1. HOME
  2. バイク
  3. DUCATI Streetfighter V2 インプレッション|攻撃的なハンドリングと従順なエンジンブと

DUCATI Streetfighter V2 インプレッション|攻撃的なハンドリングと従順なエンジンブと

手強い。理解するのに時間がかかる。ひと筋縄ではいかない。周回を重ね、コンディションを整え、バイクとの距離を詰めていく。そのプロセスが楽しい。そしてストリートファイターV2が自分のものとなった時、思いもよらぬ特性を覗かせる。ロードレーシングのDNAを色濃く受け継いだ、ドゥカティならではの走りだ。

挑みかかってくる攻撃的なハンドリングとあくまでも従順なエンジンと

跨った瞬間に、このバイクが乗り手に求めているものが伝わってくる。トコトコ走ろうものなら、バイクから叱られてしまいそうだ。「攻めろ、攻め立ててみろ」という声が聞こえてくる。

ドゥカティ・ストリートファイターV2のライディングポジションは、その名前が示す通り、非常に攻撃的だ。まさにファイティングポーズを取らされているようで、「乗りこなしてみろよ」と言わんばかりだ。

具体的に言えば、フロントタイヤが非常に近く感じ、自分の上体も低く構えている。ツーリングバイクの多くはフロントタイヤが遠く、自分が高い位置にいるように感じるのとは対照的だ。ストリートファイターV2は、まったりとした走りをまったく想定していないことが分かる。

こうもスパイシーなポジションだと、期待半分、不安半分というのが正直なところだ。これほど尖ったバイクが、いったいどんな走りを見せてくれるのか楽しみでもあり、反面、乗りこなすのに時間がかかりそうだぞ、と身構える。

そしてストリートファイターV2は、実際に手強かった。扱いづらいというわけではない。このバイクのよさを引き出すのは、少しばかり骨が折れる作業なのだ。

大変ではあるが、喜びでもある。最初からすんなりと乗れてしまうのではなく、「乗りこなす」というチャレンジングな楽しみが、このバイクにはある。

今どきのスポーツネイキッド然としたフォルムのストリートファイターV2だが、走り出すと乗り味はスーパーモタードに近い。フロントタイヤの真上に乗っているような印象で、重心位置も高い。安定志向のバイクが多い中、ストリートファイターV2のハンドリングは相当にクイック。ヒラヒラとしていて、ちょっと不安になるほどだ。

だが、徐々に様子が変わってくる。何度かしっかりとブレーキングし、フロントフォークの感触を確かめ、少しずつスロットル開度を大きくしながら、タイヤが温まるのを待つ。

ほどなくしてグリップが得られてから、いよいよ本気のライディングが可能になる。

このプロセスが重要だ。いきなり攻めてはいけない。少し時間をかけてバイク、タイヤ、そして乗り手の準備が整ってから、ストリートファイターV2はいよいよ本領を発揮する。

ポジションの手強い印象とは裏腹に、エンジンは想像以上にライダーフレンドリーな仕上がりだ。以前のモデルにも乗ったことがあるが、もっとアグレッシブな特性だった。パワフルではあるが、スロットルを開けるとすぐにフロントが浮いてしまい、あわてて戻して、また開けると浮いて……の繰り返しで、かなり手なずける必要があった。

新型のエンジンに、その手間は不要だ。非常にスムーズで、完成度が高い。いかにも洗練されたV型2気筒という感じで、ドゥカティらしさは少し薄らいだかな、と思う。

DUCATI Streetfighter V2このバイクの正体は、(スーパーモタード+スーパースポーツ)÷2

しかし、ことストリートファイターV2のように攻めて走ることが求められる車体キャラクターの場合、エンジンはこれぐらい落ち着きがあった方がいい。ライディングに集中できるからだ。

「乗りこなしてみろよ」と挑みかかってくるバイクはチャレンジのしがいがあるが、正直なところ、そういうアグレッシブさは車体だけにしてほしい。

レーシングマシンの基本は、エンジンがライダーの意思に忠実であることだ。そういう意味では、ストリートファイターV2のエンジンの進化の方向性は、間違いなく正しい。

その一方、ハンドリングは攻めるほどに「やはりキャラが立っているな」と思う。非常にクイックで、あまり意識せずに走ると想像以上にコーナーのインに寄ってしまい、意図したラインを通れないほどだ。

ハンドル操作とステップワークを駆使してインを向きすぎないようにして、うまくラインに乗せると極めて高い旋回力を発揮してくれる。その感覚をつかむのが難しくて面白い。

周回を重ねるにつれて、自分とストリートファイターV2がシンクロするのが分かる。徐々に自分の体が低く伏せ、腰が下がり、フロント寄りだった荷重をうまくリアに移せるようになっていく。すると面白いことに、スーパーモタードライクだったフィーリングがどんどんスーパスポーツ寄りになっていく。これぞドゥカティ、やはりサーキットで育まれたブランドなのだ。

ただのスーパーモタードマシンではない。かといって、スーパースポーツモデルからカウルを取って、アップハンドルにしただけのネイキッドでもない。スーパーモタードテイストを色濃く備えながら、さらにロードレーシング度合いを増している。

ユニークで他にはない個性を追求し、さらには「ストイックなロードレーシングの世界」というブランド価値の根っこを忘れていない。レースのDNAを必ず継承しているのが、ドゥカティのすごさだと僕は思う。

このバイクに乗る人は、かなりの通だ。街でストリートファイターV2を走らせるのは、かなりストイックな行為。見かけたら、思わず「あなた、分かってますね!」と声をかけてしまいそうだ。

(中野真矢)

ドゥカティのスーパースポーツモデル、パニガーレV2をベースとしながら、カウルを廃し、高くて幅広いハンドルバーを装着したネイキッド。最小限の要素をひときわシャープなラインで構成し、軽快さを強調している

153psのハイパワーを発生しながら、より洗練されたV型2気筒エンジン。ベースのバニガーレV2よりファイナルを下げレスポンスを高めるなど、独自チューンが施されている
フロントフォークはφ43mmのショーワ製フルアジャスタブルBPF倒立フォークを装着。フロントブレーキはブレンボ製ラジアルマウントモノブロックキャリパー+φ320mmダブルディスクを装備
アップライトかつアグレッシブなポジションのアルミ製ハンドルバー。4.3インチTFTディスプレイには電子制御類の設定など多彩な情報を表示
リアショックはザックス製フルアジャスタブル。プログレッシブリンクを介してサイドマウントされており、セッティング調整機構へのアクセスも容易だ
片持ち式スイングアームは、ベースのパニガーレV2比で16mm延長。安定性を高めている。エンジン下部にコンパクトにまとめられたマフラーは右1本出しだ
エンジン水冷4ストローク
DOCH4 バルブ V 型2 気筒
総排気量955cc
ボア×ストローク100×60.8mm
圧縮比12.5:1
最高出力153ps/10750rpm
最大トルク10.3kgf・m/9000rpm
変速機6 速
クラッチ湿式多版スリッパ-クラッチ
フレームアルミニウム製モノコック
キャスター/トレール24°/94mm
サスペンションF=ショーワ製φ43mmフルアジャスタブルBPF 倒立フォーク
R=ザックス製フルアジャスタブルモノショック
ブレーキF=ブレンボ製φ320mmダブルディスク+M4.32モノブロックラジアルマウントキャリパー
R=φ245mmシングルディスク+2ポットキャリパー
タイヤサイズF=120/70ZR17
R=180/60ZR17
ホイールベース1465mm
シート高845mm
車両重量200kg
タンク容量17L
価格199万円

関連記事