【カワサキ Z900RS Yellow Ball Edition&ELIMINATOR PLAZA EDITION 】乗ればわかる選ばれるワケ【中野真矢×平嶋夏海 インプレッション】
小型二輪(251cc以上)の国内販売台数で、6年連続でトップを獲得しているZ900RS。昨年デビューするや、同3位の販売台数を記録したELIMINATOR。カワサキが誇る大ヒットの2モデルは、なぜこれほど大きな支持を得ているのか?中野真矢さんと平嶋夏海さんが、ストリートを走り込んで検証した。
PHOTO/S.MAYUMI TEXT/K.ASAKURA
取材協力/カワサキモータースジャパン
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大人気のカワサキ2モデルをストリートで深堀り
中野 今回は少し趣向を変えて、僕たち二人の〝気になるバイク〞をストリートに持ち出してみました。
平嶋 ちょっとしたツーリングでしたね。私、基本的にツーリングライダーですし、やっぱりストリートでの使い勝手が気になっちゃいます。こういう企画を待ってました! 実際のところ、ストリートでの性能って大切だと思うんですよ。サーキットばかりがバイクの楽しさじゃないですよね?
中野 サーキットを走らせているだけじゃ、分からない部分もあると思うしね。それで今回、僕が選んだのがZ900RS。
平嶋 私はエリミネーターをチョイスしました。
中野 で、この2台、カワサキの大型バイクと中型バイクで、’23年の売り上げトップなんだよね。Z900RSは小型二輪全体でもトップ。しかも、6年も連続首位。
平嶋 スゴい人気ですよね!
中野 エリミネーターも小型二輪で3位と、こちらも大人気。平嶋さんも、気になっているバイクだから選んだんだよね?
平嶋 ですね。すこし前にエリミネーターに跨る機会があって、改めて〝いいトコロを突いてるな〞って思ったんです。
中野 と言うと?
平嶋 今、400ccクラスの新車で買えるクルーザーって、他にないじゃないですか? まず、そこがポイントですし、ライディングポジションとか見た目のボリューム感とか、皆が求めてるのはコレだなって感じるものがあったんです。それで、もう一度走らせてみたくなりました。
中野 僕はシンプルに、これだけ高い評価を受けているZ900RSというバイクの、ストリートでの走りを再検証してみたいって考えた。今まで何度も試乗してきたけど、ほぼサーキットばかりで、ストリートで走らせた経験が実はあまりないんだ。でも、本領はストリートにあるバイクだと思うし、じっくりバイクと対話してみたかったんだよね。面白いよね、二人ともベストセラーの2モデルを選ぶ結果になったけど、〝仕込みなし〞だからね。
平嶋 ガチです。ヤラセなし(笑)。
中野 さて、今回は「高速道路」「ワインディング」「街中」の3つに分けて評価してみることにしました。じゃあ、まず高速道路から感じたことを話していこうか。
平嶋 エリミネーターって、見た目のボリューム感が大きいですよね? 特に跨った時にタンクの存在感が強い。でも、ポジション自体はコンパクトなんですよね。私の体格でも、手足が伸び切って疲れるようなことがないんです。シートも適度なクッション性があって、後ろが盛り上がった形状も加減速で身体がズレないので好印象でした。
中野 パワーはどう? 400ccのツインだし、凄いパワフルってわけじゃないけど、僕は全然必要十分だと思ったな。日本で走るなら、これ以上は不要かも? と感じたよ。
平嶋 強烈な加速力とかは感じませんけど、回転で稼ぐっていうのかな? 回転数が上がっていくのに合わせて、パワーが盛り上がる感じが気持ち良かったです。なんというか、走りが軽やかなんですよね。直進安定性は十分にありますけど、レーンチェンジも軽快。中野さんは、Z900RSでの高速走行を、ずいぶんと楽しんでいたみたいですね。
中野 楽しかったね。一番楽しかったのが高速かも? クルージングが気持ちいいんだよね。高いギアをホールドして、わずかにスロットルを開けてキープ。6速80km/hくらいだと、エンジン音も静かで全然疲れない。どこまでも走っていけそう。開ければビッグバイクらしく、力強い加速をみせてくれるけど。
平嶋 Z900RSって、走っている時の音がもの凄くいいですよね。一緒に走っていて〝あー、いい音だなあ〞って思いますもん。静かだと、物足りなくないですか?
中野 音、いいよね。排気音もエンジン音も吸気音も全部いい。マフラー換えなくてもいいかな? って思えるくらい。でも、静かに走っても心地いいんだよなあ……。
平嶋 バイクの音の魅力って、あんまりピンと来なかったんですけど、今回Z900RSと一緒に走って、音の世界に目覚めちゃったかもです。
中野 目覚めちゃったか(笑)。でも、それくらい音がいいバイクだよね。スロットルを開けた時だけでなく、閉じた時のバラッ!って音も雰囲気あるんだよね。乗り手の気分を高めてくれる。だから、ワインディングでスロットルを開け閉めするのが楽しい。〝しっとり感〞がある車体もいい。サスペンションは基本的にソフトだけど、剛性感もしっかりある。前後タイヤから接地感が強く伝わってくるから、コーナーでの安心感が高い。乗車位置とか乗り方を変えると、ハンドリングが変化するバイクがあるけど、Z900RSはどんな乗り方をしても挙動が乱れたりしない。
平嶋 安定志向ってことですか?
中野 そう言ってもいいね。ガシガシ攻めたい人なら、機敏なスーパースポーツを勧めるよ。でも、Z900RSの車体は魅力的だよ。スーパースポーツのスポーツ性を引き出すには、ある程度のスピードや高荷重が求められる。その点Z900RSなら、誰もがパッと乗って、どんなペースで走っても安心感を持ったまま楽しめると思うな。
平嶋 私はエンジンの楽しさが印象に残ってますね。リッタークラスだから当然パワフルなんですけど、パワーの出方が人間の感性とズレがないって言うのかな? 自分の感覚より先に行かないって感じで、楽しく走れました。でもエリミネーターも、意外なほどワインディングが楽しかったんですよ。
中野 だね! ホント意外だった。
平嶋 クルーザーのコーナリングって、前後のタイヤがバラバラに動いている感じがあったりするじゃないですか? エリミネーターのポジションや乗車感覚はクルーザーなんですけど、走らせるとネイキッドっぽいですよね。ハンドリングが素直で、フツーに攻めて走れちゃう。
中野 攻められるね。前後の荷重をコントロールして、スポーツする走りが面白い。ワインディングが楽しめるクルーザーって、貴重だよね。
平嶋 ですよねっ! 強いて言えば、ブレーキがもう少し初期から効いてくれると、もっと突っ込めるかも?
中野 制動力自体はしっかり確保されているから、好みの特性のパッドに交換してもいいんじゃない?
平嶋 そうですね。制動力自体に不満はありませんでした。とにかく軽快にワインディングを走れちゃうのが、嬉しいサプライズでした。
中野 予想外に良かったね。
平嶋 エリミネーターは街乗りも良かったです。足着き性が抜群にいいですし、重心なのかな? 乗り味が軽く感じるので、取り回しはなんの不安も感じませんでした。
中野 あの足着き性は素晴らしい。
平嶋 低速のコントロール性もいいんですよね。信号待ちから発進して、すぐに右左折する時とか、不安定になりがちじゃないですか? そういう場合も、安定していて扱いやすいんです。サーキットを走るだけでは、気付けなかったポイントですね。
中野 そうだね。Z900RSでの街乗りはどう感じた?
平嶋 私には車格が大きいんですよね。足着き性もあまり良くないですし、重さも感じます。乗り難いとは思いませんけど、やっぱりエリミネーターの方がラクです。
中野 ストップ&ゴーが多い街中は、足着き性は気になるよね。エンジン特性は、街乗りにもマッチングが良いんだけどなあ。低速トルクが太いから、回さなくても走れちゃう。4気筒エンジンは低速が弱いことが多いけど、Z900RSは下から力強くて、低回転域でも楽しい。あと、やっぱり音がいいよね。低音が効いて品のあるサウンドが気持ちいい。
平嶋 音、いいです。惹かれます。
中野 欲しくなっちゃった?
平嶋 前から気になるバイクではあるんですよ。ネオクラシック好きとしてはデザインも好みですし、改めていいなあって思いました。でも、エリミネーターもいいなあって。正直なところ、購入を考える対象じゃなかったんですよ。大型二輪免許を持っているし、大型に乗りたい気持ちもあって……。
中野 そういうのあるよね。
平嶋 はい。でも、今回ストリートを走らせたら、エリミネーターの良さにビックリしちゃいました。軽快だし、取り回しはいいし、パワーだって必要十分。なんにでも使えるバイクだなって。中野さんは、どう感じました?
中野 どちらも完成度高いよね。それぞれ魅力的。どちらが好きかといったらZ900RSかな? ストリートを走らせてバランスの良さを再認識できたし、〝Z〞のレガシーにも惹かれるし。でも、エリミネーターもかなり良かった。2台とも欲しくなっちゃった。
平嶋 またですか?(笑)
中野 ベストセラーであることも納得だね。実際、僕も欲しい(笑)。