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【ドゥカティ Panigale V4S】美しさと機能性が融合したデザイン【エアロダイナミクス】

ドゥカティ・スーパーバイクの伝統は、速さだけにあらず。エレガントでシャープな佇まいでも、ライダーたちの憧れとなってきた。新型も当然のようにそれを継承しつつ、美しさを速さにもつなげている。

近年のMotoGPマシンは、電子制御の高度化と同時に、エアロダイナミクスの進化が大きなトレンドとなっている。新型パニガーレV4シリーズの開発にはMotoGPの活動で培われたノウハウが数多く導入されているが、「電子制御と空力を極める」という思想こそが一番大きなフィードバックかもしれない。

電子制御については前ページで詳しく触れたが、一方でエアロダイナミクスについては、エアロパーツを車体に追加装着したような従来の空力パッケージから大幅な進化を遂げ、美しいスタイリングと高効率のエアロダイナミクス機能を最大限に一体化して、新境地に到達。これにより例えばフロントまわりは、ウイングレット単体ではなくフェアリング全体で空力機能を高めるようなモデリングが施されている。

威圧感はやや減ったかもしれないが、その洗練されたルックスは、多くの人を魅了するだろう。

プリミティブな力強さと美しさは916に通じている

ドゥカティは「この新型をデザインする際に916(と1098)を基準とした」と明言している。フロントが25mm上昇し、テールは上方の伸びが少なくなったことで、先代ほどの極端なフロントローイメージは減少。

コンパクトなLEDダブルヘッドライト、レイヤード感が薄められたサイドカウル、上面サイドのエッジが効いた燃料タンクも、916を彷彿とさせる。

多くの人に愛された稀代の名車は、生産終了から20年が経った現在も無視できない、スーパーバイクのアイコンなのだ。

ライダーを包み込むようなエアロダイナミクスを追求

新作のフェアリングは、流体力学による分析とテストライダーからのフィードバックを組み合わせながら、1年半以上をかけて開発された。

同じく新設計された燃料タンクのデザインと組み合わさることで、ライダーが伏せやすい設計とし、空気抵抗は4%削減。テストライダーが「静かな気泡の中にいるようだ」と表現するように、ストレートでの伏せたポジションを維持する際に体力的負担が少ないエアロダイナミクスを実現している。

さらに新型のエアロダイナミクスは、空気抵抗削減だけでなく冷却性と快適性を向上するエアフローも大きなテーマとなっている。

ダブルプロファイルのウイングレットは、フロントまわりのデザインと完全に統合。先代と同等のダウンフォースを生み出す

フロントのエッジデザインはMotoGPマシン由来のライン

操縦性を高め、サーキットでの速さに貢献するエアロダイナミクスを追求。ウインドシールドは上端が高くなり、ストレート区間でライダーをより効果的に保護。

とくに腕や肩のウインドプロテクション効果がアップされている。空力デザインにはMotoGPマシンの空力コンセプトを多数フィードバック。

ちなみに、側面から見たフェアリングの表面積を減らし、横方向の空気透過率を高める手法もMotoGPマシンと同様で、これにより高速域での旋回がより俊敏になる。

フェアリングとウイングレットの一体化も、形状は大きく異なるがMotoGP的思想だ。

2025
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フェアリングの前端をフロントホイールに対して後方にデザインすることで、コーナリングの俊敏性を向上。これはMotoGPマシンからフィードバックされたノウハウのひとつで、サイドから見たときにフロントホイールとの空間が特徴的だ。また新旧を見比べると、新型はフェアリングに空力機能を最大限に一体化した「空力デザインコンセプト」であることがよくわかる
フェアリングの前端をフロントホイールに対して後方にデザインすることで、コーナリングの俊敏性を向上。これはMotoGPマシンからフィードバックされたノウハウのひとつで、サイドから見たときにフロントホイールとの空間が特徴的だ。また新旧を見比べると、新型はフェアリングに空力機能を最大限に一体化した「空力デザインコンセプト」であることがよくわかる

ホールド性と運動性を高めるエルゴノミクス

存在感のあるショルダーと細身のシルエットが特徴的なアルミ製燃料タンクは先代同様の17L容量。その後端付近は、あらゆる体格のライダーが減速や旋回で確実にホールドできるよう設計されている。

シートは前後長が35mm、左右幅が50mm増加。表皮は後方への移動が楽で前方へのズレの抑制を狙った素材となり、テールエンドと併せてハングオフや加速態勢でのフィット性向上が図られている。

ライダー用フットレストは、ニーグリップやステップワークがしやすいよう、先代より10mmずつ内側にセット。パッセンジャーシートの高さも抑えられている。

大型フロントフェンダーはレーシングスリックに対応

フロントフェンダーまで新デザイン。ドゥカティがマシンを独占供給しているMotoE世界選手権のV21Lプロトタイプで培ったノウハウを活かし、空気効率の最大化が図られている。

なお新型は、車両に一切の改造を加えることなく、SBKで使用されているワイドでハイトのあるピレリ製スリックタイヤ(フロント125/70R17、リア200/65R17)を履くことができるよう設計されている。

もちろんこの場合でもタイヤウォーマーを問題なく使用可能。“すぐにレースできる”マシンなのだ。

滑らかな凹凸の外装でエアフロー性能も最大化

フェアリングの側面は、エンジンの熱気を効果的に排出してライダーの足から遠ざける機能を持つ「チーク」を備えたすっきりとした機能的なラインが特徴。

アンダー側に設けられた垂直方向のダクトは、ラジエーター周辺のエアフロ―を改善することにも貢献している。

“サメのエラ孔”を思わせるダクトがデザインされていた先代と比べて、新型のサイドビューは“面”の印象が強め。ただし実車は、写真以上に立体的で複雑な造形だ。フロントカウル下部のサポートは走行風導入を促進する
“サメのエラ孔”を思わせるダクトがデザインされていた先代と比べて、新型のサイドビューは“面”の印象が強め。ただし実車は、写真以上に立体的で複雑な造形だ。フロントカウル下部のサポートは走行風導入を促進する

走行風をより効率的に取り込むサポートパーツやフロントフェンダー形状、MotoGPマシンからヒントを得たエアディフレクター(ラジエーターの間に配置)の効果もあり、ウォーターラジエーターの空気流量は9%、オイルラジエーターの空気流量は19%増加。

ラジエターそのものも有効冷却面積の拡大などが施されており、気温が高いコンディションでのサーキット走行における冷却性能が高められている。

サーキットに即対応するミラー&ウインカー

ドゥカティ・スーパーバイクは、999シリーズ以降は一貫してフロントウインカーがバックミラー埋め込みタイプだったが、新型はヘッドライトに統合された。

さらに、バックミラーはステーがフロントカウル裏側から伸びる構造に。このため、走行会参加などでサーキットを走るときに、バックミラーの着脱が容易になり、カウルに開いたバックミラー装着用のネジ穴が露出するのを、カバーなどで隠す必要がなくなった。

ガタつきを解消し操作にリニアに反応

従来型パニガーレV4Rと同じスロットル設定を採用。軸方向の遊びを0°(従来型は7°)、回転方向の遊びを先代比30%削減。加えて電子制御スロットルを先代と比べて50%軽く設計。

ライドフィール向上やスロットルポジションの維持しやすさにつなげている。

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