【Goodwood Festival of Speed 2024】中野真矢が覗いてきた、英国のモーターカルチャーの深淵
モータースポーツ好きの英国貴族が主催するビッグイベントに、ホンダの歴史的なマシン、RC142のライダーとして中野真矢さんが参加。イギリスにおけるモーターカルチャーの歴史と、その重みを実感した。
PHOTO/HONDA, BENTLEY, BMW, S.NAKANO TEXT/Y.FUJITA
いちモーターファンとしてこの世界感に興奮した
イギリスで最大級のモーターイベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」が7月11~14日に開催され、僕も初めて訪れることができました。会場はロンドンから南西に100kmほど離れた農村地帯にある広大な私有地。
当地の所有者であり、イベントを主催するリッチモンド公爵チャールズ・ゴードン=レノックスさんが、モータースポーツを愛する気持ちから、1993年にこのフェスティバルを発案したのだそうです。
イベントでは毎年異なるテーマが設定され、関連するメーカーやマシン、歴史が特集されます。今回は、F1参戦60周年を記念してホンダが招待されました。
僕は光栄にも、1959年に日本車で初めて国際的なレースに出場したRC142を走らせるライダーに選んでいただきました。
RC142はコレクションホールに保存されている貴重な車体。現役時代に走らせたRC211Vのルーツということもありとても楽しみにしていた反面、非常にエンジンのクセが強いので、大勢の観衆の前でまともに走らせられるかどうか、プレッシャーも感じていました。
ホンダのデモ走行は、1965年にホンダにF1初優勝をもたらしたRA272と、HRCが支援したパワーユニットを搭載した2022年のRB18、そして現行MotoGPマシンのRC213Vの4台で行われました。
中でも観客の注目を集めていたのは、やはりRA272。ピットでエンジンをかけるだけで(この作業も実は大変なのですが)、大きな拍手と歓声が起こっていました。角田裕毅さん、宮城光さん、ステファン・ブラドルさんらと無事にデモランの大役を終えられて本当に良かったです。
広大な会場には、デモランやヒルクライムレースに参加する旧いレーシングマシンが多数持ち込まれており、あちこちでエンジン始動の儀式が行われていました。
こんなにたくさんのヒストリックレーサーのエキゾーストノートに浸れる空間は、世界中でここだけじゃないでしょうか。
個人的なハイライトは、アイルトン・セナが駆ったマクラーレン・MP4-6を、甥のブルーノ・セナが走らせたシーン。少年の頃にF1のTV中継が始まり、ハマった世代としては泣きそうになりました。
ライダーもレジェンド達が集結するのがグッドウッド。ケニーさん、スペンサーさん、ドゥーハンさんらが、すぐ近くで談笑。
さらに極めつけはアゴスチーニさん! RC142に興味津々で、すごく気さくに声をかけてくださいました。もちろん四輪ドライバーもスーパースター揃い。3度のF1王者、ジャッキー・スチュアートさんもいました。
これほど貴重なマシンやレーサーが、メーカーも世代も競技も関係なく集う空間はまさにモータースポーツの楽園。会場のどこに居てもイギリスの、そしてモータースポーツ発祥であるヨーロッパのモーターカルチャーに対する敬意とプライド、そして凄味を感じることができました。
このような世界感を、いつか日本でも体験できる日が来てほしい。本気でそう思った4日間でした。
(中野真矢)