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【カワサキ メグロS1/W230 & KLX230 S/シェルパ】1つのルーツ、2つの個性

impression rider
【河村聡巳】

MEGURO S1に乗るために、久しぶりに革ジャンを引っ張り出した本誌編集長。密かにSHERPA用にとオフロードブーツも持参したのだが、時間の都合で履くチャンスはなかった

心地よく 、そして美しく走る|MEGURO S1 & W230

一般道で6速ホールド4000rpmが気持ちいい

カワサキが軽二輪クラスに放った待望のネオクラシック、兄弟車の2台を同時に試乗できる機会を得た。

スペックを見て多くのライダーが期待するのは足つきの良さだろう。シート高はメグロS1で740mm、W230でも745mmしかない。その数値を知っていても、メグロS1に跨った瞬間に膝の曲がりが窮屈なのに驚いた。

ライディングポジションは、’17年までラインナップしていたエストレヤ(250)を継承しているという。メグロS1は、エストレヤ比較でシートが5mmほど高いとはいえ、足つきは良すぎる。その恩恵は、切れ角のあるステアリング、150kgを切る軽量なボディも相まって、Uターン時に一番感じた。

さて、期待の空冷単気筒エンジンだ。最高出力がどうのこうのではない。公道での常用スピード域で、トップギア、4000rpmあたりで流すのが気持ちよかった。単気筒らしく、コロコロとクランクシャフトが転がる感じでクルージングできる。

先に試乗したKLX230Sでやや気になったエンジンノイズは、クランクケースなどの新設計により消えている。それよりも、造りこまれたエキゾーストノートの単気筒らしいパルス感が心地よい。

スリッパークラッチは装備していないが、KLX230Sよりロング設定されたファイナル(メグロS1:38/14、KLX230S:45/14)で、少々乱暴なシフトダウンでもリアタイヤがロックすることはなかった。

高速道路も走ってみたが、トップギア100km/hで、回転数は6000rpmに届かないくらい。6速はオーバードライブ設定だが、思ったより回転数が高い印象だった。とはいえ、不快な振動は皆無。ステップもペグ上面のラバーと下面に貼ってあるウェイトで振動が上手く消されている。ただし、一般道では聞こえたエキゾーストノートは、さすがに風切り音で耳に届いてこなかった。

ハンドリングは、キャスター角の寝ているバイクにありがちな、ある一定のバンク角からステアリングが切れ込むようなことはなく、実にニュートラル。走り始めこそ膝の曲がり具合から、「ステップがもう少し前にあればいいのに」と思っていた。しかし、コーナリングしてみると、実に踏ん張りやすい場所にペグが装着されていることがわかった。コーナリングマシンではないが、ワインディングも楽しめそうだ。

これらはメグロS1のインプレッションだが、基本的にはW230も変わらない。シート高は5mmの違いがあるのだが、跨り比べてもわからなかった。それよりも、メグロS1のフューエルタンクサイドに貼ってあるパッドの位置が絶妙で、ニーグリップしやすいのが好印象だった。

オーナーになるなら、W230と差別化する意味でも、ハンドルバーをもっとワイドにして、鷹揚感を演出するのもアリかと思った。

KAWASAKI MEGURO S1 / W230

MEGURO S1はエボニーのみ、W230はパールアイボリー×エボニーとメタリックオーシャンブルーの2タイプのカラーが用意される。両モデル共エクステリアにメッキ仕上げを多用して、クラスを超えた高い質感を持つ。エンジンと車体、パーツ形状は基本的に共通となっているが、仕上げの違いでそれぞれのイメージの差別化に成功している
MEGURO S1はエボニーのみ、W230はパールアイボリー×エボニーとメタリックオーシャンブルーの2タイプのカラーが用意される。両モデル共エクステリアにメッキ仕上げを多用して、クラスを超えた高い質感を持つ。エンジンと車体、パーツ形状は基本的に共通となっているが、仕上げの違いでそれぞれのイメージの差別化に成功している
実はエンジンの仕上げが違う。シリンダーヘッドのフィンは、W230が鋳肌に塗装したものであるのに対し、MEGURO S1はフィンの先端に切削加工が施されているのだ。実車を前にすると質感の違いは大きい。カワサキのこだわりには、そこまでするかと驚かされる
実はエンジンの仕上げが違う。シリンダーヘッドのフィンは、W230が鋳肌に塗装したものであるのに対し、MEGURO S1はフィンの先端に切削加工が施されているのだ。実車を前にすると質感の違いは大きい。カワサキのこだわりには、そこまでするかと驚かされる
燃料タンクはそれぞれの個性を際立たせる部分。MEGURO S1はメッキ処理の上にメグロSGを再現したピアノブラックを職人の手で塗装。エンブレムは手作業で仕上げられ、ニーパッドも専用装備品。W230もエンブレムに立体タイプを採用し、質感は高い
燃料タンクはそれぞれの個性を際立たせる部分。MEGURO S1はメッキ処理の上にメグロSGを再現したピアノブラックを職人の手で塗装。エンブレムは手作業で仕上げられ、ニーパッドも専用装備品。W230もエンブレムに立体タイプを採用し、質感は高い
MEGURO S1のシートレザーはプレーンタイプで、パイピングがホワイト。W230 は上面にプレス調のラインが入り、車体カラーによってサイド部分がホワイトとブラックの2タイプとなる。シートはW230が5mm高いが、跨ってみても足着きに差は感じられない
インスツルメントパネルは、オーセンティックなアナログ二眼タイプのデザイン。メーターのハウシングと、メッキ仕上げのリングは両モデルで共通する。異なるのは盤面のデザインのみだが、色使いの違いもあって見た目のイメージは大きく変わっている
インスツルメントパネルは、オーセンティックなアナログ二眼タイプのデザイン。メーターのハウシングと、メッキ仕上げのリングは両モデルで共通する。異なるのは盤面のデザインのみだが、色使いの違いもあって見た目のイメージは大きく変わっている
エンジンの多くの部分をKLX系と共有しており、最高出力18psにも変わりはない。しかし、その発生回転数はKLX系が8000rpm、MEGURO/W は7000rpmとなっている。より低中速を重視した味付けがなされているのだ
エンジンの多くの部分をKLX系と共有しており、最高出力18psにも変わりはない。しかし、その発生回転数はKLX系が8000rpm、MEGURO/W は7000rpmとなっている。より低中速を重視した味付けがなされているのだ
メグロSGの排気音を再現するため、幾度も設計変更を繰り返したというエキゾースト。ピポット下部に消音と性能確保のためにボックス状のサブサイレンサーが設けられているが、存在を意識させないようにデザインされている
フロントまわりは両モデル共通。ブーツを備える正立フォークのインナーチューブ径はφ37mm。ローター径φ265mmのシングルディスクに片押し2ポットキャリパーを組み合わせるブレーキは、当然ABSも装備する
MEGRO S1(W230)
エンジン空冷4ストローク単気筒SOHC2 バルブ
総排気量232cc
ボア×ストローク67.0×66.0mm
圧縮比9.0:1
最高出力18ps/7000rpm
最大トルク18Nm/5800rpm
変速機6段リターン
クラッチ湿式多板
フレームセミダブルクレードル
キャスター/トレール27.0°/99mm
サスペンションFφ37mmテレスコピック正立フォーク
Rツインショック、イニシャル調整可能
ブレーキFφ265mmシングルディスク+2ポットキャリパー
Rφ220mmシングルディスク+1ポットキャリパー
タイヤサイズF90/90-18M/C
R110/90-17M/C
全長×全幅×全高2125×800×1090mm
ホイールベース1415mm
シート高740(745)mm
車両重量143㎏
燃料タンク容量17L
価格72万500円(64万3500円)
※( )内はW230

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