【KAWASAKI Ninja ZX-4RR KRT EDITION & Ninja ZX-25R SE】走り込んで見えてきた、ミドル4気筒スポーツ2台の個性
普通二輪免許カテゴリーの話題を独占している、Ninja ZX-4RR KRT EDITIONとNinja ZX-25R SE。ほぼ共通の車体に、排気量の異なる同系列エンジンを搭載する2モデルは、単純に排気量が違うだけの兄弟モデルではない。中野真矢さんと平嶋夏海さんの2人が、2台の個性を走り込んで検証する。
見た目から想像できない大きく異なる乗り味
中野:今回は、Ninja ZX-4RR KRT EDITIONとNinja ZX-25R SE、今普通二輪クラスの話題を独占している2台を走らせてみました。
平嶋:楽しかったですね!
中野:うん、楽しかったね。楽しかったし、今だから言っちゃうんだけど、実はこの2モデルを走らせると聞いた時は、大丈夫かな? って心配になった部分があったんだよね。
平嶋:と、言いますと?
中野:2台とも、この企画で取り上げているでしょ?
平嶋:そうですね。2台とも、とても高評価のバイクでした。
中野:そうだね。2月号でライダースクラブ・オブ・ザ・イヤー(R/COTY)の発表があったでしょ?
平嶋:はい、ありました。
中野:そこで、二人ともサーキット部門の上位にNinja ZX-4RR KRT EDITIONを上げているんだよ。
平嶋:でした! 選択理由は違ったかもしれませんけど、中野さんのような超エキスパートと私みたいな一般ライダーで、意見が一致して嬉しかったですもん! スキルや経験に違いがあっても、いいバイクは同じように楽しく感じるんだなって思いました。
中野:いいバイクは誰が乗っても楽しいと思うよ。でも、今回の企画に関しては、それがマイナスになるかもしれないって……。
平嶋:ひょっとして、走る前から評価が決まっちゃうかも? って、ことですか?
中野:そうなんだよね。二人とも同じ条件で走らせていて、1台をR/COTYに上げていて、1台を選外にしているわけだから。
平嶋:2モデルを一緒に走らせると、どうしても比較してしまうところがありますもんね。兄弟モデルだし、余計に比べてみたくなってしまう部分があるかも?
中野:サーキットで試乗している以上、やっぱり速さがひとつの尺度になる部分があると思うし、そうなると排気量の大きさは絶対的なアドバンテージになるし……。このページは、取り上げたバイクを僕と平嶋さんが走らせて、何を感じたかがテーマであって、速さ比べが目的ではないよね? 今回の2台も、それぞれいいところがあって、優劣がつく話ではないんだけど、結果的にNinja ZX-25R SEにネガティブな印象を持たれるようになったらイヤだなあ……という、心配があったんだよね。
平嶋:あ〜、それは私もチョット考えましたね。Ninja ZX-4RR KRT EDITIONが、凄くよかったから。でも、考えすぎだったと思いませんか?
中野:うん、全くの同意見。心配していたのは取り越し苦労だったね。2台を同条件で乗り比べたことで、こんなにもキャラクターが違うバイクだったのかと気付かされたよ。
平嶋:ホント、そうです。見た目も大きさも、ほぼ一緒ですけど、乗り味はかなり違いますよね。
中野:平嶋さんは、どのあたりに違いを感じた?
平嶋:まず、Ninja ZX-25R SEの軽さですね。Ninja ZX-4RR KRT EDITIONから乗り換えると〝軽っ!〞って感じました。実重量というより、バイクを振り回す時ですね。切り返しとか、やっぱり軽いんですよ。対してNinja ZX-4RR KRT EDITIONは、安定感が強いんですよ。どっしり感があるというか……。
中野:ビッグバイク的な?
平嶋:そうそう、それです。リッタークラスみたいに、重いわけではないですし、一般的には軽快なバイクだと思うんですよ。でも、乗り比べるとNinja ZX-25R SEの軽さが際立つなあって。
中野:面白いよね。車重は5kgしか変わらないのに。
平嶋:5kg差だと、走りに違いが出ないものなんですか?
中野:そうとも言い切れないけどね。いくつか理由は考えられるよ。まず確実なのは、フロントブレーキの違い。Ninja ZX-25R SEはシングルディスクで、Ninja ZX-4RR KRT EDITIONはダブルディスクでしょ? フロントサスペンションの、バネ下重量の差だから、これは大きいよね。ローターは回転する部分だから、ジャイロ効果でさらに違いがでる。Ninja ZX-4RR EDITIONの方が、安定性が高い車体構成だといえる。
平嶋:なるほど。
中野:あと、部品の重量までは確認できていないから確実ではないけれど、クランクシャフトもNinja ZX-4RR EDITIONの方が重いはず。クランクシャフトはエンジンの構成パーツで最も重いし、バイクの運動性や安定性に大きな影響があるんだ。
平嶋:うんうん。
中野:調べてみたら、キャスター角とトレール量も違うんだよね。
平嶋:どう違うんですか?
中野:数値だけみると、Ninja ZX-4RR EDITIONが運動性重視で、Ninja ZX-25R SEの方が安定性重視。でも、タイヤのサイズも違うし、サスペンションのセッティングも違うから、そこだけで判断はできない。パッケージでみて、どういったキャラクターか? ってことだと思う。
平嶋:漠然と、キャスター角が寝ていると安定志向、とか考えていましたけど、そうとも言えないんですね。
中野:そうだね。実際に走らせてみると、キャスター角が立っているNinja ZX-4RR KRT EDITIONの方が、安定感が高いのは事実だし。
平嶋:そうですよね。ポジションも違うように感じましたけど、それも影響しているんでしょうか?
中野:あるだろうね。
平嶋:Ninja ZX-4RR KRT EDITIONは、シートの座る部分が凹んでいて、マシンのホールド性が高く感じます。Ninja ZX-25R SEはシートがフラットで、高い位置に座っている感じがしました。ヤジロベーみたいにバランスを取っているみたい……。
中野:それで間違いないと思うよ。Ninja ZX-25R SEのポジションは軽快感が強いよね。Ninja ZX-4RR KRT EDITIONは、もっと排気量の大きなスーパースポーツモデル的な安定感がある。跨った時も、タンクが大きく感じるんだよね。同じパーツのはずなんだけど。Ninja ZX-4RR EDITIONの方は、バイクの〝厚み〞を感じる。乗り味のせいかな?
平嶋:面白いですね。
中野:車体寸法を全て計測したわけじゃないけど、ディメンションは実は結構違うんじゃないかな?
平嶋:違うのは排気量だけじゃないってことですね。
中野:フレームやスイングアームは同じものなのかなあ? 寸法的に同じでも、素材やパイプの肉厚が違えば、違う特性のフレームになってくるしね。どうなっているのか、知りたくなるね。
平嶋:中野さん、結構なメカ好きですもんね(笑)。
中野:男の子は、そういうもんなんです(笑)。それはともかく、この車体のキャラクターの違いは、メーカーとして当然の選択だと言えると思う。Ninja ZX-4RR KRT EDITIONはよりハイパワーな分だけ安定性が必要だし、Ninja ZX-25R SEは軽快感を強調するというね。エンジンに合わせて変えたというか、パッケージとしての味付けは見事だね。
平嶋:乗り比べると、意外なくらい違うバイクですもんね。
スパルタンなNinja ZX-25R SEか? 汎用性が光るNinja ZX-4RR KRT EDITIONか?
中野:エンジンも違うよね。単純に速さを比べたら、排気量が大きいNinja ZX-4RR KRT EDITIONに軍配があがるんだけど、その点だけで評価したくないなあ……。
平嶋:私もそう思います! Ninja ZX-4RR KRT EDITIONのエンジンって、最高出力ばかりにスポットライトが当てられがちですけど、私的には扱いやすさがステキだなあって。
中野:回るエンジンなのに、ちゃんと下からトルクあるもんね。
平嶋:そうなんですよ。Ninja ZX-25R SEは、やっぱり〝回してナンボ!〞のエンジンですよね?
中野:うんうん。
平嶋:私のレベルだと、ストレートはともかく、コーナーで高回転をキープするのは難易度が高いんです。コーナー進入時にも、高回転のままスピードを保つとか……。Ninja ZX-4RR KRT EDITIONなら、そこまでパワーバンドを意識しなくても走れちゃいます。コーナリングで回転数を落としちゃっても、立ち上がりで開けさえすれば、どうにかなっちゃう。
中野:より、イージーだよね。
平嶋:ですです! ギアの選択も神経質にならなくていい。コーナリングで考えなきゃいけないことがひとつ減るので、ブレーキとかライン取りとかに集中できました。
中野:バイク任せに走れる部分が増えるってことだね。
平嶋:そうなんです。私はレースをやっているわけではないですし、サーキットを走る時も、タイムの良し悪しより気持ちよく走れたかどうかを重視しているんです。
中野:楽しさというか、満足いく走りができたかどうかってこと?
平嶋:そんな感じです。そういう意味でも、Ninja ZX-4RR KRT EDITIONの方が走りやすくてよかったです。タコメーターと睨めっこしなくても、体感でパワーバンドを感じられます。
中野:僕も、改めてNinja ZX-4RR KRT EDITIONのエンジンはいいと感じたな。比べると、Ninja ZX-25R SEは非力に感じて……。でも、面白さは負けてないんだよね。
平嶋:私は、その楽しさを引き出す余裕がなかったかも? パワーバンドを使わなきゃって必死で……。
中野:確かにピーキーで手強い面はあるけど、高回転域が気持ちいいんだよね。僕の場合、Ninja ZX-25R SEのシフトポイントは14000rpmくらいなんだけど、そこからリミットの18000rpmまでの伸び方がいいんだよね。その間の4000rpmが、ずっと気持ちいい! Ninja ZX-4RR KRT EDITIONはパワーがある分、シフトポイントからピークまで、すぐ吹け切っちゃう。
平嶋:とんでもない高回転領域ですけど……。さすがです(笑)。
中野:僕は、リアタイヤのグリップを感じて、リアをしっかりグリップさせてから、マシンの二次旋回を引き出す曲がり方が好きなんだ。Ninja ZX-25R SEは、二次旋回を出しやすいんだよね。だから、そこに気持ちよさを感じているのかもしれない。二次旋回には車体のセッティングも、エンジン特性も関わってくる。今回、改めてNinja ZX-25R SEって、パッケージとして見て完成度が高いバイクだなって再認識したよ。ホント、よく出来てる。まあ、Ninja ZX-4RR KRT EDITIONに乗ると、下からトルクがあってラクに走れるなあ、よく出来てるなあって思うんだけど(笑)。
平嶋:私はエンジンに関しては、やっぱりNinja ZX-4RR KRT EDITIONのトルクを推しちゃいますね。白状しちゃいますけど、Ninja ZX-25R SEには、苦手意識があって……。
中野:そうなの? 気持ちよさそうに走っていたじゃん?
平嶋:Ninja ZX-25R SEって、排気音というかエンジン音というか、音もポイントじゃないですか?
中野:いいよね、音。
平嶋:回せてないと、その〝音〞が出ないんで、パワーを使えていないのが見ている人にバレちゃうんですよ。それが恥ずかしいんです!
中野:気にしなくていいのに(笑)。確かに、いかに高回転を使うかがポイントのバイクではあるし、そう考えるとスパルタンだよね。Ninja ZX-25R SEは、乗りやすいし誰もが扱える車格とパワーなんだけど、実は凄くマニアックな一面があるってことだね。今更ながら、新しい発見だなあ。
平嶋:それって、2台を交互に乗り比べたからこそですよね?
中野:そう思うよ。2台とも4気筒エンジンというトピックが強力過ぎて、個々のマシン本来のキャラクターを見極めようとする視点が欠けていたのかもしれないね。
平嶋:ですね。真逆とは言いませんけど、2台とも個性的です。
中野:Ninja ZX-4RR KRT EDITIONは、余裕のあるエンジンパワーと安定性の高い車体のおかげで、スポーツ性だけでなく思った以上に汎用性が高いと思う。
平嶋:ツーリングにも使えますし、旅好きの私はNinja ZX-4RR KRT EDITIONを推すかなあ?
中野:僕はスパルタンなNinja ZX-25R SEを……。いや、Ninja ZX-4RR KRT EDITIONもいい!(笑)
Ninja ZX-4RR KRT EDITION
Ninja ZX-25R SE
Ninja ZX-4RR KRT EDITION | Ninja ZX-25R SE | |
エンジン | 水冷4ストローク並列4気筒DOHC4 バルブ | ← |
総排気量 | 399cc | 249cc |
ボア×ストローク | 57.0×39.1mm | 50.0×31.8mm |
圧縮比 | 12.3:1 | 12.5:1 |
最高出力 | 77(80)ps/14500rpm | 48(49)ps/15500rpm |
最大トルク | 4.0kgf・m/13000rpm | 2.2kgf・m/12500rpm |
変速機 | 6速リターン | ← |
クラッチ | 湿式多板 | ← |
フレーム | トレリス | ← |
キャスター/トレール | 23.5°/97mm | 24.2°/99mm |
サスペンションF= | SHOWA製φ37mm SFF-BPテレスコピック倒立フォーク | ← |
R= | SHOWA製BFRC-lite ホリゾンタルバックリンクモノショック | ホリゾンタルバックリンクモノショック |
ブレーキF= | Φ290mmセミフローティングダブルディスク+対向4ポットラジアルマウントモノブロックキャリパー | Φ310mセミフローティングディスク+対向4ポットラジアルマウントモノブロックキャリパー |
R= | Φ220mmシングルディスク+片押し1ポットキャリパー | ← |
タイヤサイズF= | 120/70ZR17 | 110/70ZR17 |
R= | 160/60ZR17 | 150/60ZR17 |
全長×全幅×全高 | 1990×765×1110mm | 1980×750×1110mm |
ホイールベース | 1380mm | ← |
シート高 | 800mm | 785mm |
車両重量 | 189kg | 184kg |
燃料タンク容量 | 15L | ← |
価格 | 115万5000 円 | 96万2500円 |