【KAWASAKI Ninja ZX-6R KRT EDITION】+36ccのアドバンテージ【中野真矢×平嶋夏海インプレ】
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Ninja ZX-6Rは、排気量636ccの心臓を持つスーパースポーツ。己を貫くのが本領とはいえ、なぜカワサキは他に類をみないエンジンを生み出したのか? 中野真矢さんと平嶋夏海さんの二人が、走り込んでその意味を探る。
PHOTO/S.MAYUMI TEXT/K.ASAKURA
取材協力/カワサキモータースジャパン
0120-400819
https://www.kawasaki-motors.com/
いまや希少で貴重ミドルスーパースポーツ
中野:今回走らせてみた〝気になるバイク〞はNinja ZX-6R、4気筒636㏄スーパースポーツです。
平嶋:でしたっ!
中野:僕、このミドルカテゴリーについて言いたいことがあるんだ。少し語っちゃってもいいかな?
平嶋:もちろんいいですけど……。改まって、どうしたんですか?
中野:うん、レーシングライダー出身者として、言っておくべきことがあると思って。
平嶋:ドーゾドーゾ(笑)。
中野:ありがとう(笑)。このクラスって、レース界にとって、とても重要だと考えているんだよね。僕の時代は2ストロークエンジンの純レーサー中心で、125㏄クラスに始まって、250㏄、500㏄とステップアップしていた。この時代は、250㏄クラスの存在が大きかった。徐々にパワフルなマシンに慣れるという意味でね。その役割を担うのが、今は600㏄クラス。
平嶋:ですよね。だからMotoGPのMoto2クラスも、4気筒600㏄エンジンのワンメイクでスタートしたんですよね?
中野:そうだね。現在のプロダクションレースに当てはめると、世界選手権では普通二輪クラスのマシンで争われるWSS300クラスがあって、600㏄クラスに該当するWSSがあって、トップカテゴリーに1000㏄クラスのSBKがある。すごくスムーズにステップアップできるようになっている。

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平嶋:ぴったりハマってます。
中野:レース界にとっては、600ccスーパースポーツはすごく重要なカテゴリーなんだよ。でも、世界的にラインナップが減っているんだよね……。WSSでも2気筒や3気筒のマシンが増えているんだけど、レギュレーションで大きな排気量が選べるメリットあったりとか、600cc4気筒スーパースポーツの選択肢が少なくなっていることが大きな理由だと思う。
平嶋:困っちゃいますね。
中野:だから、カワサキがNinja ZX-6Rを作り続けてくれていることは凄く大事、それだけでもこのバイクには価値があるっ! 以上。
平嶋:結論出ちゃいました(笑)。
熟成に熟成を重ねて得た比類なき完成度の高さ
中野:じゃあ、改めてNinja ZX-6Rについて、語っていきましょう。レースに関して語っちゃったけど、ストリートバイクとしても600㏄クラスのスーパースポーツは、良いカテゴリーだと思うよね。
平嶋:どのあたりについて評価しているんですか?
中野:サイズ感とパワーだね。1000ccのスーパースポーツって、もはや速すぎるでしょう? その点600㏄はより小さく、軽くて親しみやすいし、十分以上に速い。
平嶋:分かります。私のスキルでは、1000㏄のスーパースポーツは、到底乗りこなせません。600㏄だって乗りこなすことはできませんけど、街乗りでもパフォーマンスの一部を楽しむことはできますから。
中野:その通りだと思うよ。Ninja ZX-6Rは排気量が中途半端でしょ?
平嶋:636㏄ですよね。ライバルは599㏄ですけど、なんで微妙に大きいんでしょう?
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中野:設計的に、排気量を増やせる量の適正値だったんじゃないかな?排気量を増やしたかった理由は、やっぱりトルクが欲しかったんだと思う。排気量を変えずに出力を上げるのは大変だし、それなら排気量を増やせばいいじゃんって。
平嶋:そんな安易な!
中野:あながち間違ってないと思うけどね。だって、アドバンテージは絶大だから。あきらかに走りに余裕がある。このバイクのパワーバンドは、11000rpmから14500rpmあたり。だけど、その回転域を外して、6000rpmくらいから開けてもツイてくるから。
平嶋:なるほど。でも、このままではレースに出られませんよね?
中野:そこがカワサキの偉いところなの。ちゃんと599㏄のレースベースモデルも用意していたんだ。製造コストを考えたら、普通そんなことしないでしょ? レースで重要なマシンだから、それ用も作る。でも、レースをする人ばかりじゃないから、使い勝手を考えてストリート専用マシンも作る。カワサキらしい、独自路線だよね。ユーザーとしてはありがたい。
平嶋:ですね。今日はサーキットでの試乗でしたけど、走りやすいバイクで楽しかったです。
中野:どのあたりが?
平嶋:やっぱり軽さですね。まずブレーキングが好印象でした。エイッ! ってブレーキをかけても、身体が突っ張らないんです。1000㏄クラスだと、腕がヘロヘロになっちゃうことが多いんですけど。
中野:そこは大きいね。軽いだけでなく、ブレーキシステム自体もハイグレードなパーツが奢られていると感じたな。制動力が高いだけじゃなくてフィーリングがいい。レバー入力に対する効力の立ち上がり方が、カチッとしていてレーサーっぽい。パッド離れも良くて、コントロール性は、かなり良いよね。
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平嶋:だからなのかな? ブレーキで余裕が持てるから、コーナーへの進入もラクなんです。コーナリング中もタイヤの設置感が高いんですよね。大丈夫かな? これ以上攻めたら危ないかな? って不安があると怖いじゃないですか。Ninja ZX-6Rは、そういう怖さがなくて、安心感が強いんですよね。私、乗りやすくて速くても、勝手に曲がっちゃうようなバイクが苦手なんです。このバイクは、乗り手が狙ったラインをピッタリと走ってくれます。もっと攻められるかも? って思わせてくれます。楽しかった!
中野:スーパースポーツに必要な運動性はしっかり備わっているけど、基本特性が安定性重視。ニュートラルで、本当にクセのない車体だよね。長く作られてきた車体だから、煮詰め切られているんだろうね。完成度はすごく高い。
平嶋:え、最新モデルですよね?電子制御も充実しているし。クイックシフターとか、凄くフィーリング良かったですよ。
中野:もちろんアップデートはされているよ。けど、フレームもエンジンも15年くらいベースは変わっていないはずだよ。
平嶋:そんなにですか!?
中野:〝古い〞のではなくて〝熟成〞が進んだってことだよね。カワサキは一つのモデルを育てるのが上手いよね。歴代Ninja ZX-6Rはいろいろ走らせてきたけど、乗るたびに進化を感じるもの。
平嶋:熟成って大事なんだなあ……。
KAWASAKI Ninja ZX-6R KRT EDITION
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



エンジン | 水冷4ストローク直列4 気筒DOHC4 バルブ |
総排気量 | 636cc |
ボア×ストローク | 67×45.1mm |
圧縮比 | 12.9:1 |
最高出力 | 122(128)ps/13000rpm |
最大トルク | 7.0kgf・m/11000rpm |
変速機 | 6段 |
クラッチ | 湿式多板 |
フレーム | ダイヤモンド |
キャスター/トレール | 23.5°/101mm |
サスペンションF= | SHOWA製φ41mmテレスコピック倒立フォーク SFF-BP |
R= | SHOWA製ボトムリンク付きモノショック |
ブレーキF= | φ310mセミフローティングダブルディスク+対向4ポットラジアルマウントキャリパー |
R= | φ220mmシングルディスク+1ポットキャリパー |
タイヤサイズF= | 120/70ZR17 |
R= | 180/55ZR17 |
全長×全幅×全高 | 2025x710x1105mm |
ホイールベース | 1400mm |
シート高 | 830mm |
車両重量 | 199kg |
燃料タンク容量 | 17L |
価格 | 156万2000円 |