【BMW MOTORRAD PHOTO EXPERIENCE】サーキットのバイク走行撮影をプロカメラマンがレクチャー
BMW Motorrad首都圏ディーラーが主催する『フォトエクスペリエンス』は、本誌でもお馴染みのフォトグラファー・大谷耕一さんを講師に迎え、バイクの走行写真の撮り方をレクチャーしてくれるイベント。乗る・いじるだけじゃない、バイクを撮る楽しみを深められるチャンスなのだ。
PHOTO/T.YAMASHITA, T.MINAMI, K.OHTANI TEXT/T.YAMASHITA 取材協力/ビー・エム・ダブリュー 70120-269-437 https://www.bmw-motorrad.jp/
バイクの写真を撮るという今風な楽しみ方
スマートフォンのカメラ機能が高性能化したことと、フェイスブックやツイッター、インスタグラムなどのSNSが普及したことで、バイクの写真を撮ることが、バイクの楽しみ方のひとつとして認知された。
写真撮影に徹することを鉄道趣味の世界では『撮り鉄』というが、それにならえば『撮りバイク』である。
しかしバイクを撮るのは意外と難しい。とくに走っているバイクはスピードが速く、被写体として小さいこともあって高難度だ。
しかも昨今では、公道を走っているバイクを許可なく撮影するとプライバシーの侵害にあたる可能性がある。だからといってサーキットでは観客席からコースが遠く、フェンスなどの障害物があるため思いどおりの写真を撮れない。
そんな悩めるアマチュアカメラマンのためのスクールが、『フォトエクスペリエンス』なのだ。会場は千葉県の袖ケ浦フォレスト・レースウェイで、サーキット走行会が併催されているため、走行中のバイクを飽きるまで撮影できる。しかも特別な許可を得ているため、普段はプロしか立ち入れないコースサイドから撮影できるのだからたまらない。
もちろん撮影前には講師を務めるフォトグラファー・大谷耕一さんによる座学があり、広角レンズと望遠レンズの使い分け方、絞りの違いによるボケ方の差、そして走行写真(流し撮り)のやり方など、初心者でもわかりやすく解説をしてくれる。
そして今回のスクールでは、キヤノンマーケティングジャパンの協力により、大谷さんが普段使っているカメラ(EOS R3)と望遠ズームレンズ(RF100-500mm F4・5-7・1LISUSM)を参加者全員に無料貸与。大谷さんと同じ機材、同じ設定でサーキット走行写真の基本を学ぶことができた。
最新鋭のミラーレスカメラとレンズは、手ブレ補正機能も優れているほか、高速で走るバイクにきっちりとピントを合わせ続けるため、数時間練習するだけでプロと同じような写真を撮れてしまうのだ。
誌面ですべてを紹介することはできないが、座学から実践まで、長年バイクやレースを撮り続けてきた大谷さんによる、バイク撮影のコツを追いかけていく。さあ、今日からあなたも撮りバイクを楽しもう!
レンズの違いによる被写体と背景の関係
交換式レンズには、おおまかに「広角」、「標準」、「望遠」がある。広角とは「広い画角」という意味で、撮影できる範囲が広い。標準は人間の視界に近く、望遠は遠くの被写体を大きく写せる。
そのため停車したバイクを撮影する場合でも、広角と望遠ではバイクのシルエット、背景の写る範囲が異なる。 標準はその中間で、被写体と背景のバランスに優れる。
ピントはどこに合わせる?被写界深度って何?
被写界深度とは、被写体にピントが合う範囲(奥行き)のことだ。これは望遠レンズになるほど狭くなり、広角レンズほど広くなる。
また、レンズの絞り(明るさ)を小さくするほど、被写界深度は狭くなる。そのためバイクの走行写真を撮る場合は、絞り値を大きくしたほうがピントを外しにくくなる。
被写界深度は、ピントの中心からカメラまでの間よりも、奥行きのほうに広がっている。なので、バイクを斜め前から撮るときは、ピントの中心をエンジンの前方あたりに合わせると、フロントタイヤからリアタイヤまでが被写界深度に収まりやすくなる。停車中のバイクをうまく撮るコツだ。
コースのアウト側とイン側の違い
サーキット撮影する場合、コースのアウト側からバイクを狙うと、カメラとバイクの距離が刻々と変わる。そのためさまざまなバリエーションの写真を撮れるが、ピントが外れやすくなるのでそのぶん難度は上がる。
一方イン側だとカメラとバイクの距離は一定だから一度合わせてしまえばピントが外れにくく、難度としては簡単になる。イン側は、バイクよりライダーをクローズアップしやすいことも忘れてはいけない。
一脚を使う? それとも使わない?
望遠レンズは重量があるため、走るバイクに合わせてカメラを動かすことが難しい。また、長時間に及ぶ撮影では疲労を招く。そのため一脚を使うカメラマンも多いが、大谷さんは「カメラの動きが制限される」ことを理由に一脚を使わない。そのためかつては筋トレもしていたそうだ。
何度も繰り返せばバイクを画角いっぱいに捉えられる
座学が終わったらいよいよ実践。普段なら一般客は入れないコース内に入っての撮影だ。袖ケ浦フォレスト・レースウェイの第8コーナーへ入り、まずはアウト側から撮影。迫りくるバイクに合わせてカメラを振るのは難しく、画角いっぱいにバイクを収めるのは至難の業。
「何度も繰り返すうちに、必ずバイクを画角いっぱいに撮れるようになります」
大谷さんはとにかく数をこなすこと、と教える。最初はバイクが半分しか写っていなくても、そのうちにバイクの動く向きやスピードがわかってくるのだ。
次にイン側へ移動して、座学で学んだことを体感したあとは、第9コーナーのヘアピンへ。スピードが落ちるためバイクを捉えやすく、しっかりと撮影できる。
まずは画角いっぱいにバイクを写す練習をする
バイクの走行写真は、画角いっぱいに車体を入れるように撮ることが基本だ。画角の中央にバイクが来るようにカメラを向け、バイクのスピードに合わせてカメラを振る。もちろんスピードが速いほど、レンズの焦点距離が長い(言い換えるとズームして拡大する)ほど難度は上がっていく。
しかし練習を繰り返すうちにだんだんとバイクの動きと速さをつかめる。バイクの傾きや向きを考えつつ、画角の中央いっぱいにバイクを写せるまで何度もトライしよう。
シャッタースピードは1/500でトレーニング
シャッタースピードは速いほど被写体ブレや手ブレを起こしにくく、成功しやすい。しかしシャッタースピードが速いと、ホイールの動きが止まって、迫力が無くなってしまう。バイクの速度にもよるが、1/500くらいから練習をはじめよう
撮影中はいつでも大谷さんのアドバイスを受けられる
バイクに合わせてカメラを振るコツなど、大谷さんが長年培った技術をその場で教えてくれる。だから上達も早く、難度の高い流し撮りも写せるようになる。
キヤノンマーケティングジャパンの協力でプロと同じ最新機材で撮影
大谷さんをはじめ多くのプロが愛用する、EOS R3とRF100-500mmF4.5-7.1 L IS USMを無料で使えた。
最新鋭のオートフォーカスや被写体追尾、連写機能があれば、プロ並みの写真を撮ることも難しくはない。
アングルを工夫してみよう
バイクをきちんと捉えられるようになったら、バイクの向きなどにひと工夫を加よう。また、カメラを傾けてあえて水平を崩すと、走行シーンの迫力が増す。
トライする価値ありだ。傾けてあえて水平を崩すと、走行シーンの迫力が増す。トライする価値ありだ。
上達したらシャッタスピードを下げよう!
レンズの焦点距離よりもシャッタースピードの数値が小さくなると被写体ブレや手ブレを起こしやすい。だから、たとえば200mmのレンズなら、シャッタースピードは1/200以上にすると失敗しにくく、バイクをしっかり捉えられる。一方シャッタースピードを遅くすると背景がさらに流れるため、印象的な写真になる。下の作例はどちらもレンズは500mm、シャッタースピードは上が1/500、下が1/100。