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KAWASAKI Z H2 SE【異次元の加速に痺れる】中野真矢&平嶋夏海 インプレッション

唯一無二のスーパーチャージドエンジンを搭載するZ H2 SE。力感に溢れるフォルムは、そこに佇んでいるだけで異彩を放つ。その走りは、ビジュアルのインパクトをはるかに凌ぐ強烈なもの。中野真矢さんと平嶋夏海さんは、常識外れのモンスターを走らせて、どのようなインプレッションを得たのだろうか?

無類に凶暴ではあるだが、それだけではない

中野:今回はZ H2、その電子制御サスペンション仕様のZ H2 SEです。僕は以前にも試乗した経験があるけど、平嶋さんは?

平嶋:初です! 初体験です! 昨日から、めちゃくちゃテンションが上がってました!

中野:だよねえ。(笑) スーパーチャージャーって、一体どんな走りを見せてくれるのかって、気になるもんね。僕は初めてじゃないけれど、やっぱり走らせる前には気合が入るし、久々に乗ったら〝目が覚める〞っていうのかな? 今日、現場に来て最初の試乗がZ H2 SEだったんだけれど、身体がシャキッとしたよ。これは適当に乗っていたら、痛い目に合うっ……て、身体が勝手に体制を整えはじめた感じ。こんなに速かったかなあ? と、驚いたのが正直なところ。

持ち味のパワー感を損なわず扱いやすさが向上(中野真矢)

平嶋:スッゴく速いですよね!

中野:うん、速い。以前乗った時には、他にも速いバイクがいろいろ用意されていて、取っ替え引っ替えで走らせたから、感度が鈍くなっていたのかも? 朝イチの試乗で、スーパーチャージャー付きはヤバいね。

平嶋:ホント、ヤバいです。(笑) 私、フルサイズのリッターバイクに乗る時は緊張するんです。でも、前々回にNinja 1000SXに乗った時、想像していた以上に楽しく走れちゃったので、正直なところZ H2 SEを甘くみていたところがありました。

手に負えない加速力が病み付きになる(平嶋夏海)

中野:調子に乗ってたんだ。(笑)

平嶋:調子に乗ってました、スミマセンでしたっ!

中野:(笑)

平嶋:加速がスゴ過ぎて……。ライディングモードがROADの段階で、もう手に負えません。笑うしかありませんでしたね。

中野:6000〜12000rpmくらいの回転域は、どこか違う場所に連れて行かれそうな凄まじい加速力をみせるよね。

平嶋:加速の仕方が、普通のエンジンとは違いますよね。回転が上がるのを待たなくて、スロットルを開けるといきなりフルパワーが出ちゃう感じで……。どこまで加速していくのか、見当がつきませんでした。

中野:僕もそこが気になってね。2速で全開を試してみたけど、ストレートの距離が足りなかった。無理して1速で回してみたら、リミットは13500rpmくらいだった。

平嶋:スゴい! 私には、とても無理です。直線が10kmくらいあれば、チャレンジしてみたいですけど。

中野:SPORTモードを使ったから、ウイリーしちゃって大変だった。

平嶋:見てました。(笑)

中野:まあ、とにかくスゴかったということだけど、楽しめた?

平嶋:う〜ん……。走らせることは出来ましたけど、バイクと仲良くなれたかというと全然ですね。でも、こんな加速力は未経験の世界ですし、スゴく面白かったです。

中野:やっぱりパワーデリバリーが、自然吸気エンジンとは異質だからね。難しく感じるところはあると思う。でも、兄弟モデルのNinja H2と比べると、かなりフレンドリーになっている。

平嶋:そうなんですか?

中野:Ninja H2は、かなりピーキーな特性で、そこが面白いけど乗りこなす難易度が高い。その点、Z H2 SEはネイキッドらしく、扱いやすくモディファイされている。アップライトなポジションだから、マシンが軽く感じられて振り回しやすい。スロットル操作に対する反応も、穏やかな方面に振られていて、欲しいところでパワーが立ち上がってくれる。と、思っていたんだけど……。

平嶋:けど?

中野:久々に乗ったら、十分以上に暴れ馬だった。繰り返しになるけど、こんなに速かったかなあ?

平嶋:(笑)

中野:いや、暴れ馬ではないかな? しっかりと調教はされているんだよ。でも、パワーがスゴすぎる。カワサキのパワーデリバリーの制御って、かなりレベルが高いんだ。

平嶋:中野さんがよく言っている〝開け口〞の部分とかですね。

中野:そう。乗り手がパワーを引き出しやすいように、細やかなセッティングが施されている。カワサキらしい味付けがされているんだけど、それ以上にエンジンが異次元。でも、もっと乗りやすく仕上げることも可能だったハズなんだ。エキサイティングな乗り味を演出した結果が、Z H2 SEなんだと思う。

平嶋:なるほど。今の私のスキルだと、積極的に楽しむところまでいけてないのが残念です。もっと、乗りたいな〜。面白いのは確かなんですよ、このバイクでツーリングにも行ってみたいですし……。私は試乗する時〝ツーリングに使ったらどうかな?〞って考えながら走っているんです。一般道での走行を想定して、60km/hで走ったらどうかって。Z H2 SEで60km/hで走るなら、一番気持ち良く走れるギアは何速かが、分からなかったんですよ。

中野:乗り方にもよると思うけど……。正直、僕も考えながら走っていたけど、答えは出せていない。だいたい、2速か3速を使って走っていたんだけど、全域でトルクフルだし6000rpmから上はパワーがモリモリ出てくるから、何速でもいいのかも? とりあえず、6000〜10000rpmの間が使えるギアであれば問題ないとは思う。こんなバイク他にないよなあ〜。走らせ方から変えていかないと、乗りこなせないね。そういう意味でも、これまでのバイクとは違うと思う。

平嶋:しっかり攻めていましたけど、スポーツライディングの観点からは、どういった評価になるバイクですか?

中野:パワーは凄まじいけど、電子制御がしっかりと効いているし、リアタイヤが滑りまくったりはしないんだよね。ハンドリングは軽快だし、ステアリング特性もニュートラル。見た目からはフレームが華奢な印象を受けるけど、良い仕事をしているよね。加速状態でパワーをかけた時、荷重をしなやかに〝いなし〞つつ、路面に駆動力を伝えてくれる。このエンジンパワーで、フレームがカチカチだったら、怖いだけだと思う。スーパーチャージャーの強大なパワーを持つエンジンを積んでいるからこそ、このシャシーなんだろうね。

【強大なパワーを受け止めるしなやかなで上質な車体】これで大丈夫なの? と思ってしまうほど、フレームは華奢に見えます。ですが、車体がパワーに負けて暴れるようなことはありません。パッケージとして、完成度の高い車体だと思います
【強大なパワーを受け止めるしなやかなで上質な車体】これで大丈夫なの? と思ってしまうほど、フレームは華奢に見えます。ですが、車体がパワーに負けて暴れるようなことはありません。パッケージとして、完成度の高い車体だと思います
【これまで体験したことのない強烈な加速が最高です!】こんなに凄い加速をするバイクを他に知りません。やっぱりこのパワーが最大の魅力ですね。「シュルシュルシュル~」という、スーパーチャージャー独特の作動音も楽しいです!
【これまで体験したことのない強烈な加速が最高です!】こんなに凄い加速をするバイクを他に知りません。やっぱりこのパワーが最大の魅力ですね。「シュルシュルシュル~」という、スーパーチャージャー独特の作動音も楽しいです!

平嶋:パワーが凄すぎて意識が向かない部分がありますけど、エンジンと車体を分けて考えてみると、すごく素直で乗りやすいですもんね。

中野:電子制御サスペンションについては、どう感じた?

平嶋:あ! そうでした、電子制御サスペンションのバイクなんですよね。すいません、エンジンに気を取られて、その部分をチェックすることが頭から飛んじゃってました。

中野:分からなくもないね。それぐらい強烈なエンジンだから。でも乗っていて、サスペンションに違和感を感じたりはしなかったでしょ?

平嶋:はい、意識しませんでした。

中野:意識させないってことが完成度の高さを証明しているよね。出来の悪い電子制御サスペンションは、動き方に違和感が出るけど、Z H2 SEは自然に走れちゃう。レベル高いよね。

平嶋:せっかくの電子制御サスペンションですし、停止状態でシート高が下がる機能が欲しいです。座ってみると、シート高がスペックより高く感じるんです。テキスタイルのウエアを着ている時なら、ひとりでも取り回せますけど、レーシングスーツだと厳しいです。ポジションはラクなんですよ、ハンドルが遠いこともないし……。ツーリングに行きたくなるポジションなのに、足つきが不安で腰が引けちゃう。

中野:重量もあるし大柄だから、乗り手を選ぶ面はあるかも?

平嶋:エキスパート限定とは思いませんが、スキルが高い方がより楽しめるバイクだと思います。

中野:乗りやすいけれど、乗りこなすのは簡単じゃない。僕としては、やっぱりスーパーチャージャーに魅力を感じる。この先、どう進化していくのか楽しみで仕方ないね。

KAWASAKI Z H2 SE

  • エンジン:水冷4ストローク並列4気筒 DOHC4バルブ
  • 総排気量:998cc
  • ボア×ストローク:76.0mm×55.0mm
  • 最高出力:200ps/11000rpm
  • 最大トルク:14.0kgf・m/8500rpm
  • 全長×全幅×全高:2085×815×1130mm
  • ホイールベース:1455mm
  • シート高:830mm
  • 車両重量:241kg
  • 燃料タンク容量:19L
  • 価格:225万5000円
スーパーチャージャー搭載エンジンは、スポーツツアラーのNinja H2 SXをベースに、ネイキッドに相応しい乗り味にモディファイが加えられている
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フロントブレーキは、ブレンボ製モノブロックラジアルマウントキャリパー「Stylema」を、φ320mmのディスクローターと組み合わせた強力なシステム
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インスツルメントパネルは、フルカラーTFT液晶スクリーンタイプ。「RIDEOLOGY THE APP」を使用してのスマートフォン接続機能も搭載している
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マスターシリンダーは、ブレンボ製セミラジアルポンプタイプ。ABSは様々な車体情報を制御に取り入れた電子制御式。装備するパーツのグレードは高い
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リバーススラントデザインのヘッドライトは、カワサキ製スポーツモデルのアイコン。ヘッドライトとメータユニットはフレームマウントとされている
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Ninja ZX-10RRの技術をフィードバックして作られたスイングアームは軽量かつ高剛性。リアサスペンションは、ボトムリンク式のユニトラックを採用
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マットブラックをまとった2023年モデルがリリース

画像の説明 ’21年に登場したZ H2の上位グレードSE に’23年モデルとして、メタリックマットグラフェンスチールグレー×エボニーが採用され、4月8日から発売が開始された

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