春までにレベルアップ! レーシングライダー高田速人さんが教えるステップワーク
コーナリングはスポーツライディングの醍醐味だ。けれど、“乗れていない”“上手く曲がれない”と感じている人も少なくない。そんなアナタは、下半身の荷重コントロールが出来ていないのかもしれない!? レーシングライダー高田速人さんが、とっておきの練習方法を伝授!
レーシングライダー 高田速人さん
高田さんは、全日本や鈴鹿8耐で 多くの実績を持つレーシングライ ダー。世界耐久選手権にフル参戦 した経験もある。MFJ公認イン ストラクターとして、サーキット アドバイザーやライパの先導ライ ダーとしても活動中。バイクのタ イヤと、メンテナンスのプロショ ップ「8810R」代表。お店の情報 は「8810R」で検索しよう
冬でもできる低速トレーニング! ステップワークでリーンを変える !
気温が低い今の季節、体は固いしタイヤもグリップし難い。 だからといって部屋にこもっている と、バイクを操る感覚は錆びついて いくばかりだ。
「ハイスピードで走らなくても、磨けるテクニックはあるんです」そう語るのは、レーシングライダーの高田速人さん。むしろ、今だからやるべき低いスピード域での練習が、ライテクの底上げに効果大とのこと。それが下半身での荷重コントロールに必要なステップワークだ。
「バイクを曲げるのは基本的に下半身のコントロールで行うべきものな んです。でも、それが出来ていない人がとても多い。それでは、コーナ リングは上手くこなせません」
そう聞くと、混乱する人もいるだろう。バイクは全身で操る、そう信じてきた人が大多数のはずだ。「確かに、その考え自体は間違っていません。ですが、コーナリングに関して、特に曲がるきっかけを作るのは下半身のコントロールと考えるべきでしょう」
その理由は、バイクが曲がるメカニズムに由来する。「バイクが曲がる時は、車体がバンクするところから始まります。まず、車体がバンクする。そして、バンクした方向に、ステアリングに舵角がつく。そこで初めて旋回力が生まれ、コーナリングするわけです」
四輪は、ステアリングを切るところからコーナリングが始まる。だが、バイクのステアリングは、車体の傾きに追従してステアリングが切れ、車体が旋回性を得る。「ステアリングのあるフロント側からではなく、車体が先行します。それも、リア側の荷重コントロールが大きな意味を持っているんです」
この挙動を高田さんは「リアがステアリングを引き込む」と表現する。ステアリングを機能させるため、下半身のコントロール術を身につける。そのためのステップワークなのだ。
ステップワーク練習の基本フォーム
これがバンク中の基本フォーム。イン側の足はバイクとの間に空間を保つことを意識する。アウト側はバイクに当ててかまわないが、あくまで身体を支えるだけ。ニーグリップでマシンを挟み込んだり、荷重をかける動作は行わない。ニーグリップすると、下半身が自由に動かせなくなり、マシンをコントロールしようと無意識に上半身を使ってしまうからだ
下半身の荷重コントロールだけでバイクは曲がる
ステップワークの練習では速く走る必要はない。速度は30~40㎞/hくらいだし、ボディアクションはむしろゆっくり行うべきだ。
「リアがステアリングを引き込む挙動を体感することが大切なんです。ひとつひとつのボディアクションを丁寧に行い、荷重の変化とバイクの挙動を確認しながら練習しなければ意味がありません。ですから、曲がりたい方向のイン側の足を踏み込む時は、じんわりと荷重をかけることを心がけてください。そうすれば、下半身だけでマシンを曲げる感覚が 身につきます」
下半身の荷重コントロールは、特にスーパースポーツ系のマシンには必須と高田さんは力説。「上半身だけでバイクを操ろうとしている人は多いんです。特にネイキッドモデルなど、ハンドル位置が高くアップライトなポジションのバイクに長く乗ってきた人に、その傾向が強い。
ハンドル位置が高いと、ステアリングへの入力がしやすいので、そういったクセがつくんです。しかし、ハンドル位置が低いスーパース ポーツはそうはいきません。ネイキッドから乗り換えた人から『上手く乗れない』と相談を受けることが多いのですが、ステップワークが出来ていないことがほとんどです。
もちろん、どんなバイクでもステップワークは有効なテクニックです。コーナリングに苦手意識があるのなら、是非とも身につけて欲しいですね。 身近な場所で、スピードを出さずに練習できますから」
STEP1
外足は身体を支えるだけ スロットルは一定で
STEP2
マシンは外足でホールド スロットルは一定で
STEP3
セルフステアリングを邪魔しないように
STEP4
旋回中は内足に乗ったまま
スーパースポーツが上手く乗れない? そんな時は頭の位置を意識する
ステップワークを身につけ、下半身でマシンを曲げられるようになったら、次は上半身をどう動かすかを学びたい。ブレーキングで腕を突っ張り、コーナリング中もそのままだと上手く曲がれない。まず試してみたいのは、イン側のハンドルに頭を近づけること。
左の二枚の写真を見て欲しい、ハンドルと頭が近い方が、上半身がリラックスして、腕の自由度が上がっていることがわかるだろう。マシンのセルフステアリングを妨げず、フロント荷重を増やせるので、旋回性が上がりコーナリング中の安定感が大きく増すのだ。
気温が低い時には タイヤとサスペンションのウォームアップが重要
スピードを出さないトレーニン グ、ステップワークの練習方法を紹介したが、実のところ冬場で もスポーティな走行は不可能という ことではない。大切なのは、ウォー ムアップ。タイヤはもちろん、バイ クの他の部分や乗り手自身を、しっ かりと「温め」さえすればいいのだ。 ここでは、ウォームアップに有効な 手法を実験で探ってみた。
走り方を変えつつ、走行後にタイ ヤとフロントフォークのアウターチ ューブ、リアショックユニットのリ ザーバータンクの表面温度と、タイ ヤ空気圧を計測。どれだけ変化があ るかを比べてみた。タイヤもサスペ ンションも走行風で冷やされるため、 走行後に時間を置くと表面温度が上 がる場合が多いが、タイミングを統 一して計測したので、ご参考に。