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特殊な業界だからこそ、情熱だけでなく広い視野も活きます!【河村聡巳/RIDERS CLUB編集長】

河村さんは、業界内でだいぶ名前が知られていますよね?

A.顔が広いというより、長く居座り続けているだけですが……。

現在は実業之日本社のライダースクラブ誌で編集および営業を担当していますが、業界内で二度の転職を経験して、長く二輪メディアに携わってきました。

そもそも私は現在56歳で、バイクブーム世代のど真ん中。大学生になったころが1980年代半ばで、バイクに乗るという選択がごく普通の時代。というか、「なんでバイクに乗っていないの?」というくらいの雰囲気でした。私も当然のようにライダーとなり、どっぷりその魅力にハマりましたが、今にして思えばなぜか大卒時の就職ではバイク関係に進みませんでした。

その後、「やっぱりバイクに携わる仕事がしたい!」と一念発起。とはいえ、レースに参戦しているわけでも、バイクに乗って速いわけでも、メカニックができるわけでもなく、かといってメーカーに入れるほどでもありません。どんな道があるのかと思っていたときにちょうど出会ったのが、二輪業界紙の人員募集でした。そして25歳のときに最初の転職。編集部員として数々の経験をさせてもらいました。

しかし30歳のとき、新聞ではなく若いころから好きだった雑誌で仕事がしたいと思って再び転職。その会社には18年在籍して、クルマの雑誌に異動した時期もありましたが、ほぼ二輪誌で業務を担当してきました。そして2014年の秋に、縁があって枻出版社に営業職として移籍。それからは、ほぼバイク雑誌で仕事しています。現在は実業之日本社発行のライダースグラブの編集長を務めています。

6台ほど所有していた時期もありますが、いまの愛車はこの3台。毎日の通勤はスーパーカブ110で、バイク通勤できるのも魅力です。

長年の業界在籍中には貴重な体験も多数されましたか?

A.憧れのライダーに会えたことが、まずは大きな財産です。

そもそも、私がこの業界に入ったときはバブル真っただ中で、バイク人気も非常に高かったわけですが、そんな昔話を現代の若い方々にしてもなんの参考にもならないし、自慢話として嫌われてしまいそうです。そこで、私がこの業界に入って体験してきたことの中で、現代にも通じることをひとつ挙げるなら、それは「憧れのライダーに会えるチャンスや、ただ会うどころか一緒にチームとして仕事をする機会がたくさんある」ということです。

私の場合、憧れのライダーはかつてヤマハファクトリーで活躍した平忠彦さんでした。ライダースクラブ編集部の同僚である藤田は若いころツーリング派だったためか、平さんのことをほとんど知らないでこの業界に入ったらしいですが、私はその真逆で、とにかく大ファンでした。たまたま、二輪メディアの業界に入って最初の仕事は、ロードレース世界選手権日本グランプリの取材。鈴鹿サーキットで真っ先に平さんのピットに行って、もちろん仕事としてですが「写真撮らせてください!」とお願いしたことは、いまでも記憶に残っています。

その他にも、ワイン・ガードナーさんやフレディ・スペンサーさん、ケビン・シュワンツさんにミック・ドゥーハンさんに……と、当時のスーパースターたちに間近で会い、ときにはインタビューや写真撮影ができたことに、心の中でいつも密かに大興奮していました。よく言われる“サーキットのフェンスの内側”へ入れたというのは、とてもうれしかったですし、いまでもこの仕事の魅力だと感じています。

そういう貴重な体験に、ついニンマリしてしまうことも?

A.それを隠して仕事するのが、プレスの鉄則です。

私はバイク小僧がそのままオトナになってしまったような性格なので、有名なプロライダーたちにお会いできることがとにかくうれしいのですが、だからこそミーハーにならないよう注意しています。例えばレースの現場では、プレスパスを持ち、ビブスを着用している以上、「サインください」とか「一緒に写真撮ってください」なんてまず言いません。取材でコメントをいただくときも、レースが好きだからこそ、ライダーに声をかけるときは徹底的に気を遣ってきました。取材という大義名分をかざしてプロレーサーのペースを乱すなんて、取材者として失格。好きだからこそのこだわりです。

一方で、長い編集経験の中では、坂田和人さんや原田哲也さんといった世界選手権チャンピオンと一緒に、企画でサーキットやワインディングを走ったこともあります。

そんな偉大な方々と一緒にライディングを楽しみ、テーブルを囲んで食事をして、場合によってはツーリング企画で温泉だって一緒に浸かれる。もちろんこのときも、ミーハーな心は隠して取材が滞りなく進むよう配慮することに注力するわけですが、こんなスゴい体験ができるのも二輪雑誌業界の魅力です。

憧れのライダーに関すること以外で、うれしかったことは?

A.メーカーのスゴい人たちから話を聞けたこと。

ご存知のように日本には、ホンダ・ヤマハ・スズキ・カワサキという、世界で活躍する国内4メーカーがあります。日本というフィールドで二輪雑誌業界に在籍していると、それらのメーカーでさまざまな機種の開発プロジェクトリーダーを務めたような人物に取材する機会も豊富にあります。トップの方々から直接、コンセプトや今後の展望など、さまざまなことを聞けるというのも大きな魅力です。

もちろん、ただ話を聞いて終わりではありません。編集者はそれを、記事としてカタチにして、今度は読者に伝えます。「こんなスゴい人たちがつくったバイクなんだ!」と世間に広める役割を担っているわけです。そこに楽しさと難しさが共存していて、やりがいも感じてきました。

また、かつては海外の国際モーターサイクルショーにも頻繁に足を運んでいたので、一時期はドイツのケルンで実施されるインターモトとイタリアのミラノで開催されるEICMAのために渡航した際の出入国スタンプで、パスポートが埋まるほどでした。仕事で海外へ頻繁に行って、ミラノなんて地図がなくても歩けるほどになりましたから、これも一つの役得ですね。

モーターサイクルショーなどは、一般公開前からプレスとして取材できます。ニューモデルに触れる時は、いつもワクワクします。

そんな経験豊富な河村さんから見た、ライダースクラブ誌の個性とは?

A.スポーツライディングに特化した姿勢だと思います。

ライダースクラブ誌は、二輪雑誌業界でも“老舗”と認められる媒体のひとつ。当然ながら私も学生時代から読者でした。知らない人も多いかもしれませんが、一時期のライダースクラブ誌は隔週発売で、そのころにもっとも購入していました。

専門用語を、わかったフリして読んでいるようなバイク小僧でしたねえ……。もっとも当時のライダースクラブは、いわゆる二輪総合誌に近い存在だったと思います。

そこからさまざまな棲み分けが図られて、現在のライダースクラブ誌はスポーツライディングとスポーツバイク、ライディングテクニックをメインに記事を構成する二輪雑誌となっています。バイクを楽しむ要素のひとつとして、「走らせること」に特化。といっても決して「速さ」を求めているわけではなく、「上手に、安全に、楽しく」がテーマです。オンロードバイクの雑誌では、オンリーワンの存在だと自負しています。

最新のバイクに、いち早く試乗できたりします。そしてサーキットを走るたびに、ライディングはスポーツだ、もっと上手くなりたい、と思います。

ライディングパーティは、それを象徴するものでしょうか?

A.多くの読者とリアルに交流できる場ですね。

ライダースクラブ誌では年に数回、ライディングパーティというサーキット走行会を主催しています。雑誌主催のイベントというのは、その雑誌の読者……つまりファンとリアルにお会いして、生の声を聞ける貴重なチャンスです。

多くの雑誌ではこれを、ミーティングというカタチで実施していると思うのですが、ライダースクラブ誌は一方通行のコンテンツ提供ではなく、「一緒にバイクを楽しむ」というスタイルを大切にしています。

もちろん、サーキットを走っているときに会話ができるわけありませんが、同じ場所で一緒にスポーツライディングを満喫することで、分かり合えることもあると信じています。主催者サイドとしては、サーキット走行には当然ながら危険もあるので、それを排除するための配慮はとても大変なのですが、だからこそ達成感があります。

ちなみにこれまで、ライディングパーティで重大事故が発生したことはなく、これは主催側だけでなく参加していただいている方々にも、我々の「速いがエラいわけではない」という精神が浸透している結果だと思っています。

また、このライディングパーティには多くのメーカー、ディーラー、そしてショップなどが、出店や併催イベント実施などで参加してくださっています。つまりライディングパーティは、我々と読者がつながりを深める場というだけでなく、さまざまな企業に読者とのつながりを提供する場でもあるわけです。

読者の方々と双方向で直接触れ合えるのは、本当に貴重な機会です。年間6回程度開催していますが、毎回達成感を得られます。

ライディングパーティは事前準備が大変そうなのですが……。

A.いまは、そんなことありません!

以前はノウハウも少なかったし、参加申し込みの方法もいろいろあったので、たしかに大変だったのですが、現在はWEB上でデータ管理ができているし、スタッフも慣れていて良い意味でシステマチックになっているので、事前の準備ということではそれほど大変ではありません。通常の編集業務と並行しながら、問題なく処理できるレベルだと思います。

当日に関しては、朝がかなり早いのと、安全管理を徹底することに気を遣わなければならないので、そういう意味では少し大変かもしれません。でも参加人数は(袖ケ浦フォレスト・レースウェイ開催の場合)120名程度なので、何千人も集まる姉妹誌BikeJINのBikeJIN祭りと比べたら、意外とドタバタしません。内側の人間にとっては、イベント開催のノウハウを学ぶのに最適な場かもしれませんね。

逆に、普段の編集業務が超過酷だったりして……。

A.むしろそちらのほうが、いまはそんなことありません(笑)!

かつての二輪雑誌編集部というのは、徹夜が多くて編集部が汚くて仕事がキツい……というイメージを持たれていました。しかし、働き方改革というわけではないのですが、現代では編集者が徹夜するなんてことはまずありません。もちろん取材などで外出することも多いので、いわゆるお役所仕事のように朝の9時から夕方の5時まで……なんていう業務形態にはなっていませんが、少なくとも私の場合、それを苦に感じたことはありません。

クリエイティブなことをしていると時間が経つのは早いし、取材などで外に行くことでルーティンではない日々を過ごせるし、最終的には毎月、自分たちが手がけたものが雑誌というカタチになるという喜びも得られます。

完全に暦どおりで休むというのは難しいのですが、だからといって毎週末のように休日出勤しなければならないわけではありませんし、そのぶん平日に振り替えて休むことができます。自分が好きな世界に携われるということまで含めて考えたら、むしろ恵まれた職場ではないでしょうか?

では河村さんから見た、ライダースクラブ編集部に向いていそうな人材は?

A.やはり、スポーツライディング好きであることが第一ですかね。

ライダースクラブ誌は、スポーツライディングをメインに扱う雑誌なので、その分野が好きなライダーが向いていると思います。これは、スポーツライディングオンリーじゃないとダメということではありません。ただ、ツーリングしか好きでないとかカスタムにしか興味がないとかだと、向いていないと思います。

例えば、「ツーリングもカスタムもオフロードも楽しむけど、オンロードのスポーツライディングも大好き」なんて人はOK。逆に、あまりスポーツライディング一辺倒なのも、編集という仕事をするのには厳しいかもしれません。広い視野を持つことも、よい編集者になるための条件ですから。また、それまで趣味だったものを仕事にすると、それまでとは関わり方が少し違ってきます。そのバランスを取るためにも、バイク以外に趣味あるいは好きなことを持っているほうが、バイク雑誌の編集者に向いているかもしれません。

スポーツライディングに特化した、上手に乗ることをテーマにした雑誌なので、その世界に興味がないというのは困りますが、だからといってすでにサーキットを走った経験があるとか、スゴいテクニックを持っているとか、そういう条件を課しているわけではありません。スポーツライディング未体験でも、そのジャンルが嫌いでなければ問題なし。ぜひ、一緒に雑誌づくりを楽しみましょう!

プライベートでは、時々サンデーレースを楽しんだりしています。近年はレンタルバイクで出られるレースもあり、敷居はずいぶん下がりましたね。

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