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【自動クラッチ操作がもたらす未来】電子制御システムの違いに思想が現れる

未来のモーターサイクルを大きく変える可能性も秘めた、自動制御クラッチやオートシフト。その設計や機能、操作の方法などには、各メーカーの思想が反映されている。

自動化の方法はイロイロ

HONDA NT1100

CRF1100Lアフリカツインがベースのオンロードツアラー。2025年型で6軸IMUを新採用し、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)のAT時にバンク角や加減速状態まで考慮してギアが選択されるようになった。

DCTは、変速機のメインシャフトが2本あり、それぞれを受け持つ奇数速&発進用と偶数速用のクラッチにつながる。クラッチ制御は油圧式。例えば1→2速なら、2速への予備変速後に奇数側クラッチを切りつつ偶数側クラッチをつなぐため、駆動力が途切れない。

HONDA NT1100
【HONDA NT1100】エンジン:水冷4ストローク直列2気筒SOHC4バルブ 総排気量:1082cc 最高出力:102ps/7500rpm 最大トルク:11.3kgf・m/5500rpm タイヤサイズ:F=120/70ZR17、R=180/55ZR17 ホイールベース:1535mm シート高:820mm 車両重量:249kg 燃料タンク容量:20L 価格:184万8000円
機構名DCT
クラッチレバー
停止時のクラッチ操作不要
変速モードAT/MT
MTの変速方法スイッチ操作
※オプションでシフトペダル装着可能
ハンドシフトスイッチは左手側にあり、人差し指側を手前に引くとシフトアップ、親指側を押すとシフトダウン
ハンドシフトスイッチは左手側にあり、人差し指側を手前に引くとシフトアップ、親指側を押すとシフトダウン
ハンドシフトが基本だが、ハンドと併用できるシフトペダルが純正アクセサリーに設定されている
ハンドシフトが基本だが、ハンドと併用できるシフトペダルが純正アクセサリーに設定されている
エンジンカバーの右側の形状がMT仕様(日本未発売)とは異なる。車重はMT仕様と比べて10㎏ほど増える

HONDA CBR650R E-Cluch

スチール製フレームの4気筒スポーツ。外観刷新と装備充実化が施された2024年型で、兄弟車のCB650Rとともに市販車で初めてE-クラッチ仕様が追加された。E-クラッチは、既存エンジンの構造を大幅に変更することなく、クラッチ制御のみ自動化できる技術。

2個のモーターを使用することで小型化も実現したクラッチ部のアクチュエーター、これを電子制御するコントロールユニット、各種センサーおよびクイックシフターを追加することにより搭載でき、電子制御スロットルは必要としない。

【HONDA CBR650R】エンジン:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ 総排気量:648cc 最高出力:95ps/12000rpm 最大トルク:6.4kgf・m/9500rpm タイヤサイズ:F=120/70ZR17、R=180/55ZR17 ホイールベース:1450mm シート高:810mm 車両重量:211kg 燃料タンク容量:15L 価格:115万5000円~
【HONDA CBR650R】エンジン:水冷4ストローク直列4気筒DOHC4バルブ 総排気量:648cc 最高出力:95ps/12000rpm 最大トルク:6.4kgf・m/9500rpm タイヤサイズ:F=120/70ZR17、R=180/55ZR17 ホイールベース:1450mm シート高:810mm 車両重量:211kg 燃料タンク容量:15L 価格:115万5000円~
機構名E-Cluch
クラッチレバー
停止時のクラッチ操作E-クラッチ作動時は不要
変速モードMT
MTの変速方法シフトペダル操作
クラッチレバーを握ればいつでもマニュアル操作ができ、レバー操作を終了してから数秒で自動モードに復帰する
クラッチレバーを握ればいつでもマニュアル操作ができ、レバー操作を終了してから数秒で自動モードに復帰する
シフトチェンジは常時マニュアル式で、一般的なモーターサイクルと同じく左足側のシフトペダルを操作する
シフトチェンジは常時マニュアル式で、一般的なモーターサイクルと同じく左足側のシフトペダルを操作する
マニュアルクラッチ仕様と比べて、右側エンジンカバーの張り出しが増える。システム全体でも約2kgと非常に軽い
マニュアルクラッチ仕様と比べて、右側エンジンカバーの張り出しが増える。システム全体でも約2kgと非常に軽い

YAMAHA MT-09 Y-AMT

アルミ製フレームの3気筒ネイキッド。そのY-AMT(ヤマハ・オートメイテッド・マニュアル・トランスミッション)仕様は2024年9月に新発売された。ヤマハは、既存エンジンのクラッチ自動制御化技術を、20年近く前にYCC-Sで確立済み。

Y-AMTはその発展形で、ATモードも備える。クラッチと変速機で独立した電動アクチュエーターを装備。電子制御スロットルと組み合わせる。シフトロッドにはスプリングを内蔵。プリロードをかけてからエンジントルクを抜くことで、変速時間短縮につなげる。

【YAMAHA MT-09 Y-AMT】エンジン:水冷4ストローク直列3気筒DOHC4バルブ 総排気量:888cc 最高出力:120ps/10000rpm 最大トルク:9.5kgf・m/7000rpm タイヤサイズ:F=120/70ZR、R=180/55ZR17 ホイールベース:1430mm シート高:825mm 車両重量:196kg 燃料タンク容量:14L 価格:136万4000円
【YAMAHA MT-09 Y-AMT】エンジン:水冷4ストローク直列3気筒DOHC4バルブ 総排気量:888cc 最高出力:120ps/10000rpm 最大トルク:9.5kgf・m/7000rpm タイヤサイズ:F=120/70ZR、R=180/55ZR17 ホイールベース:1430mm シート高:825mm 車両重量:196kg 燃料タンク容量:14L 価格:136万4000円
機構名Y-AMT
クラッチレバー
停止時のクラッチ操作不要
変速モードAT/MT
MTの変速方法スイッチ
変速はハンドシフトのみで、純正アクセサリーにもシフトペダルはなく、取材によると開発の予定もないようだ
エンジン右側は、クラッチレリーズ部を覆うようにカバーが配され、その奥にアクチュエーターを搭載してある
変速はハンドシフトのみで、純正アクセサリーにもシフトペダルはなく、取材によると開発の予定もないようだ
変速はハンドシフトのみで、純正アクセサリーにもシフトペダルはなく、取材によると開発の予定もないようだ
エンジン右側は、クラッチレリーズ部を覆うようにカバーが配され、その奥にアクチュエーターを搭載してある

BMW R 1300 GS Adventure

BMWは2024年型で、R-GSを最新世代のR1300GSに刷新。2025年型ではR1300GSアドベンチャーも導入し、両モデルにASA(オートメイテッド・シフト・アシスタント)を設定した。クラッチ用と変速用に独立したアクチュエーターを採用し、ボトムニュートラル化されている点は、ヤマハのY-AMTと同じ。

ただしASAは、クラッチ側アクチュエーターに油圧マスターシリンダーが組み合わされている。ATはDモードのみだが、ライディングモードやIMUの情報と連動して変速制御が最適化される。

【BMW R 1300 GS Adventure】エンジン:空/水冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ 総排気量:1300cc 最高出力:145ps/7750rpm 最大トルク:149Nm/6500rpm タイヤサイズ:F=120/70R19、R=170/60R17 ホイールベース:1520mm シート高:820/840 ~ 850/870mm 車両重量:284kg 燃料タンク容量:約30L 価格:349万4000円~
【BMW R 1300 GS Adventure】エンジン:空/水冷4ストローク水平対向2気筒DOHC4バルブ 総排気量:1300cc 最高出力:145ps/7750rpm 最大トルク:149Nm/6500rpm タイヤサイズ:F=120/70R19、R=170/60R17 ホイールベース:1520mm シート高:820/840 ~ 850/870mm 車両重量:284kg 燃料タンク容量:約30L 価格:349万4000円~
機構名ASA
クラッチレバー
停止時のクラッチ操作不要
変速モードAT/MT
MTの変速方法シフトペダル操作
クラッチは常時自動制御でレバーは備えず、DモードとMモードの切り替えスイッチは左側ミラーホルダー部にある
クラッチは常時自動制御でレバーは備えず、DモードとMモードの切り替えスイッチは左側ミラーホルダー部にある
変速は、多くのライダーが慣れ親しんだ左足側のシフトペダルで。ただし、これはあくまでも電気的なスイッチだ
変速は、多くのライダーが慣れ親しんだ左足側のシフトペダルで。ただし、これはあくまでも電気的なスイッチだ
ASAのシステム構成部品はエンジンにほぼ内蔵されていて、汎用性を考慮したY-AMTやE-クラッチとは異なる
ASAのシステム構成部品はエンジンにほぼ内蔵されていて、汎用性を考慮したY-AMTやE-クラッチとは異なる

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