青木宣篤がBMW M 1000 RRに緊急試乗!【スムーズパワー、頂点へ】
2024年、BMWに移籍したばかりのトプラク・ラズガットリオグルが、SBK王者となった。M1000RRというマシンの性能、ラズガットリオグルのライダーとしてのポテンシャル、そしてライダーの声に真摯に耳を傾けるBMW Motorradの開発姿勢がもたらした快挙だ。
PHOTO/S.MAYUMI TEXT/G.TAKAHASHI
取材協力/ビー・エム・ダブリュー
0120-269-437 https://www.bmw-motorrad.jp/
BMW Motorrad 史上初の世界タイトル獲得
しばしば使われる「レースで勝つために生まれてきたマシン」という言葉。これをただの宣伝文句としてではなく、真っ正面から本気で追求したのが、BMW M 1000 RRだ。
レースシーンでもすでに実績を挙げていたS 1000 RRをベースに、さらなるチューニングが施されたM 1000 RRは、豪華パーツをふんだんにおごった単なるアップグレードバージョンではない。
スーパーバイク世界選手権(SBK)に本気で勝つことを目指し、ホモロゲーションモデルとして隙なくパフォーマンスを高めた、まさに「戦うためのマシン」なのだ。
外装のカーボンパーツを始め、エクステリアのインパクトは非常に強い。一見するとプレミアムモデルのようだが、中身は完全にピュアレーシングを指向している。
’19年からS 1000 RRを駆りファクトリー体制でSBKに復活したBMWは、M 1000 RRを登場させた’21年から一気に体制を強化。’24年にトプラク・ラズガットリオグルが加入すると、全36レース中18勝、表彰台は計27回という戦績で、瞬く間に王座をつかみ取った。
ライダーとマシンのパフォーマンスが、極めて高いレベルで噛み合ったからこその圧巻の成果。量産車世界一の座を獲得したM 1000 RRは、BMWの高性能マシンにのみ冠せられる「M」の称号が、本物であることを証明してみせたのである。
2戦欠場ながら勝率50%で他を圧倒
第3戦オランダ大会のレース2から驚異の13連勝、そして4連続でポールポジションを獲得していたラズガットリオグル。
第8戦フランス大会のフリー走行で負傷し、2戦(6レース)を欠場しながらも、全36レース中18勝という金字塔を打ち立てた。
順位 | ポイント | ライダー | マシン |
---|---|---|---|
1位 | 527 | トプラク・ラズガットリオグル | BMW M1000RR |
2位 | 484 | ニコロ・ブレガ | DUCATI PANIGALE V4R |
3位 | 357 | アルバロ・バウティスタ | DUCATI PANIGALE V4R |
4位 | 316 | アレックス・ロウズ | KAWASAKI Ninja ZX-10RR |
5位 | 307 | ダニロ・ペトルッチ | DUCATI PANIGALE V4R |
6位 | 245 | マイケル・ファン・デル・マー | BMW M1000RR |
トプラク・ラズガットリオグル 2024 SBK リザルト
SUPERPOLE ….5位
RACE 1 …………..5位
SP RACE ………..3位
RACE 2 …………..リタイア
SUPERPOLE ….1位
RACE 1 …………..優勝
SP RACE ………..優勝
RACE 2 …………..3位
SUPERPOLE ….3位
RACE 1 …………..2位
SP RACE ………..9位
RACE 2 …………..優勝
SUPERPOLE ….1位
RACE 1 …………..優勝
SP RACE ………..優勝
RACE 2 …………..優勝
SUPERPOLE ….1位
RACE 1 …………..優勝
SP RACE ………..優勝
RACE 2 …………..優勝
SUPERPOLE ….1位
RACE 1 …………..優勝
SP RACE ………..優勝
RACE 2 …………..優勝
SUPERPOLE ….1位
RACE 1 …………..優勝
SP RACE ………..優勝
RACE 2 …………..優勝
SUPERPOLE –
RACE 1 –
SP RACE –
RACE 2 –
SUPERPOLE –
RACE 1 –
SP RACE –
RACE 2 –
SUPERPOLE ….5位
RACE 1 …………..2位
SP RACE ………..2位
RACE 2 …………..2位
SUPERPOLE ….1位
RACE 1 …………..優勝
SP RACE ………..2位
RACE 2 …………..優勝
SUPERPOLE ….2位
RACE 1 …………..2位
SP RACE ………..2位
RACE 2 …………..優勝
「乗りやすさ」が最上の武器戴冠も頷けるポテンシャル 【青木宣篤】
まず驚かされるのは、エンジンの滑らかさだ。シルキーと言いたくなるほどのスムーズな回転上昇フィーリングは、驚嘆に値する。
BMWのエンジンに「シルキー」という形容句を使うと、直列6気筒を搭載した四輪車の「シルキーシックス」が想起されるだろうか。二輪車ではKシリーズが「シルキーシックス」と称されるが、M 1000 RR(Mコンペティションパッケージ)は直列4気筒でも同じように滑らかな吹け上がりを具現化している。
これは間違いなく、精度の高さからきている。私たちレーシングライダーは、手組みされたレーシングエンジンの素晴らしさを知っている。ひとつひとつのムービングパーツを丹念に吟味し、重量を精密に揃え、精緻に組み込まれたエンジンは、得も言われぬ滑らかさを発揮する。
M 1000 RRのスムーズさは、まさにレーシングエンジンのそれと同等だ。M 1000 RRは’23年に全世界で3655台を販売している人気量産車なので、さすがに手組みではないだろう。
しかし、そう思わせるだけの精度の高さからは、「M」の称号に懸けるBMWの強い意気込みを感じる。
エンジンにこれだけの力が入っているのだから、単にハイパフォーマンスパーツを組み付けただけの「見せかけのカスタム車両」ではないことは明らかだ。
まさにファクトリーメイド。メーカーが本気を出した時ならではの、圧巻の仕上がりである。
エンジンのシルキーさを絶賛するのには、理由がある。それは、このエンジンが非常にパワフルだからだ。
往々にして、パワフルなエンジンは気難しい。逆にスムーズなエンジンは、パワーが不足しがちだ。
パワフルさと滑らかさ──いわゆるドライバビリティの両立は、永遠の難問だ。数値上のパワーを求める技術者と、あくまでも右手でのスロットルワークへの追随を求めるライダーとがせめぎ合うポイントである。
特にスーパースポーツというコンペティティブなカテゴリーは、スペックを追い求めるがゆえに、ドライバビリティが犠牲になりがちだ。この落とし穴には、ユーザーフレンドリーさを重視する国内メーカーでさえ陥りやすい。
しかしM 1000 RRは212馬力というハイパワーを叩き出しながらも、信じられないほど扱いやすいのだ。これは限界域を多用するレースでは絶対に必要な素性。
M 1000 RRはもちろん最新の電子制御が盛りだくさんだが、エンジンの素の部分からキッチリと作り込まれていることが伝わってくるから、ライダーとしてはテンションが上がる。
そして、BMWというメーカーの技術者たちが、ライダーのコメントにしっかりと耳を傾けながらこのバイクを開発したことがよく分かる。恐らくその開発姿勢は、SBKのレース現場でも貫かれただろう。
ラズガットリオグルが移籍した初年度にチャンピオンを獲得できたのは、M 1000 RRのレーシングマシンとしての完成度の高さ、ラズガットリオグルのライダーとしてのパフォーマンスの高さ、そして彼のコメントをきちんと聞き入れて開発したBMWという、3つの要素がキッチリと噛み合ったからだ。
まず驚かされるのは、エンジンの滑らかさだ。シルキーと言いたくなるほどのスムーズな回転上昇フィーリングは、驚嘆に値する。
BMWのエンジンに「シルキー」という形容句を使うと、直列6気筒を搭載した四輪車の「シルキーシックス」が想起されるだろうか。二輪車ではKシリーズが「シルキーシックス」と称されるが、M 1000 RR(Mコンペティションパッケージ)は直列4気筒でも同じように滑らかな吹け上がりを具現化している。
これは間違いなく、精度の高さからきている。私たちレーシングライダーは、手組みされたレーシングエンジンの素晴らしさを知っている。ひとつひとつのムービングパーツを丹念に吟味し、重量を精密に揃え、精緻に組み込まれたエンジンは、得も言われぬ滑らかさを発揮する。
M 1000 RRのスムーズさは、まさにレーシングエンジンのそれと同等だ。M 1000 RRは’23年に全世界で3655台を販売している人気量産車なので、さすがに手組みではないだろう。しかし、そう思わせるだけの精度の高さからは、「M」の称号に懸けるBMWの強い意気込みを感じる。
エンジンにこれだけの力が入っているのだから、単にハイパフォーマンスパーツを組み付けただけの「見せかけのカスタム車両」ではないことは明らかだ。まさにファクトリーメイド。メーカーが本気を出した時ならではの、圧巻の仕上がりである。
エンジンのシルキーさを絶賛するのには、理由がある。それは、このエンジンが非常にパワフルだからだ。
往々にして、パワフルなエンジンは気難しい。逆にスムーズなエンジンは、パワーが不足しがちだ。
パワフルさと滑らかさ──いわゆるドライバビリティの両立は、永遠の難問だ。数値上のパワーを求める技術者と、あくまでも右手でのスロットルワークへの追随を求めるライダーとがせめぎ合うポイントである。
特にスーパースポーツというコンペティティブなカテゴリーは、スペックを追い求めるがゆえに、ドライバビリティが犠牲になりがちだ。この落とし穴には、ユーザーフレンドリーさを重視する国内メーカーでさえ陥りやすい。
しかしM 1000 RRは212馬力というハイパワーを叩き出しながらも、信じられないほど扱いやすいのだ。これは限界域を多用するレースでは絶対に必要な素性。M 1000 RRはもちろん最新の電子制御が盛りだくさんだが、エンジンの素の部分からキッチリと作り込まれていることが伝わってくるから、ライダーとしてはテンションが上がる。
そして、BMWというメーカーの技術者たちが、ライダーのコメントにしっかりと耳を傾けながらこのバイクを開発したことがよく分かる。恐らくその開発姿勢は、SBKのレース現場でも貫かれただろう。
ラズガットリオグルが移籍した初年度にチャンピオンを獲得できたのは、M 1000 RRのレーシングマシンとしての完成度の高さ、ラズガットリオグルのライダーとしてのパフォーマンスの高さ、そして彼のコメントをきちんと聞き入れて開発したBMWという、3つの要素がキッチリと噛み合ったからだ。