツインエンジンといえば、やはりハーレーをイメージする人は多いだろう。絶対性能の追求ではなく、あくまで耐久性やフィーリングといった性能を重視したシンプルなエンジン……そういうイメージが一般的だ。 しかし、そんなエンジンの可能性に飽くなき挑戦を挑み続けたのがサンダンスである。
何を隠そう、この私・鈴木大五郎は、20数年前に同ショップで社員として働いていた経緯があるのである。 当時、全米選手権(AMA)にはスポーツスターのワンメイクレースが存在していた。ハーレーでレースなどというと楽しいイベント的なイメージが強いが、アメリカではダートトラックライダーとロードレースの架け橋的な意味合いもあり、多くの有力ライダーおよび、有望な若手たちの登竜門に位置付けられていた。
96年に参戦し、ある程度の手応えを感じて帰国。再挑戦を目論んだ。その夢を後押ししてくたのがサンダンスの〝ZAK”柴崎社長であり、その準備段階で社員として雇ってもいただいた。結果的に参戦するクラスが消滅するというトホホな結末で路線変更を余儀なくされたのだが、その経験はかけがえのないものとなっている。
その当時、発表されたばかりだったのがこのスーパーXRだ。走る実験室として鈴鹿8時間耐や、デイトナレースウェイのBOTTなど、積極的にレースに参戦。僕自身もテスト走行や慣らしなどを行なった記憶がある。 スタイルのモデルとなったXR1000は83年にAMAに参戦するために作られたホモロゲーションモデルである。
スーパーXRはスタイリングこそXR1000を踏襲するが、そのエンジンはアルミ削り出しシリンダーや鍛造アルミのヘッドなど、独自設計のパーツが盛り込まれ、全くの別物と言えるパフォーマンスと信頼性を有していた。そして今回、20年ぶりに乗ったスーパーXRは、その姿こそ大きく変わらないものの、中身はさらに進化していたのである。
7000rpmまで鋭く吹け上がる空冷OHVが存在するという歓び
個人的にもこの年代のスポーツスターを所有していたことがあり、その車格や重量感には懐かしさを感じた。その一方、左側にエキゾーストが配置され、右側にキャブレター&エアーフィルターが突出するというレイアウトはやはり特殊でもある。
しかし、ダートトラックレーサーのXR750に憧れを持つ自分としては、これこそが由緒正しきライディングポジションであり、なんとも誇らしい気持ちにさせる。2連装のFCRキャブレターでありながら、スロットルのタッチは非常に軽く、それに連動するエンジンのレスポンスも抜群に柔らかい。
トルクフルという言葉の見本とも言えるべきエンジン性能は、アイドリング付近から力強いトルクを発する。しかも驚くべきことに、その湧き上がり方はシルキーと呼べるほど優しい。その理由は、従来のシリンダーに施していたニカジルメッキと比べ、フリクションが7分の1にまで軽減される最新の加工、そしてエンジンに負担をかけず、ノッキング対策にも貢献する、日本のガソリンに適した圧縮比の恩恵が大きい。
独自のサスペンション設定も秀逸だ。STDの、柔らかいのか硬いのか分からない=フィードバックが薄い印象に対し、フリクションのない確かな手応えがあった。ブレーキも自信をもってかけることができ、そのフィードバック性も高い。一見手強そうであるが、大げさではなくSTDのスポーツスターよりもフレキシブルに走れることにも驚かされる。
さらに圧巻なのは3000回転を超えてからの怒涛の吹け上がりである。図太いトルクで一気にマシンを前方に蹴り出す。そしてそれが7000回転まで淀みなく続いていく。身体が後ろにのけぞり、ハンドルを握る腕が伸び切ってしまうほど強烈な加速だ。
こうなるとライディングポジションも前傾姿勢を求めたくもなるが、このスタイルだからこそ、スリリングな面白さを享受できるのである。そしてこの狂速モードはスーパーXRの魅力のほんの一部分でしかないのであるのが〝スーパー?である所以かもしれない。
旧いマシンがベースの場合、懐かしさ先行のインプレッションになりがちだが、スーパーXRは現在進行系でOHVのさらなる未来を実感できる。電子制御全盛の時代だからこそ、より手応えのあるアナログなフィーリングにバイクの楽しさを再確認させてくれる稀有な存在なのだ。
STDのイメージを踏襲するソラマメ型のシングルシートはサンダンスオリジナル
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