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サーキット走行入門ガイド:Part 0【サーキットを走る意味】

原田哲也が考えるサーキットを走る意味

「サーキットは上級者が走る特別な場所」だと考える人は多いだろう。しかし、原田哲也さんは言う「サーキットで正しく学べば、上達が早い」と。原田さんが考える、サーキットを走る意味とは、なんだろう

【原田哲也】世界GP250ccクラス挑戦初年度にチャンピオンを獲得。現在は本誌エグゼクティブアドバイザーを務めるなど、多くのメディアでバイクの楽しみ方を発信。走行会やスクールでのインストラクター経験も豊富

サーキットを走ることで公道走行の安全性が高まる

かつて、サーキットは行きにくい場所でした。子供の頃の僕にとっても、それは同じ。おじさんが睨みを効かせていて、よく「おまえは何秒だ?」と聞かれ、「速く走れないと来ちゃいけないんだ」と思い込んでいました。サーキットは怖い場所だったんです。 

でも、今のサーキットにそんなハードルの高さはありません。タイムを詰めたりレースをしたりとカリカリしている人より、ファンライドを楽しんでいる人の方が主流になりました。 僕個人としては、それはとてもよいことだと思っています。より楽しく、より安全に、スキルアップするためのフィールドになったサーキット。誰もが足を運びやすくなっていますし、雰囲気も親しみやすくなりました。 

では、いったいなぜサーキットを走ることがスキルアップにつながるのでしょうか? 走ることだけを目的に作られているサーキットは、対向車も歩行者もいませんし、道幅は広く、路面は整備されています。ですから、無理に飛ばそうとしなくても、自然と高い速度域で走ることになります。 

これがとても大事です。速度が高いと、操作をきちんと行わなければなりません。ブレーキもしっかりかけなければなりませんし、下半身ホールドの重要性も増します。安全に高い速度が出せるサーキットでは、ライディングの基本を身に付けやすいんです。 

また、操作がていねいになるというメリットもあります。これはちょっと意外かもしれませんが、速くなればなるほどていねいに操作しないと、バイクの挙動が大きくなってしまい、うまく走れません。 

MotoGPを筆頭としたレースでは、かなりアグレッシブなライディングが繰り広げられているように見えますよね。でも実は真逆。速いライダーほどていねいな操作をしていますし、そうでなければ速く走れない、ということなんです。 

一般ライダーの方でも、サーキットを走ればていねいな操作の重要性がすぐに分かっていただけるでしょう。そして、同じサーキットを何周もすることが反復練習になり、いつの間にかていねいな操作が身に付いているはずです。 

そしてもうひとつ大事なのは、反応速度が速くなることです。高速域ではバイクの挙動が素早く起きますので、これに対応するためには操作も素早く行わなければなりません。これに慣れておくと、低速域が中心の公道では大きな余裕が生まれます。とっさの時にも、正しく対応できるでしょう。 

ライディングパーティでも、先導やレッスンのインストラクターを務める原田さん。参加者から質問されれば、身振り手振り、そしてユーモアを加えながら真摯にアドバイスを贈る。皆さんもライパで原田さんを見つけたら、ぜひ気軽にライディングの悩みを相談してみて欲しい
ライパでも、先導やレッスンのインストラクターを務める原田さん。参加者から質問されれば、身振り手振り、そしてユーモアを加えながら真摯にアドバイスを贈る。ぜひ気軽にライディングの悩みを相談してみて欲しい

もしかしたら皆さんは、「高速域で走るサーキットが応用、低速域で走る公道が基本」と思っているかもしれません。でも、これは大きな誤解です。サーキットこそがライディングの基本を学ぶ場所で、公道は応用の場なんです。 

サーキットで得たバイクコントロールの基本や、ていねいな操作や、鋭い反応速度は、公道を走る時に間違いなく役に立ちます。ぜひこのことは知っておいていただきたいと思います。

自己流にこだわることなく、インストラクターの話に耳を傾けよう

サーキットを走るうえで意識してほしいのは、「知らないことは恥ずかしいことじゃない」ということ、そして「正しい走り方をしないと、いくら練習してもうまくならない」ということです。 

今は、弊誌主催のライディングパーティを始めとして、サーキットを舞台とした各種走行会やスクールがたくさん開催されています。ほとんどのライダーが、これらのイベントに参加してサーキットを走ることになるでしょう。せっかくの機会ですから、インストラクターに積極的に分からないことを聞いてほしいと思います。 

日本人は特に、分からないこと、できないことを恥じる傾向があります。でも、それでは正しい知識を得るのに時間がかかってしまい、もったいない。 

バイクのライディングは、奥が深くて難しいもの。分からなくて当たり前、できなくて当たり前、なんです。インストラクターに聞くことは、決して恥ずかしいことではありません。 

これはもうひとつの、「正しい走り方をしないと、いくら練習してもうまくならない」にも関係します。間違った自己流で走り続けている人を見かけますが、周回を重ねてもリスクが高まるだけ。実際、あまり上達しているようには見えません。「自分はできている」と思い込まずに、インストラクターの話をよく聞いて、正しいライディングを身に付けてほしいと思います。 

僕自身、まったく別ジャンルのトライアルや雪上バイクライディングをする時は、ベテランたちに遠慮せずに走り方を聞くように意識しています。プライドなんかありません(笑)。せっかくうまい人たちに話が聞けるのに、プライドなんかにこだわっていては、時間の無駄です。自己流を押し通すたけに走っているのではなく、うまくなりたくて走っているわけですからね。プライドなんて、1円の得にもなりません。 

最後に繰り返しになりますが、僕が皆さんにサーキット走行をオススメするのは、タイムを短縮するためではありません。より安全に、より長くバイクを楽しむために、サーキット走行が有効だと考えているからです。一度でもサーキットを経験してから公道を走れば、僕が言っていることも分かっていただけると思います。 

ぜひ一緒にサーキットを走りましょう!

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