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【DIRTSPORTS】K-cross監修 オフ車セットアップ&メンテクリニック 〜3年間エンジンを開けなかったCRF、どこまでオーバーホールする?〜【メンテナンス】

今回は2012年型CRF250Rを大切に乗り続けているオーナーが、オーバーホールのために愛車を持ち込まれたので、ヘッドカバーを開けて状態を確認してみた

PHOTO&TEXT/DIRTSPORTS
埼玉県比企郡川島町出丸下郷177-1
TEL:049-272-7977
Eメール:kcross0520@gmail.com
取材協力店: k-cross
全日本でも活躍中の加藤氏のバイクショップ。オフロードバイクに強いのはもちろん、ロードレーサー、ヴィンテージなど得意なジャンルは抜群に深く広い。バイクをベースにした遊びの提案から、レースの勝ち方まで、独自の世界観が面白い!
取材時には偶然だが、モタード、モトクロッサー、エンデューロレーサー、トライアル車が勢ぞろい。とにかくオフロードバイクは全方位得意分野だ!

久しぶりのエンジン整備、さてどうする?

今回の題材となるマシンは、2 012年型のCRF250R。オーナーはこのバイクを気に入っており、オイル交換など定期的なメンテナンスを行い丁寧に扱っている。レース参戦はほぼなく、2、3週間に1度くらいのペースで練習走行を行なっているので、傷み自体は非常に少ない。ただし、エンジンを最後に開けたのが3年前。その際は腰上のみのOHだったため、今回は腰下、クランクケース周りの交換に関して、k-cross加藤店長に相談を受けにきた形だ。

ピストンやバルブなど腰上は交換するとして、問題はクランク周辺をどうするか。実際には消費期限の2倍、つまり200時間くらいは稼働しているので、交換した方が良いのは確かだが、オイル管理もしっかりされているので、おそらく状態は悪くないだろう。加藤店長は「キャブレター仕様車のクランクは4万5000円くらいに値上がりしていますが、201 2年型(PGM-FI)ならまだ4万円を切るくらいかと思います。今後も乗り続けるなら新品に変えておき、交換したクランクは油に漬けてキープしておくのが良いと思います。まだ乗れるとはいえローラーベアリング、ニードルローラーを抑えているカゴ状のケージ、左右のスラストワッシャーが少しずつ減っているので、オーバーヒート気味の時に金属接触状態になり破損し、その欠片が悪さをするリスクもあります。

壊れる兆候はエンジンオイルに赤っぽい銅の粉のようなものがマーブル状に出てくることと、アクセルを開けているのに一瞬、ガス欠の時のように詰まる症状です。クランクの底にフリクションがかかって抱きつく寸前ですから、兆候があればすぐにプロに見せて二次被害を防ぐべきでしょう」と話してくれた。

CRFに最適なエンジンオイルは?

ユニカム仕様のCRF250Rエンジンはクランク室と駆動系が完全に分かれているため、オイルによるセッティングが可能。つまりエンジンオイルに関しては、他車のようにクラッチのフリクションを保つことを考慮しなくても良いので、選択肢が広がることになる。ホンダCRFの場合はピストンリングの張力が他車に比べて低いので、吹き抜けやすい。逆にいえば油膜が保たれている場合は、シリンダーのライフが長いのだと加藤店長。ただし未燃焼ガスがクランクケースに入りオイルと混ざって希釈する「ダイリューション」を起こしやすいので要注意。

2週間に1回くらいの頻度で走行してきたCRF250R。エンジンを含めマシンの状態はよく、定期的なオーバーホールを行ってきたが、今後も大事に乗り続けていくマシンだとオーナーは話す。まずはシリンダーヘッドカバーを開けてカムやバルブなどの状態を見る。「まずはカムずれ(タイミングチェーンの伸びによる、バルブタイミングのずれ)はみますが、許容範囲内かなと思います。バルブクリアランスもこの状態では正確な数値は出せず許容範囲内であるかどうかの確認になりますが、エンジン始動性に問題が生じるようなクリアランスではありませんでした。カム自体も多少跡がついていますけど、変えなくて良いレベルです」

かつてセキレーシングモトロマン時代にCRF専用オイルをニューテックと共同で開発した経緯もある。「コンプレックスエステル(添加剤)の精度が高く、バランスが良い状態でのオイル稼働時間が長いのがニューテックの5W-35や0W-20。エステルベースオイルのグレードがかなり高く、ユニカムCRFとは特に相性がよく、値段も抑えられています(1L2200円程度)。これを6時間走行毎くらいで交換するのがおすすめです」
このCRF250Rオーナーが常用しているのがホンダ純正のG1。「G1の良いところは、値段がさほど高くない(定価ベースで1L 1400円くらい)ことと、洗浄性能が格段に高いことです。廃油がとても汚れているのは、スラッジをオイルに溶かし込んでいるからです。ただしベースオイルとしての性能には限界があるので、ニューテックオイルを3回交換、4回目にG1をフラッシング代わり(1、2時間走行後廃棄)に使うのが良いと思います。このサイクルでエンジン劣化を抑えることができますね」

バルブクリアランスのチェックにて、インテーク(吸気)側バルブは問題なし、エキゾースト(排気)側は規定値より減っているので「最近始動性が悪くなってきた」というオーナー談の症状に合致している。ただし通常の範囲内の減り方なので、十分持ち堪えてきたと言える状態だった。加藤店長は「バルブクリアランスは詰まるのが通常ですが、ごくまれに広がることもあるのでその時は重大なトラブルの可能性があります。オーバーヒートで剛性が落ちシートリングが下がってバルブが上に上がらず、隙間が開いてしまう場合があります。大きなトラブルを起こす前のチェックが大切ですね」と話す。またクリアランスに関しては「私の場合はインテークもエキゾースト側もガバガバにして上限ギリギリにします。やや音が出ますが、低速でのオーバーラップ(両方同時に開いている状態)の時間を短くすることで、回した時にクリアランスがあり慣性を使うことで、よりしっかり開けることができます。低速から高速までトルクフルで、パンチのある特性を生みます」と話す

バルブもチェック!

バルブを新品と比較してみよう。本来はやや端が少し丸まっているのだが、摩耗してすり減ってくるとラッパのような沿ったテーパー形状になってくる。柔らかい部分が出てきてしまっているので、シムの厚さで調整したとしても、新品バルブに交換してクリアランスを調整するのに対して、寿命が短くなってしまう

ンジンオイル白濁の症状あり。原因は?

本モデルのオーナー、実はk-crossに持ち込む前のエンジンオイル交換で、オイルが乳化し白濁していたことも加藤店長に相談していた。エンジンが冷えていない時にマシンを寝かして洗車をすることが多い場合、ホースから水を吸うのはよくあることだが、オーナーは横に寝かさないため、この件からは外れる。「疑わしいのはメカニカルシール(12年間一度も交換していない)、ウォーターポンプのシャフト、オイルシール、軸受のベアリング、各ダストシールで、そこは変えて良いでしょう」

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