【トライアンフ STREET TRIPLE 765RS】原田哲也&青木宣篤が見た至高のライディングプレジャー
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青木宣篤「上質な乗り味と安心感はライダー本位の開発の賜物」
本当に乗りやすいバイクだ。そして、楽しい。ストリートトリプル765RSの乗りやすさと楽しさは、いったいどこから来るのだろう?
ひとつ感じるのは、クランクシャフトの重さである。エンジン内部のムービングパーツとしては最大のクランクシャフトは、エンジン特性に大きな影響を及ぼす。
一般的に、スポーツバイクのエンジン設計者は、クランクシャフトを軽くしたがる。吹け上がりがシャープになるし、パワーロスも少ないからだ。しかし、ややもするとピーキーで気難しくなりやすい。
ストリートトリプル765RSのエンジンも、素性としては非常に元気で活きがいい。良く言えばピックアップがいいのだが、ツキが良すぎてスロットルコントロールがシビアになってもおかしくない。
そこで登場するのがクランクシャフトだ。ストリートトリプル765RSのエンジンは、恐らくあえてクランクシャフトに重さを与え、粘り強さをもたらしているようだ。
スロットルを開けた時の反応に行き過ぎた感じがなく、人の感性にニュートラルに寄り添う感覚は、考え抜かれたクランクシャフトの重さからくるものだと私は思う。
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’93年から’04年にかけて、世界GP250ccクラス、500ccクラス、MotoGPクラスに参戦。ブリヂストンMotoGPタイヤやスズキMotoGPマシンの開発ライダーも務めた"
……と、のっけからかなりマニアックになってしまったので、このまま突っ走ってみたい。ストリートトリプル765RSには、逸品と呼べる豪華パーツが惜しみなく装備されている。
フロントサスペンションはショーワ製ビッグピストンフォークで、リアはオーリンズ製STX40だ。これらが実にうまく調教されていて、しっとりと上質な乗り味を醸し出しているのだ。
ショーワとオーリンズの製品が優れていることはもちろんだが、それらをポン付けしただけでは、この上質感は絶対に得られない。車両メーカーであるトライアンフがしっかりとセットアップしているからこそ、このバイクはまとまりのよい仕上がりになっているのだ。
ショーワのフロントフォークとオーリンズのリアショックに共通しているのは、摺動部分がある限りどうしても発生してしまうフリクション(摩擦)さえも、減衰力として活用していることだ。
これはこれですごいことだが、そういった微妙な特性を備えた前後サスをうまく調律し、バランスさせるのは、かなり難しいことなのだ。
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ブレーキングしたりスロットルを開けると車体はピッチングするが、ストリートトリプル765RSはこの前後の動きが見事なまでに調っている。チグハグ感がまったくなく、前から後ろ、後ろから前への荷重移動も実に滑らかだ。
これがコーナー進入でのブレーキング時や、コーナー出口でのスロットルオープン時に大きな安心感をもたらし、乗りやすさ、そして楽しさの源になっている。軽快さが与えられたハンドリングは、タイトな低速サーキットも苦にしない。これならさらに低速の街乗りやワインディングでも十分に楽しめるだろう。
このセットアップの丹念さは、並大抵のことではない。トライアンフは、セットアップという見えない部分をないがしろにせず、かなりのコストと時間をかけたはずだ。
ブレーキも同様だ。ブレンボは誰もが認める高性能ブレーキメーカーだが、ただブレンボのキャリパーを付ければいいというものではない。やはり車両特性に合わせた入念なセットアップが必要で、ストリートトリプル765RSは抜かりなくそれが行われているのが分かる。
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剛性感や制動力の安定性といったキャリパーそのものの性能もさることながら、レバーへの入力に対してリニアに反応し、前後サスペンションの減衰特性を見越した適度な制動力を発揮しているあたりは、やはりトライアンフがいい仕事をしている。
私が思うに、トライアンフはバイク開発にあたってテストライダーの意思や意見をかなり重視しているのではないだろうか。「とりあえず高性能パーツを付けておけばいい」と、商品性だけを考えているメーカーも散見される中、真面目に、丹念に、ライダーの感性をしっかりとフィードバックしながら開発しているように感じる。
とても貴重で、大切なバイク。多くの人に勧められる。
TRIUMPH STREET TRIPLE 765 RS
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エンジン | 水冷4ストローク直列3 気筒DOHC4 バルブ |
総排気量 | 765cc |
ボア×ストローク | 77.9×53.3mm |
圧縮比 | 13.25:1 |
最高出力 | 130ps/12000rpm |
最大トルク | 80Nm/9500rpm |
変速機 | 6速リターン |
クラッチ | 湿式多板 スリップアシストクラッチ |
フレーム | 2ピース高圧ダイカストリアサブフレーム付きアルミツインスパー |
キャスター/トレール | 23.2°/96.9mm |
サスペンションF | ショーワ製φ41mmBPF |
R | オーリンズ製STX40ピギーバックリザーバーモノショック |
ブレーキF | φ310mmダブルディスク+ブレンボ製Stylema4Pラジアルモノブロックキャリパー |
R | φ220mmシングルディスク+ブレンボ製1Pキャリパー |
タイヤサイズF | 120/70ZR17 |
R | 180/55ZR17 |
全長×全幅×全高 | 2050×790×1065mmm |
ホイールベース | 1400mm |
シート高 | 836mm |
車両重量 | 188kg |
燃料タンク容量 | 15L |
価格 | 152万5000円 |