【R/Cテスターが2024のベストバイクを選出_R/C OF THE TEAR】青木宣篤|存在意義を加味しつつ印象に残った車両を選出
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本誌では毎年多くの新型と従来モデルを、サーキットや公道で走らせている。その中から、「2024年に乗って印象に残ったバイク」を挙げるのがこの企画。今回は本誌でもおなじみの青木宣篤さんのベストセレクションです。
存在意義も加味しつつ、印象に残った3台を選出
サーキット走行に限定して’24年に乗ったバイクのベスト3を挙げるなら、ナンバー1は新型のパニガーレV4S。新旧乗り比べもできましたが、新型には衝撃的な速さと、いい意味での劇的な車体の変化があり、とにかく驚かされました。もはや完全にレーサーの域にあり、排気量こそ1割ほど大きいとはいえ、JSB1000レーサーより速いんじゃないかってくらい……。速すぎて笑えてきたのは久々でした。
進化に対する取り組みも独創的。プロレーサーの走りを再現するため、コーナーの進入でリアブレーキを自動的に引きずる……なんて発想、普通はしないと思います。しかもその制御が素晴らしく、違和感や不意に車体の挙動が乱れるようなことはなく、確実に安心感を得られる、絶妙な効き具合。新しい機構を、よくあそこまで造り込んできたと思います。
スーパースポーツにとって、安心感と乗りやすさはとても重要。新型はその点も秀逸で、安心感が速さの底上げにもつながっています。
もしかしたら既存のドゥカティスタたちは、「手強い車体を乗りこなしてこそのパニガーレオーナー!」なんて主張するかも……。もちろん、それもバイクの楽しみ方だと理解しているし、否定もしません。でも私は、乗りやすくて速い新型をやっぱり最大限に評価したいです。
第2位のデイトナ660は、そんな新型パニガーレV4Sとは対極の存在で、それこそが選択理由。つまりサーキットライディングの入門用に最適で、昔で言うならホンダ・NSR50のような役割を持っていると感じました。
エンジンは扱いやすく、車体と電子制御は極めてベーシック。だからこそ、スポーツライディングの基本を覚えることができます。これからサーキット走行の世界に踏み込む人に、ぜひノーマルのまま乗り込んでもらいたいバイクです。
第3位に選んだXSR900GPは、フレームの優秀さが大きな決め手。ヘッドパイプからリアアクスルまで、車体がきれいにしなるように設計されています。加えて、装着タイヤ(ブリヂストン・バトラックス ハイパースポーツS23)の限界点に、ちょうどそのしなりが合わせてあるため、乗っていて気持ちいいんです。スロットルを開けて曲げるというヤマハの美点がこのバイクに凝縮されているかのようで、印象に残っています。
1st:DUCATI PANIGALE V4 S|速すぎて笑えてくるバイクは久しぶり!!
誌面登場こそなかったのですが、2024年11月の袖ケ浦ライパでは私もこのバイクに試乗。あまりの速さと、新旧で大きく異なる車体に驚かされました。
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「よくぞここまでやってきたなあ……」というのが正直な感想。私はリアブレーキ大好きライダーなのですが、新型に搭載されているリアブレーキの自動制御機能(フロント連動およびポストラン機能)にはなんの違和感もなく、明らかに誰かがギュッとブレーキを踏んでいるのに、安心感につながる掛かり方なんです。そこまでの造り込みに感心させられました!!

2nd:TRIUMPH DAYTONA 660|「これでいい」が詰まった究極のエントリーモデル
2024年デビューのフルカウルスポーツ。トライデント660譲りの3気筒エンジンは扱いやすく、昔なら4気筒400ccくらいの性能。フレームはスチール製で、フロントサスは“価格なり”ですが、だからこそスポーツ走行における車体の動きを覚えられます。
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ハイグレードな電子制御も装備しておらず、“素のバイク”という感じ。これからサーキットライディングに挑戦する人は、まずこのバイクで練習して、ステップアップを目指しましょう。
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3rd:YAMAMA XSR900 GP|「もっと開けていいよ」とバイクに言われているみたい
こちらも2024年型で新登場。XSR900がベースのレトロなカウル付きスポーツ。ルーツはMT-09なので、何も疑うことなく乗り味も同じようなモノだろう……と思ったら、全然違っていたことにも驚かされました。
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MT-09とXSRシリーズでスイングアームを使い分けるなど、しっかり作り込まれているところにも感心。何より、フレームのしなりとタイヤ性能の調和が素晴らしく、ヤマハのハンドリングを象徴するような美しさを感じました。
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