【ITALJET DRAGSTER200/150】イタリアンアーバンスポーツ独自機構が生み出すフィーリングとは果たして
イタルジェットのドラッグスターシリーズは独創性に満ちたスポーツスクーター。芸術的かつ攻撃的なイタリアンデザインに、多くのライダーが惹きつけられる。中野真矢さんもそのひとりで、前回の125cc試乗時から「欲しい! 」を連発。そして今回、200cc仕様のノーマルとカスタム版、125ccカスタム仕様を一気試乗!
約15年ぶりに復活したメカニカルスクーター
イタルジェットは、’50年代中盤にドゥカティワークスチームのレーサーを務めた経験も持つレオポルド・タルタリーニ氏によって、’59年(正式には翌年2月)にイタリアのボローニャで創業されたバイクメーカー。
スクーターやオフロード系など、主に小排気量帯の生産を手がけてきた。150車種以上を開発してきた歴史を持つが、’03年には経営に行き詰って一度倒産。他の企業に勤務していたレオポルド氏の実子であるマッシニモ・タルタリーニ氏によって、’05年11月に再建された。そんなイタルジェットが、近年になって大注目を集めることになったのが、’18年のEICMA(ミラノショー)。その場でコンセプトモデルとして新しい「ドラッグスター」を初披露した。
ドラッグスターの歴史は、初代が誕生した’95年までさかのぼることができる。このときも、鋼管トレリスフレームにハブセンターステアリングの一種となる片持ち式スイングアームのフロント機構を組み合わせていた。
下は2ストローク50㏄から上は4ストローク250㏄まで開発され、’98〜’02年までの間に7万台以上を生産。スクーターとしては……というよりもバイクとして考えてもかなり奇抜で個性的かつ機能美に溢れるスタイリングが、世界中で多くのライダーの心を鷲掴みにした。
今回復活した新生ドラッグスターは、その後継となるシリーズ。エンジンは4ストの200と125(正確には181㏄と124㏄)が用意され、車体は共通化されている。
’19年秋には量産試作車が発表され、翌年からの発売が予定されていたが、新型コロナウイルスの世界的な流行拡大による影響で生産が遅延し、昨年末に全世界限定499台のファーストエディションがようやくデリバリー開始。そして今年から、本格的な販売がスタートしたばかりだ。
鋼管トレリスフレームとアルミ製プレートで構成されたむき出しの骨格部や、特許取得済みのI・S・S(インディペンデント・ステアリング・システム)がもたらす独創的なルックスが新型ドラッグスターシリーズの大きな特徴。初代もかなりセンセーショナルだったが、新型はさらに過激さが増し、細部のデザインも洗練されている。
元モトGPライダーの中野真矢さんも、以前125㏄モデルに試乗したとき、「走行性能うんぬん以前に、このルックスだけで十分な存在価値がある。一般的なスクーターに求められる利便性という要素をほぼ無視した設計でありながら、それでもセカンドバイクとして所有する喜びはかなり大きい!」と大絶賛していた。
ただしこのドラッグスター、カッコだけの乗り物ではない。独特なフロントまわりの構成は、ライダーに乗りこなす楽しさも提供。純正アクセサリーパーツを使用したカスタマイズにより、さらにポテンシャルを引き出すこともできるのだ。
【DRAGSTER200】共通ボディと余裕あるエンジンで、俊敏性が増したハブステアスクーター
以前125㏄カスタム仕様に試乗しましが、そのときからかなり気になっていたのが200㏄モデル(実際には181㏄)。まずはフルノーマル仕様での試乗を終えて、当然のことながら125㏄モデルと比べて力があり、最高速到達までの時間が短いのが魅力という感想を得ました。
筑波サーキット・コース1000でも、ホームストレートで頭打ちのところまで達し、そのときの速度は100km/hを少し超えた程度。125㏄と比べて低中回転域トルクに厚みがあり、一方で車重はほぼ同じなので、動きはじめから速いです。
一般的な125㏄クラスのスクーターと比べたら、車体はやや大柄でホイールベースも長めですが、200㏄クラスとしては標準的あるいはコンパクトな印象。また、エンジン動力性能も俊敏な部類に入ります。
フロントまわりが、ステアリングとサスペンションのアクションを独立させたハブセンターステアリングのため、コーナリング特性は独特。前回の試乗時は最初こそちょっと苦戦気味でしたが、もうすっかり慣れました。リアブレーキをかけることで、逆にフロントが沈み込んで荷重がかかるので、リアブレーキ中心でフロントブレーキを補助的に使うようにすると、かなりスムーズに走れるようになります。最初は少し戸惑うかもしれませんが、スクーターの場合は一般的な車体構成の車種でもリア中心で減速する人が多いと思うので、慣れるのは早いのではないでしょうか?
DRAGSTER200 SPECIFICATIONS (クリックで開く)
エンジン ... 水冷4ストローク単気筒DOHC4 バルブ 総排気量 ................181cc ボア×ストローク.......63.0×58.0mm 最高出力 ................17.5hp/8000rpm 最大トルク ...............15.5Nm/7750rpm 変速機 ....................CVT 無段階変速 クラッチ ...................遠心式乾式タイプ フレーム ...................鋼管トレリス構造+ ................................ダイキャストアルミ製プレート サスペンション .........F=インディペンデント・ステアリング・システム+ ................................モノショック ................................R=モノショック ブレーキ ...................F=φ200mmシングルディスク+ ................................ブレンボ製片押し2ピストンキャリパー ................................R=φ190mmシングルディスク+ ................................ブレンボ製片押し2ピストンキャリパー タイヤサイズ ............F=120/70-12 ................................R=140/60-13 全長×全幅 .............1890×750mm ホイールベース ........1350mm シート高 ...................770mm 車両重量 ................124kg(乾燥) 燃料タンク容量 .......9L 価格 ........................75万9000円
【DRAGSTER200 CUSTOM】まさにレーシーな雰囲気がいっぱいで、サーキットを攻めても楽しい
200㏄モデルに純正アクセサリーパーツのレーシングエキゾーストパイプ&マフラー、CVT&クラッチキットを導入したカスタム仕様にも試乗しました。
こちらは、公道走行NGとなる仕様ではあるのですが、パワーユニットはノーマルよりもパワーバンドのメリハリが効いていて、上で伸びる印象。実際、トップスピードも10km/ hほど上乗せされて、メーター読みで113㎞/ hまで到達しました。ノーマルでも十分に速いのですが、そこにレーシーな乗り味が加えられた感じです。しかも、どこでパワーがぐわっと盛り上がるのかがわかりやすいので、より〝ファン〞に乗れる印象。さすがスクーターチューンのノウハウに定評があるマロッシ製のCVT&クラッチキットです。
アクラポヴィッチ製のレーシングマフラーは、バッフルの着脱が可能。有無により音量はかなり違うのですが、パワー感にそれほど大きな違いはありません。ただし、バッフル装着時のほうが全体的にスムーズ。取り外したときは〝バラララ……〞とした感触も強いのですが、じつはこの状態もフィーリングとしてはまるで悪くありません。いずれにせよ、ルックスから得たイメージどおりの走りを、もっとも具現化できているのがこの200カスタム仕様です。
それから、より積極的にサーキットを攻めたくなる仕様になっていることであらためて着目したのは、奇抜なようでしっかり走りを考えて設計された車体。とくにフロアボードの形状は秀逸で、アウト側の足を乗せる位置やホールド性が最適、イン側の足も折りたたみやすいです。こだわって開発したのだろう……と感じさせられます。
【DRAGSTER125 CUSTOM】スロットルオープンの時間は長いけどカスタム版なら最高速100km/h超え
公道走行可能な政府認証仕様のアクラポヴィッチ製スリップオンマフラーと、マロッシ製のCVT&クラッチキットでカスタムした125㏄モデルにも試乗しました。ちなみにこちらのアンスラサイト×ホワイト×レッドは、いわゆるカタログカラーで、現在のところ日本では圧倒的な一番人気とのことです。
ノーマルの125には乗っていませんが、少なくともマフラーと変速機がカスタムされたこの仕様であれば、125㏄でもドラッグスターは十分な速さ。200のフルノーマルでも最高速は100km/hをわずかに超える程度でしたが、125㏄カスタム仕様も粘れば同等の速度まで達します。スタートの鋭さでは200に一歩譲りますが、公道で不満を感じることはそれほどないでしょう。
しかも、日本の公道で乗るなら、125㏄以下には任意保険にファミリーバイク特約が使えるなど、ランニングコストを抑えられるメリットもあります。それを考えると、125㏄モデルを購入して、カスタムすることで走りの鋭さをプラスするというのも、良いかもしれません。
もっとも、このバイクを購入するユーザーの中には、コスト度外視でとにかくこのスタイリングに惚れた人や、200と125のどちらを選んでもほとんど乗らずに飾っておく……なんて人も多いと思います。それほど、このドラッグスターは個性的で、美しい存在。こういうバイクがあることを知ってはいたのですが、実車に触れて、すっかり虜になってしまいました。
DRAGSTER 125 SPECIFICATIONS (クリックで開く)
エンジン ... 水冷4ストローク単気筒DOHC4 バルブ 総排気量 ................124cc ボア×ストローク.......58.0×47.0mm 最高出力 ................12.5hp/9500rpm 最大トルク ...............10.5Nm/7750rpm 変速機 ....................CVT無段階変速 クラッチ ...................遠心式乾式タイプ フレーム ...................鋼管トレリス構造+ ................................ダイキャストアルミ製プレート サスペンション .........F=インディペンデント・ステアリング・システム+ ................................モノショック ................................R=モノショック ブレーキ ...................F=φ200mmシングルディスク+ ................................ブレンボ製片押し2ピストンキャリパー ................................R=φ190mmシングルディスク+ ................................ブレンボ製片押し2ピストンキャリパー タイヤサイズ ............F=120/70-12 ................................R=140/60-13 全長×全幅 .............1890×750mm ホイールベース ........1350mm シート高 ...................770mm 車両重量 ................124kg(乾燥) 燃料タンク容量 .......9L 価格 ........................71万5000円