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電動バイクの最高峰『MotoE』スペインでの開幕戦の模様を大久保 光選手が振り返る!

2021年シーズンのMotoEに日本人として初めて参戦する大久保光。7位で終えたMotoE初レースの開幕戦スペインは、フロントタイヤのグリップ低下に苦しむことになった。

大久保 光選手
’93年8月11日生まれ。ミニバイクレースを経て、’10年に全日本ロードレース選手権J-GP3でチャンピオンを獲得。’12年にはアジア・ドリームカップで初代チャンピオンに輝いた。’16年から’20年までスーパースポーツ世界選手権に参戦。’19年にはランキング5位を獲得。’21年は、電動バイクレースMotoEにAvant Ajo MotoEからエントリー。日本人初のMotoEライダーとして世界チャンピオンを目指す

FIM Enel MotoE World Cup Rd1.スペイン 大久保 光が拓くMotoE

2021年シーズンのモトEは、スペインのヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエトで開幕した。初戦を終えた大久保に、まずモトE独特のレースウイークについて聞くと「セッションの時間が短く、予選のEポールでは1周だけのタイム計測だったので、レースの作り方が難しかったです」と言う。

モトEは、各30分のフリー走行が3回行われるが、バッテリー容量の関係で、計測できる周回数は実質8周ほど。少ない周回数で予選と決勝レースに向けた準備をしなければならず、そこにはモトEならではの難しさがあったようだ。

初めてのEポール(予選)では、11番手を獲得。しかし、フィニッシュラインを通過したあと、大久保は首を横に振る様子を見せていた。「攻めきれませんでした。グリーンゾーンに出てしまうと、1発アウトになってしまいますから」

モトEではモトGP同様にトラックリミットがあり、フロントまたはリアタイヤが規定のコースの外に出ると、ラップタイムが抹消されてしまう。Eポールは1回のタイム計測のみ。もしアタックラップ中にトラックリミットを超過すれば、ラップタイム抹消で最後尾スタートとなる。しかし同時に、1周で全力のアタックをしなければならない。

「そういうEポールに向けて練習はしていました。けれど、実戦となると100パーセント攻めて1周でまとめられなかったな、と走りながら感じてはいたんです。納得いかない予選になってしまいました」
予選後、チームとのミーティングで、チームマネージャーのアキ・アジョ氏からアドバイスがあった。

「モトEは開催数がとても少ないから、ポイントを取りこぼしちゃいけない。モトEは初参戦なのだし、とにかく経験値を積むこと。そうしないと、次のステップにいけなくなる。一つの目標を達成して、次の課題のためのトレーニングができる――と監督に話をされたんです」

そして大久保は「予選が終わったあと、けっこうナーバスになっていたんですよ」と明かした。「僕のそういう状態を含めて、アドバイスしてくれたのかな、と思っています」

開幕戦スペインで優勝を飾ったアレッサンドロ・ザッコーネ(#61)、2位のドミニケ・エガーター(#77)、3位のジョルディ・トーレス(#40)
ヘレスで速さを見せていたエリック・グラナド(#51)は転倒
グリーンに出るとタイムが抹消になる

タイスケ変更で上昇の気温 車両重量もタイヤに影響

迎えた初のモトE決勝レース。大久保は一時、5番手に浮上するもペースが上がらず、7位でフィニッシュした。

「11番グリッドだったので早めにポジションを上げたかったのですが、1、2コーナーでイン側を走ってフロントを酷使し、さらに一時、5番手に上がったときに攻めて、そこで完全にフロントタイヤのグリップがなくなったんです。僕はフロントに荷重をかけるタイプのライディングスタイルで、(ストップ&ゴーの)ヘレスのコースレイアウトもフロントにきつい。そこが、悪い意味で重なってしまいました」

フロントタイヤのグリップ低下の要因はほかにもあった。モト2クラスのウオームアップセッションで転倒による赤旗中断が発生し、モトEの決勝時間が大幅に変更された。午前中に予定されていた決勝レースは15時30分スタートになり、路面温度は午前中よりも約20度も高い状況だったのだ。そしてもう一つの要因が、車両重量である。

「周回数が8周なので最後までタイヤがもつと思ったのですが、バイクが重いので、1回の摩耗が大きいんです。今までのバイクなら、多少は無理にブレーキをかけても大丈夫だったのですが。モトEは車両重量が重い(260㎏)ため、振り幅が大きいということに通じています。セットアップもそうなのですが、リアの車高を1ミリ変えただけですごくバイクが変わってしまいました」

モトEはワンメイクマシンであり、変更できる部分も少ない。加えて、重量級の車両重量だ。本当に細かな積み重ねで、モトEではライダーに合わせたマシンづくりをしていかなければならないようだった。
それでも、7位という結果は悪くない、と大久保はとらえている。

「6番手、5番手くらいにいけた可能性があったので、そこまでいけなかった反省点はあります。でも、ポイントをしっかりとれたのは大事です。チャンピオンシップを考えたら、初戦7位は悪くないですよ」
その2週間後に行われた第2戦フランスで、大久保は一時、トップを走行。残念ながら他車との接触で転倒リタイアに終わったが、その躍進は間違いない。大久保が語った第2戦については、次号で紹介予定だ。

大久保にとって初のEポール。ゲートから一人ずつコースインする
ピットレーンで走行を待つMotoEマシン
MotoEマシンの充電の様子

FIM Enel MotoE World Cupとは?

2019年より始まった、電動バイクによるチャンピオンシップ。ライダーが走らせるワンメイクマシンは、イタリアの電動バイクメーカー、エネルジカ・モーターカンパニーの『エゴ・コルサ』。タイヤサプライヤーはミシュランである。

MotoEの予選は、ドライコンディションの場合、一人1周のアタック。決勝レースは超スプリントレースで、開幕戦スペインは8周だった。日本ではMotoGP.comの有料ビデオパス購入で予選、決勝レースが視聴可能となっている。

2021年シーズン MotoEカレンダー
第1戦スペイン(MotoGP 第4戦に併催。5月2日決勝)
第2戦フランス(MotoGP 第5戦に併催。5月16日決勝)
第3戦カタルニア(MotoGP 第7戦に併催。6月6日決勝)
第4戦オランダ(MotoGP 第9戦に併催。6月27日決勝)
第5戦オーストリア(MotoGP 第11 戦に併催。8月15日決勝)
第6戦サンマリノ(MotoGP第14戦に併催。2レース開催。9月18日、19日決勝)]]>

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