【自動クラッチ操作がもたらす未来】電子制御システムの違いに思想が現れる

未来のモーターサイクルを大きく変える可能性も秘めた、自動制御クラッチやオートシフト。その設計や機能、操作の方法などには、各メーカーの思想が反映されている。
自動化の方法はイロイロ
HONDA NT1100
CRF1100Lアフリカツインがベースのオンロードツアラー。2025年型で6軸IMUを新採用し、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)のAT時にバンク角や加減速状態まで考慮してギアが選択されるようになった。
DCTは、変速機のメインシャフトが2本あり、それぞれを受け持つ奇数速&発進用と偶数速用のクラッチにつながる。クラッチ制御は油圧式。例えば1→2速なら、2速への予備変速後に奇数側クラッチを切りつつ偶数側クラッチをつなぐため、駆動力が途切れない。


機構名 | DCT |
クラッチレバー | 無 |
停止時のクラッチ操作 | 不要 |
変速モード | AT/MT |
MTの変速方法 | スイッチ操作 |



HONDA CBR650R E-Cluch
スチール製フレームの4気筒スポーツ。外観刷新と装備充実化が施された2024年型で、兄弟車のCB650Rとともに市販車で初めてE-クラッチ仕様が追加された。E-クラッチは、既存エンジンの構造を大幅に変更することなく、クラッチ制御のみ自動化できる技術。
2個のモーターを使用することで小型化も実現したクラッチ部のアクチュエーター、これを電子制御するコントロールユニット、各種センサーおよびクイックシフターを追加することにより搭載でき、電子制御スロットルは必要としない。


機構名 | E-Cluch |
クラッチレバー | 有 |
停止時のクラッチ操作 | E-クラッチ作動時は不要 |
変速モード | MT |
MTの変速方法 | シフトペダル操作 |



YAMAHA MT-09 Y-AMT
アルミ製フレームの3気筒ネイキッド。そのY-AMT(ヤマハ・オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)仕様は2024年9月に新発売された。ヤマハは、既存エンジンのクラッチ自動制御化技術を、20年近く前にYCC-Sで確立済み。
Y-AMTはその発展形で、ATモードも備える。クラッチと変速機で独立した電動アクチュエーターを装備。電子制御スロットルと組み合わせる。シフトロッドにはスプリングを内蔵。プリロードをかけてからエンジントルクを抜くことで、変速時間短縮につなげる。


機構名 | Y-AMT |
クラッチレバー | 無 |
停止時のクラッチ操作 | 不要 |
変速モード | AT/MT |
MTの変速方法 | スイッチ |



BMW R 1300 GS Adventure
BMWは2024年型で、R-GSを最新世代のR1300GSに刷新。2025年型ではR1300GSアドベンチャーも導入し、両モデルにASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)を設定した。クラッチ用と変速用に独立したアクチュエーターを採用し、ボトムニュートラル化されている点は、ヤマハのY-AMTと同じ。
ただしASAは、クラッチ側アクチュエーターに油圧マスターシリンダーが組み合わされている。ATはDモードのみだが、ライディングモードやIMUの情報と連動して変速制御が最適化される。


機構名 | ASA |
クラッチレバー | 無 |
停止時のクラッチ操作 | 不要 |
変速モード | AT/MT |
MTの変速方法 | シフトペダル操作 |


