カワサキ Z900RS&Z650RS|ストリート&サーキットで再検証【似て非なるRSの、譲れない存在意義】
Z900RSの排気音が乗れてる感を演出
田宮:公道ではZ650RSのジャストサイズなフィーリングに驚かされましたが、サーキットではいかがでした?
中野:どちらのバイクも、重視しているのはストリートユースで、それを感じさせる走り。Z900RSは水冷インラインフォーエンジンですが、4気筒のわりに高回転域が伸びません。でも、だからサーキットではダメということではなくて、フラットに立ち上がる出力特性のおかげで、筑波サーキット・コース1000や袖ケ浦フォレスト・レースウェイあたりならとても楽しくファンライドできます。
田宮:実際、中野さんと比べてライダーのレベルがだいぶ低い僕でも、高回転域をビシバシ使ってライディングできて、とても気持ちいいです。これがリッターSSだったら、気温10℃以下の真冬にそこまで開けられないはず……。
中野:ピットで見ていても、排気音に迫力があって、高回転域を使い切りつついい感じで走っているように見えました。
田宮:そう考えると、Z900RSはサーキットでハッタリが効く!?
中野:たしかにそういう要素もありそうですね。個人的には、7000〜8000rpmの力強い排気音が快感。それから、スロットルを戻した際、わずかながら「バラバラバラ……」という荒々しい音も混ざるんです。サウンドチューンの結果だと思うのですが、やりすぎている感じはなく、味つけが絶妙です。
田宮:味つけということではハンドリングも素直で扱いやすく、大型バイクを颯爽と操る上手なライダーをバイクが演出してくれます。
中野:車体の前後重量バランスが絶妙で、それが乗りやすさにつながっています。SS並みにラップタイムを削るような走りをしはじめると、フロントが曲がらないなどの感触もあるのですが、その手前までの走りなら、音の太さと車体の安定感で、サーキットでもかなりの気持ちよさがあります!
田宮:対してZ650RSは、入門用なのかなあ……と。
中野:もちろんZ900RSとZ650RSでは馬力差もかなりありますが、前後サスペンションがかなり動くというのも、そう感じさせるのかも。逆に公道でZ650RSがとてもいいバイクに感じられた要因のひとつは、穏やかな操作でもピッチングをつくれる点にあるわけですが。
田宮:公道以上に、Z900RSとZ650RSでキャラクター差を大きく感じました。でもだからこそZ650RSは、ちゃんと操るということの基礎を、ファンライド層が学ぶには最適かも。
中野:小さめのサーキットでも性能をフルに使い切れるという楽しさもありますよね。しかもこの水冷パラレルツインエンジンは、2気筒なのに4気筒のZ900RSよりも高回転域が伸びる感覚があります。もちろん、パワーは圧倒的にZ900RSのほうがあるのですが、回転が伸びてくれるからZ650RSも気持ちいいです。
田宮:68㎰だからコーナーでも高い回転をキープしやすいし、ちょっとしたスロットルやブレーキの操作で車体姿勢に変化を感じるから、丁寧な操作を心がけつついろんなライディングにトライしてみたい気持ちが生まれます。
中野:そういう意味で、Z650RSは初めてサーキットを走る人に向いているバイクだと思います。
田宮:車体はスリムで軽く、たぶんパドックからコースインするときにも、ビッグバイクと比べて緊張感は少ないはず。優しさがありますね。
中野:公道では、どちらも素直という点で似ていましたが、サーキットだともう少し違いを感じました。
田宮:どちらのバイクを選択する人も、メインは公道だと思うので、あとはサーキットを走る頻度でどちらが向いているか変わりそう……。
中野:ストリートでピカイチのZ650RSと、サーキットを含めて守備範囲が広いZ900RS。明確な立ち位置の差はありますが、逆に考えたら、そうでないとユーザーも選択に困るわけです。
田宮:優劣ではなく、どちらにも価値があるというわけですね。
中野:走りもしっかり磨いて、購入後も〝乗る楽しみ〞を提供。やっぱり、Z-RSが人気なのは容姿がいいからだけじゃないと思います
カワサキ Z900RS&Z650RS
- エンジン:水冷4ストローク並列2気筒 4バルブ
- 排気量:649cc
- 最高出力:68ps/8000rpm
- 最大トルク:6.4kgf・m/6700rpm
- シート高:800mm
- 車両重量:190kg
- 価格:110万円
- エンジン:水冷4ストローク並列4気筒 4バルブ
- 排気量:948cc
- 最高出力:111ps/8500rpm
- 最大トルク:10.0kgf・m/6500rpm
- シート高:800mm
- 車両重量:215kg
- 価格:143万円