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【ワイルドに、クールに】水野 涼 × DUCATI Panigale V4 R スペシャルインプレッション

全日本ロードレースの最高峰、JSB1000クラスをパニガーレV4Rで戦っている、水野涼選手。今回は特別に、量産車パニガーレV4Sとモンスター+のテストを敢行した。サーキットでのわずかな試乗時間だったが、レースで培った敏感なセンサーが各車の真髄を見抜く。V4Sからは、豪快なパワー感と軽快なハンドリングを、モンスターからは高回転域の伸びやかさを感じ取った。そして両モデルに共通していたのは、「カッコよさ」。バイクを語るうえで重要なキーワードだった。

PHOTO/S.MAYUMI TEXT/G.TAKAHASHI
取材協力/モトコルセ TEL046-220-1611
https://www.motocorse.jp/
DUCATI Team KAGAYAMA
【水野 涼】
1998年生まれ。群馬県出身。全日本ロードでは’15年にJ-GP3クラスで、’17年にはJ-GP2クラスでチャンピオンを獲得。’18 年からJSB1000に参戦。途中、2年間の英国スーパーバイク選手権参戦も。’24 年はDUCATITeam KAGAYAMAより勝利を目指す

切っても切り離せないエンジンとハンドリング

「このバイクを公道用に市販しているのか……」と、ちょっとびっくりした。走り出してすぐ、力感あふれるエンジンに驚かされたからだ。

パニガーレV4Rで全日本JSB1000を戦っているが、今回試乗したのは量産車のV4Sだ。にも関わらずパワーに驚いたのは、排気量がV4Rの998㏄に対して、V4Sは1103㏄だから。この105㏄という差が、かなり効いている。

また、V4Rのエンジンはダララララッと滑らかだが、V4Sはドンッ、ドンッと1発1発の鼓動が力強く、爆発の間隔も広く感じる。

そういうエンジンフィーリングのおかげもあって、1速から3速までのV4Sの加速感は、V4R以上に強烈だ。低回転域から一気にパワーが立ち上がる。

試乗したのはコンパクトな袖ケ浦フォレスト・レースウェイだったが、低速域ほどパワーでドンと押される感覚があるから、とても楽しい。

僕自身は、レースではずっと直4エンジンを走らせてきた。V型4気筒に乗るのは、今シーズンの全日本JSB1000を戦っているV4Rが初めてということになる。

レーシングライダーという生き物は、エンジンの気筒配列はあまり気にせず、「速ければ何でもいい」と考えるもの(笑)。そのおかげで乗り換えもスムーズに進んだが、そういったこだわりのなさを差し引いても、V型4気筒は面白いと感じる。

ハンドリングは非常に軽快だ。V4Rと通じるものがあり、V4Sもコーナーの切り返しが軽い。エンジンの排気量こそ違うが、車体構成が似通っていることもあって、ハンドリングのシャープさはレーサーっぽい。JSB1000マシンと遜色ない、と言ってもいいと思う。

また、ハンドリングを語るうえでも、やはりエンジンの存在が欠かせない。去年までの直4エンジンは、制御でトラクションを作り出していたような感覚だったが、パニガーレのV型4気筒はエンジンそのものの爆発によってトラクションが生み出されているように感じる。

だからなのだろう。いつ、どこでもリアタイヤの力強いグリップが得られるのだ。そしてコーナリングからスロットルを開けると、リアからグイグイと回り込んでくれる。

鈴鹿サーキットで初めてV4Rに乗る前は、「トップスピードが速い直線番長的なマシンなのかな」というイメージを持っていたが、実際に走らせると、リアのグリップ感、接地感、そして安心感を武器にしたコーナリングマシンだった。特にコーナーの立ち上がり加速は強烈だ。

この特性は、V4Sもそっくりだ。ハンドリングとエンジンがかなり密接に影響しあう感じは、ドゥカティならではかもしれない。

低回転域からパワー感を楽しめるV4Sだが、そこはスーパースポーツ、電子制御サスペンションの味付けも含めてかなりの高荷重設定だ。公道でもエンジンフィーリングを楽しめると思うが、V4Sの本質を味わうにはメリハリが必要になる。

しっかり減速し、しっかり加速してこそ本領を発揮するバイクだけに、やはりV4Sを走らせる場はサーキットが1番しっくりくる。

最後に挙げておきたいのは、V4Sのカッコよさだ。車体全体のフォルム、ヘッドライトやテールランプなどのデザイン、そしてラインの入れ方や配色など、とにかくスマート。さすがはイタリアンデザインだな、と感心してしまう。そしてこういうオシャレさは、所有感を満たしてくれる大事な要素だと思う。

実はレーシングマシンV4Rも、カッコよさがかなり気に入っている。レースで勝負を決めるのは、最後はライダーのモチベーション。カッコいいマシンで気合いが入れば、100%以上の走りができるものだ。

今年からドゥカティ・ファミリーの仲間入りをさせていただき、ドゥカティファンの方たちと触れ合う機会も増えたが、皆さんとにかく情熱的だ。V4Sのようなアグレッシブでカッコいいバイクを、スマートに乗りこなしてほしい。

それにしても、V4Sを公道用バイクとして市販してしまうドゥカティというメーカー、やはり熱い……。

水野 涼 × DUCATI Monster +:圧倒的乗りやすさ

V4S試乗の後、わずかな時間だったがモンスター+もテストすることができた。V4Sのエンジンパワーがかなりのインパクトで、しかも「モンスター」という名称。どんなに獰猛なのかと少し身構えながら走り出したが、拍子抜けするぐらい扱いやすいバイクだった。

特に優れていると感じたのは、フロントの追従性だ。車体を倒し込むと、リアタイヤとフロントタイヤが同じようについてくる。この自然なフィーリングが、乗り始めてすぐに「扱いやすい!」と感じられた要因だと思う。

エンジンは、V4Sよりも高回転寄りに感じた。高回転域で伸びやかなフィーリングが楽しめるので、スピードが乗るほど気持ちいい。今回はサーキットテストだったが、公道を想定すると高速道路のクルージングが楽しそうだ。ツーリングに出かけたら、思わず遠出してしまいそう……。圧倒的な乗りやすさを発揮してくれるバイクだから、ゆったり、まったりとした走りにも対応してくれるのがいい。

そしてV4S同様に、やはりカッコいい。いわゆるネイキッドだが、あちこちにイタリアンデザインのエッセンスが散りばめられていて、見応え十分だ。

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