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移籍2年目 真価が問われるレッドブル・KTM・テック3 Moto3ライダー『佐々木歩夢』

MotoGPという舞台で勝ち残るために Motorcycle Life 佐々木歩夢が行く道[特別編] MotoGPのMoto3クラスで活躍する佐々木歩夢選手 参戦5年目となる2021年シーズンは勝負の年となる 昨年は表彰台にも手が届き、さらなる活躍が期待される。

Moto3ライダー佐々木歩夢選手 
15年アジア・タレントカップ、16年レッドブル・ルーキーズカップでチャンピオンを獲得し、17年からMotoGPのMoto3クラスに参戦を開始。21年は昨年に引き続き、RedBull KTM Tech3から参戦する

目の前に立ちはだかる壁を打ち砕くためにとった決断

モトGPのモト3クラスに参戦して4年が経った。現在モトGPクラスで活躍するチャンピオンライダーたちも、小排気量クラスから勝ち上がって行った強者ばかりだ。世界最速の、ほんの一握りの選ばれたライダーだけが戦うことを許された特別な世界であり、モト3はその世界への入り口となっている。

現在のモト3には絶対王者が存在せず、毎戦混沌とした争いが展開されているがために、時には運も味方にしなければならない、そんな厳しい舞台で佐々木選手は戦っている。 佐々木選手がモト3に初めて参戦したのは、2016年のマレーシアGPだった。

怪我をした選手の代役としての出場だったが、その年には、レッドブル・ルーキーズカップでランキング1位を獲得していた。その実力を買われてのことだった。 2017年からモト3にレギュラー参戦を果たし、SICレーシングチーム、ペトロナス・スプリンタ・レーシングチームを経て、昨シーズン、レッドブル・KTM・テック3チームへと移籍。マシンを3年間慣れ親しんだホンダからKTMに乗り換え、新たな挑戦に挑んでいた。

「3年間同じチームで過ごして、いい関係を築けていたのですが、初年度にルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得できたものの、その後なかなか自分が思うような成績につながりませんでした。周囲からの期待も大きく、それに応えられないことが辛い3年間でもありました。

ペトロナスには本当に感謝をしています。自分を信じて、たくさんのことを学ばせてくれ、成長をもさせてくれました。でも、どうして勝てないのか、ホンダのマシンにアジャスト出来ない原因が自分でもわからなくなってしまっていたんです」

マシンをホンダからKTMへと乗り換えた昨年のランキングは16位。過去の順位を上回ったものの、新型コロナの影響でスケジュールが大幅に変更、乗り換え初年度として厳しいスタートとなった

「そんなときに、KTMからオファーをいただきました。移籍するかしないかについて、ものすごく悩んだのですが、ホンダよりも厳しいチャレンジになるかもしれないけど、今ぶち当たっている壁を乗り越える一歩になるのならと、KTMに乗り換えることを選んだんです」

しかし、昨シーズンは新型コロナウイルスの影響で、ものすごく短いシーズンとなってしまった。

「シーズンが開幕したと思ったら、第1戦のカタールGP以降、7月まで待機状態になってしまい、なかなかマシンに慣れることが出来なかったのですが、テック3のチームスタッフが、焦ることなくKTMの乗り方やマシンの特性を1から教えてくれたことに助けられました。

KTMのマシンはコースの特性やコンディションに左右されることが大きく、いいときはトップで走ることもできたし、悪いときは追い上げられなかったりと、波がありました。それでも3年間がんばって届かなかった表彰台にやっと登ることができました。

自分の納得のいく年間リザルトではなかったのですが、それでも一歩前進できて、目の前にあった高い壁がやっと崩れ始めたのかな、と感じることができました」 そして、今シーズンも同じチームからの参戦となる。

「KTMと、チームと自分のスポンサーでもあるレッドブルの本拠地、オーストリアGPでいいレースをすることができ、ポンシャラル監督に”歩夢はもう一年だな“と言われ、契約していただきました。早い段階で決まったことも良かったです。

今シーズンは、いいときは表彰台、悪いときでもシングルフィニッシュを目指します。そうすれば必ずチャンピオン争いができると思っているので、全体のアベレージを上げることを目標に挑んでいきます」

890DUKE Rに初試乗。「車体の割には軽く感じました。立ち上がりのパワーがすごいです!」

今シーズンでこのクラスを卒業するためにもチャンピオンを狙います!

トレーニングマシンは、ハスクバーナのモタードレーサーであるFS450。後輩と共に走り込んでいる

左:濱田寛太選手(イデミツ・アジア・タレントカップ参戦)昨年からアジア・タレントカップに参戦し、開催されたレースでは1位を獲得している。チャンピオンを目指す16歳だ
右:内海孝太郎選手(CEV Repsol Hawkers European Talent Cup参戦)佐々木選手がチームを探し、テストに合格したことから、今年からヨーロッパに活動の場を移す内海選手は15歳

佐々木選手は16歳でGPに参戦して、昨年で20歳となった。自分の計画通りに進んでいるか? と、ちょっと意地悪な質問をぶつけてみた。

「ものすごく時間がかかってしまったと思っています。歳だけ見るとまだ20歳ですが、レースの世界だともう20歳なんです。遠回りしたようにも感じていますが、遠回りしたからこそ、いい波に乗れる時が来てるんじゃないかなって思っています。今年でモト3は卒業して次のクラスに進みたいので、集中してチャンピオンを狙っていきます」

佐々木選手は周りから愛されるキャラクターだ。チームに愛され信頼され、自らスポンサーを手繰り寄せている。GPの世界で生き抜くことは、そうたやすくないはずなのだが、レース中はスペインに住居を構え、海外でのコミュニティーもしっかりと築き上げている。そのツテを活かし、日本にいる若手ライダーの海外進出の手助けまでも行っている。 そんな佐々木選手を応援せずにはいられない。モトGPクラスで活躍する姿を見る日まで。

後輩の海外進出をコーディネートしたり、日本にいるときは一緒に練習したりと、MotoGPを目指す若手ライダーたちの身近な手本として、その道を切り開くためのアドバイスや手助けをしている。二人の後輩曰く「すぐに追い抜きますからね!」とのことだ

これからも応援よろしくです!

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