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【KTM 390DUKE/TRIUMPH SCRAMBLER 400X/SPEED 400】 外車400㏄ クラス群雄割拠の時代

【左:中野真矢】
全日本GP250チャンピオンを経て、WGP250、WGP500、MotoGP、SBKで活躍。ライフスタイルブランド56design代表。本誌メインテスター
【右:原田哲也】
参戦1年目の1993年にWGP250王者となり、その後もWGP500で活躍。現在はスクールやレース解説などで活動。本誌エグゼク ティブアドバイザー

外車400ccの世界を切り開いたKTMの390デュークに、最後発となるトライアンフのスピード400とスクランブラー400X。奇しくも全車水冷単気筒でボア&ストロークも同じ。かたや10年を超える熟成を経たモデルに対し、トライアンフは完全ブランニュー。外車400ccモデルの構図を凝縮したようなモデルに、原田哲也さんと中野真矢さんはどんな見解を示すのか?

PHOTO/H.ORIHARA, S.MAYUMI TEXT/H.YATAGAI
取材協力/トライアンフモーターサイクルズジャパン 
TEL03-6809-5233 https://www.triumphmotorcycles.jp/
KTMジャパン TEL03-3527-8885 https://www.ktm.com/

’23年に一気に増殖外車400㏄スポーツ

 ’23年は海外メーカーの400㏄クラススポーツモデルが一気に増えた年だった。従来からあったKTMの390シリーズや、ハスクバーナの401シリーズ、BMWのG310シリーズのラインナップに加え、なんとハーレーダビッドソンやトライアンフまでこのクラスに新型スポーツモデルを投入したのだ。 

排出ガス規制への対応やABSの装着義務などの影響で、立て続けにCB400SFやSR400といった主力モデルが消えていく日本の状況とはまったく逆。気がつけば国内4メーカーが擁する400㏄のスポーツモデルの数を超えているのだ。 

なぜここまで海外メーカーはモデルのラインナップが増えたのか? もちろん日本のマーケットというよりはインド、アセアン地域でのバイクブームを受けての大増殖となっているのは疑う余地がないが、ユーザーとしてはマシンの選択肢が増えることは大いに嬉しいこと。 

そこで今回は、このクラス最後発であるトライアンフのスピード400とスクランブラー400X、10年以上前にこのクラスに先鞭をつけたKTMの390デュークを揃え、原田哲也さんと中野真矢さんに筑波サーキット・コース1000で試乗してもらい、キャラクターの違いを考察してもらうことにした。

Impression about ENGINE
ボア×ストロークは同じだがキャラクターは全く違う

編集部:今回の企画では、盛り上がる外車400ccモデルから3台をチョイスしました。まず’13年に初代が登場した、現代の外車400ccモデルの草分け的存在であるKTMの390デューク。こちらは’24年モデルでエンジンと車体のフルモデルチェンジを受けて、ライディングモード(エンジンマップ)切り替え機能などが追加されています。
一方、’23年末に登場したばかりのトライアンフのスピード400とスクランブラー400X。こちらは復活後のトライアンフとしては初のミドルクラスモデルです。両車とも同社ではモダンクラシックのカテゴリーに属しますが、スピード400はロードスター、スクランブラー400Xはその名の通りオフロードも視野に入れています。
この3台、おもしろいことにボア×ストロークが89×64mmと同じなのですが、まずはエンジンの話から伺いたいと思います。お2人は試乗してどう感じました?

【サーキットでも楽しめるKTM、パルス感が心地よいトライアンフ】
スポーツバイクのエンジンとして熟成を重ねているKTM。対して、トライアンフは低中速でのトルクが楽しいテイスト系のエンジンで、レブリミッターの介入も早い
【サーキットでも楽しめるKTM、パルス感が心地よいトライアンフ】
スポーツバイクのエンジンとして熟成を重ねているKTM。対して、トライアンフは低中速でのトルクが楽しいテイスト系のエンジンで、レブリミッターの介入も早い
【サーキットでも楽しめるKTM、パルス感が心地よいトライアンフ】
スポーツバイクのエンジンとして熟成を重ねているKTM。対して、トライアンフは低中速でのトルクが楽しいテイスト系のエンジンで、レブリミッターの介入も早い
【サーキットでも楽しめるKTM、パルス感が心地よいトライアンフ】
スポーツバイクのエンジンとして熟成を重ねているKTM。対して、トライアンフは低中速でのトルクが楽しいテイスト系のエンジンで、レブリミッターの介入も早い

中野:試乗したのが筑波サーキットのコース1000だったもので、トライアンフの2台に乗って、いきなり高い回転域の方を使って走っちゃったんだけど、〝あれ、なんか違うな?〞って思いました(笑)。

原田:そういうバイクじゃない(笑)。

中野:そう(笑)。だから一度仕切り直して、ゼロ発進からの加速とか、一般公道で使う状況をイメージしながら走ってみたら、このトライアンフのエンジンが心地いいのは、低中速域にあって、ストリート向けに作られているってことが分かりました。
トルクがあってスロットルをそれほど開けなくても進んでくれるところとか、低めの速度からスロットルを開けた時に感じる心地よいパルス感とか。とにかく低中速が気持ちいいバイクになっている。

原田:そうだよね。だから僕は意地悪な使い方をしてみた(笑)。ものすごい低速、40kmぐらいで6速に入れてみたり、そこからスロットル開けた時にきちんと加速するか? とかを試した。今まで……というか、ひと昔前の400ccのエンジンだったら、こんな意地悪な操作をしたら走らなかった。でも、このエンジンはトルクがあって、しっかり加速してくれるね。低中速域重視の街中で使いやすいモデルになっている。 
これまで僕の400ccモデルのイメージって、とにかくエンジンを回さないと走らないって感じなんだよね。特に直列4気筒モデルなんかはその傾向が強いんだけど、同じ400ccなのにこんなに走るんだって驚いたよ。確かにエンジン回転数は上の方は回らないけど、下道から高速道路まで、一般道を走るんだったらこれで十分じゃないかな? 
ちゃんと一番よく使う領域でもっとも気持ちいいフィーリングが得られるようになっている。乗っていて排気量が足りないとも思うことはなかったしね。

TRIUMPH SPEED 400
TRIUMPH SPEED 400

中野:低速域のパルス感がすごく気持ちいいですよね。かといって大きな排気量のバイクのように、スロットルをラフに扱ったときの急激なトルク変化で〝ドキッ〞とするところがないのもいい。おかげですごく自然に乗ることができます。

原田:公道を走るのにちょうどいいよね。スロットルをラフに扱ってもドンッと加速することがないから、初心者やリターンライダーにもおすすめ。トライアンフのエンジンは常用域にトルクがあるから乗りやすいし、本当に不満を感じない。

中野:KTMとはキャラクターが全然違いますよね。狙っているところが違うというか。390デュークに乗って感心するのは、よく作り込んでいるってところですよね。もちろん価格もビッグバイクとは全然違うので単純には比べられないところはありますけど、400ccクラスのバイクってどこかしらに隙が見えちゃう。だけど、サーキットレンジの走りをしてみてもこの390デュークはよくできていて、気になる隙がまったくない。クイックシフターの入りもいいので、高回転をキープして走るとものすごく速い。2ストロークみたいな感じ(笑)。

KTM 390 DUKE
KTM 390 DUKE

原田:レーシングスーツで乗りたくなったよね(笑)。そのくらいスポーツ性が高いエンジンだと感じた。ただ、一般道に持っていったときにどっちが気持ちいいのか? となると話は変わってくる。 
一般道はゆっくり走りたい僕の好みを言えばトライアンフを選ぶかな。KTMの390デュークのエンジンはサーキットで走るにはすごくいいけど、一般道だとバイクにちょっと急かされる感じがある。

中野:そうそう! それっ(笑)。

原田:その分、サーキットという限られた環境で走るのにはものすごく速くていいんだけどね。

TRIUMPH SCRAMBLER 400 X
TRIUMPH SCRAMBLER 400 X

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