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【3シリンダーの誘惑】青木宣篤が3メーカーの3気筒を試乗 XSR900 GP

車体とのマッチングに力を注いでいるヤマハ

XSR900GPは、往年の名レーサーであるYZR500をオマージュしたデザインが特徴的だ。私世代には馴染みがあり、「これがバイクだよね」と思わせてくれるフォルムは、絶妙だ。

ヤマハは現在、国内メーカーでは唯一3気筒エンジンを作っている。そのこと自体、私としては称賛に値すると思っている。

’60年代〜’90年代にかけて長く続いた2スト全盛期には、2スト3気筒ハイパフォーマンスマシンが数多く存在した。後の4ストを含めれば、国内4メーカーのすべてが3気筒エンジンを採用していたという歴史的経緯がある。

しかし、残念ながらいま3気筒エンジンを作っている国内メーカーは、ヤマハだけだ。ヤマハは、’14年にMT-09に直列3気筒エンジンを採用した。スノーモビル用に作り続けていた気筒配列とはいえ、バイク用としては’76年にリリースしたGX750以来、実に38年ぶり。大きな投資であり、チャレンジだった。

その心意気を、私は買いたい。以降、早10年にわたって直列3気筒を作り続け、国内メーカーでは他にない気筒配列エンジンはヤマハを象徴する存在にもなっている。オリジナリティのある技術を追求する姿勢は、称賛に値する。

走ってすぐに気付いたのは、「非常によくしなるフレーム」だ。しなるということは、簡単に言えば剛性を落とすということ。XSR900GPのフレームは「ペニャペニャ」と言ってもよく、「よくぞここまで突き詰めたな」と感心するほどだ。

しかも一部ではなく全体的にしなるので、非常に気持ちがいい。スロットルを開けてからはリアに荷重が鮮明に乗るので、これがまた爽快だ。右手とリアタイヤが直結しているようなダイレクト感である。

これはもちろん、フレームがしなることだけで得られるものではない。エンジン特性も大いに影響している。

初代MT-09のエンジンはちょっと荒々しい印象だったのだが、XSR900GPはトルクフルでありながら、特性はフラット。スロットルを開けやすいので、しなるフレームとのマッチングは絶妙だ。

排気量なりの余裕がある。ポジションは、走り込むほどにしっくりくる。いろんなものがいいところでバランスしているのは、現代版直列3気筒を作り始めてから10年の月日をかけて熟成させた賜物だ。

SPECIFICATIONS】XSR900 GP

XSR900をベースに、’80 年代のGPマシンをオマージュしたアッパーカウルやシートカウルなどを採用。コンパクトな燃焼室による素早い燃焼がトルクフルな特性をもたらす。専用開発のKYB製前後サスペンションは、ベースモデルよりセッティング幅を拡大している

エンジン水冷4ストローク
直列3 気筒DOHC4 バルブ
総排気量888cc
ボア×ストローク78x62mm
圧縮比11.5:1
最高出力120ps/10000rpm
最大トルク9.5kgf・m/7000rpm
変速機6段
クラッチ湿式多板
フレームダイヤモンド
キャスター/トレール25°20′/ 110mm
サスペンションF=KYB 製φ41mm
テレスコピック倒立フォーク
R=モノショックリアサスペンション
ブレーキF=φ320mセミフローティング
ダブルディスク+ 対向4ポット
ラジアルマウントキャリパー
R=φ220mmシングルディスク+
1ポットキャリパー
タイヤサイズF=120/70ZR17
R=180/55ZR17
全長×全幅×全高2160×690×1180mm
ホイールベース1500mm
シート高835mm
車両重量200kg
燃料タンク容量14ℓ
価格143万円

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