【CBR600RR/Ninja ZX-6R KRT EDITION/GSX-8R】日本のフルカウルミドル それぞれでの生存戦略【ポジション&サスペンションパート】
一般ライダーがサーキットでファンライディングを楽しむためのマシンとして、推奨されることも多いのが、ミドルクラスのフルカウルスポーツモデルだ。とはいえそのキャラクターや長所は、車種ごとに広い振り幅があり、異なっている。’24年に新登場、あるいは熟成された3機種に中野真矢さんが乗り、それぞれの魅力を掘り下げる。今回はポジションとサスペンションについて。
PHOTO/S.MAYUMI TEXT/T.TAMIYA
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シャシーの剛性感やポジションも明確に違う
車体設計に関しても、3機種の中で最もレーシーなのはCBR600RR。ライディングポジションはタイトで、シートに対するステップの位置は高めにセットされており、僕の身長(167cm)だとサーキットでライディングするのにピッタリです。
エンジン同様、車体も基本部分は以前のモデルから大きく変えることなく、細部熟成により優れたバランスを維持する開発手法。僕の自宅には’07年に500台限定で発売されたスペシャルエディション(同年に中野さんが所属したコニカミノルタ・ホンダのMotoGPマシンレプリカグラフィックモデル)があるのですが、フロントフォークやブレーキ、前後ホイールなどの仕様変更が施されているとはいえ、メインフレームはほぼそのまま継承されています。
バイクの開発というのは、新しい設計に変えればそれでOKというわけではなく、刷新後に全体的なバランスが良くなるまで数年を要することもあります。その点、CBR600RRは基本がしっかりしている印象。完成度の高さが感じられます。
車体や前後サスペンションは、今回の3機種だとCBR600RRが一番カチッとして、レーサーに近いダイレクト感。フロントタイヤが近くにあるイメージで、スポーツライディングで積極的にコントロールできるし、バチッと走りが決まったときには快感なのですが、その代わりにシビアな操縦も求められます。
これに対してZX-6Rは、同じように車体の基本設計は純粋な速さを追求していた599cc時代から受け継がれていますが、前後サスペンションの仕様をソフトな方向に最適化するなどし、扱いやすさがプラスされています。ライダーの感覚としては、フロントタイヤが少し遠くて直進安定性に優れるイメージ。サーキットでラップタイムを削りたいときには、もっとダイレクトな方が適しているかもしれませんが、パッと乗ったときの操縦しやすさに繋がる大きな要因になっています。
レースユースも想定されていた時代から車体ディメンションが受け継がれていることもあり、ポジションはスパルタン。前傾姿勢はけっこうキツめです。
最近のカワサキらしいエンジンの扱いやすさや、サスペンションのややソフトな動きを考慮したら、もう少し緩めのポジションでも合うと思いますが、極端にレーシーではないけどスーパースポーツらしさを存分に演出するパッケージとしては、これで正解なのかもしれません。
これらの2台がアルミ製フレームを採用しているのに対して、GSX-8Rはスチール製フレーム。エンジンの形式だけでなく車体の設計思想も大きく異なっています。セパレートハンドルだけど、本格派のスーパースポーツと比べたら前傾姿勢はだいぶ緩く、ステップ位置も低め。これならツーリングで使うのもムリはなく、それでいて、慣れればサーキットもかなり楽しく走れます。
もちろん、スーパースポーツと比べたら、コンマ数秒を詰めるような走りで追い込めるようなポテンシャルはないのですが、最初からある程度のハイペースで走れてしまうのが魅力。路面温度が低い時期など、難しいコンディションでは特に大きなアドバンテージになると思います。
前後サスペンションは、本格的にサーキットを走るならリアのプリロード以外にも調整機構が欲しいところですが、車体とのマッチングとしては物足りなさは感じません。また、勝手な先入観で「止まらなそう」と感じていたフロントブレーキも、実際にはかなり攻めたときでもレバーを握り込んだ奥のほうまでしっかり効いてくれて驚きました。
キツくないライディングポジションや挙動の分かりやすさなど、GSX-8Rの車体設計は、サーキットでのスポーツライディングのエントリー用としても最適。楽しさを体感しやすく、長く続けられる理由にも繋がりそうです。