ムルティストラーダV4Sで巡る、瀬戸内の原風景 Multistrada Discover Japan Trip #1
ムルティストラーダV4で日本の魅力を再発見する「Multistrada Discover Japan Trip」。リレー形式で全国を巡るこのツアーに参加し、岡山-四国-大阪を巡る。日本の美しい風景を探し、上質な“オトナ”のツーリングを楽しんだ。
久しぶりの岡山で心踊った。自転車ツーリングでしまなみ海道、とびしま海道、淡路島は来たことがあったものの、バイクで瀬戸内を走るのは、20代のころに日本一周したとき以来かもしれない。
今回は岡山をスタートし、香川、徳島、兵庫、大阪まで約350kmを3日かけて走る道程だ。1日で走り切れない距離ではないが、イタリアからやって来た赤い相棒に、日本らしい風景を見せたいと思う。
その相棒こそ、170psを誇るDUCATIのムルティストラーダV4Sだ。オン/オフどちらの道も楽しめ、高速道路の巡航も快適そのもの。ワインディングだって存分に楽しめるスポーツ性を併せ持っている。
東京からせっかく遠い地まで来たので、今まで訪れたことのない場所にも立ち寄って写真を撮り、憧れの宿に泊まって、温泉を嗜みたい。海を眺めたり、かつて文豪らが過ごしたような、滞在先での時間も楽しみたい。
「お前みたいなモデル兼ライターが、何言っているのだ」と思われそうなので先に謝っておきます。ごめんなさい。
ここ数年、コロナ禍でろくに旅にも出かけられずにいたし、いっさい海外にも行けていない。一所懸命仕事を頑張ってきたのだから、少しくらい贅沢しても良いでしょう。
DUCATI岡山を出発し、まずは倉敷の美観地区へ。伝統的な白壁の家屋が建ち並んでいるのだが、メイン通りを少し外れると、真っ黒い杉板の壁が現れる。これは表面を火であぶって炭化させた板で、外壁に使用することで、耐候性や耐久性が増すのだとか。表通りの白と、路地の黒。このコントラストが見目麗しい。ムルティストラーダV4Sよりも、馬で闊歩するのが似合いそうな雰囲気だ。
さて、この最新マシンには、スマートフォンとの連携機能が装備されている。「DUCATIコネクト」のアプリをスマホに入れ、Wi-FiかBluetoothで繋げれば、マップアプリを使ったナビゲーションも完璧。ハンドルバーに付いているジョイスティックで操作は簡単だし、インターコムと接続すれば音楽プレーヤーも手元で操作できる。
また、フューエルタンク上にあるコンパートメントは、USBポートを内蔵しており、スマホの充電も可能。まさに旅の相棒にベストな1台と言える。
倉敷から南下し、鷲羽山スカイラインを駆け上がる。ちょうど桜のベストシーズンで、ワインディングには桜の花が舞っていた。マシンが駆け抜けた際の走行風で、地面に落ちた花びらが吹き上がる様はまさに桜吹雪。こんな風に春を楽しめるのは、ライダーならではの特権かもしれない。
撮影は4月初旬。鷲羽山スカイラインの桜は、見事に咲き誇っていた
ムルティストラーダV4Sは車高く、アドベンチャー的なスタイルが特徴だ。そのためタイトなコーナーは苦手なのかと思っていたが、そんな心配は無用だった。山道の細かい切り返しも、V4ならではのトルクと、体の真下に感じられる重心によって、安定感が驚くほど高い。テンポよく車体をリーンさせられるから、思わず笑みがこぼれてきた。
峠を越えて児島まで降りる。デニムと言えばここが日本の、いや世界の中心と言っても過言ではない。
児島にはデニム専門店が建ち並ぶ「デニムストリート」という一角がある。そこで、「バイク乗りのためのデニム」をコンセプトとするブランド「アイアンハート」のリバース児島店に立ち寄った。
この日は平日ながら、若い男性客のグループが居たので、店内は賑やかだった。さすが、人気のブランドだ。同店の定番アイテムは、21オンスという極厚の生地を使ったデニム。今まで触れたことがないくらいの分厚い生地に、ちょっとした驚きを覚える。これはもはや衣類というより、アート作品と言ってもいい。
岡山県と香川県を繋ぐ瀬戸大橋を渡る。海峡部の長さ9300mという圧巻の景色の中を走ると、海上を飛ぶ鳥になった気分。そうえば、ムルチの顔は、どことなく鳥のようにも見える。
それはさておき、この巨体は強烈な海風をものともせず、強烈なパワーで切り裂いていく。加えてアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)が秀逸だ。
車体の前後にレーダーを装備しており、前方に低速の車があれば自動的に速度を落とし、設定した車間距離をキープ。車線を変更して前方が開けると、設定した速度まで再び自動で加速してくれる。
この加減速が非常にナチュラルなのだ。ライダーの意思にフィットし、まるで自分で操作しているような錯覚さえ覚える。だから、景色もよく見える。ツーリング中、こんなに風景を見る余裕があったのは、初めてのことだった。
本日の宿、「ことひら温泉敷島館」に着いた。金刀比羅神社の表参道にあり、この地域で有数の天然温泉の宿だ。伝統的な唐破風屋根の門構えとイタリアンバイクというミスマッチも、意外と似合っている気がする。
威風堂々とした、唐破風屋根の門構えを持つ「ことひら温泉 敷島館」。この地域を代表する高級温泉旅館だ
館内はすべて畳敷きだった。これなら、一日中ブーツの中に押し込まれていた足にもやさしい。和モダンという表現にふさわしい装飾に、心が安らぐ。趣が異なる4種類の貸切風呂から1つを選び、湯船に浸かると、「うわぁ」と思わず声が漏れた。
実際は「疲れた」と言うほどの距離を走ったわけではないが、やはりツーリングの後の温泉は、体に優しかった。
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取材協力/DUCATI JAPAN、DUCATI 岡山
PHOTO/T.TSURUMI TEXT/A.YAMASHITA
著者:山下晃和(やましたあきかず)
1980年生まれの松坂世代。タイクーンモデルエージェンシー所属。広告、カタログ、雑誌、WEB、テレビCMなどのモデルとして活動する傍ら、トラベルライターとして地方自治体の冊子やメーカーカタログなどの原稿を担当。バイクも大好きだが、ここ最近はアウトドア、キャンプ、自転車、フィットネスなどの記事を書くことが多い。