ライテクQ&A【コーナリング編:①】|元モトGPライダーが一問一答!
読者の皆さんから寄せられたライディングの疑問に中野真矢さんと青木宣篤さんが答える! 世界のトップカテゴリーレースで戦ってきたお二人は一体どんな回答で我々を導いてくれるのか! 本稿ではコーナリング関する内容。コーナリングはスポーツライディングの醍醐味。それだけにベテランになっても悩みは尽きないし、ステップアップする度に新たな疑問も生まれてくる。ではプロライダーは、どんなことを意識して走っているのだろうか?
Q1:曲がり始める“きっかけ”はブレーキレバーのリリース?
A=Nakano:ステップワークがきっかけにしやすい
ステップワークがキッカケとして使いやすいです。その上で「どこから曲がるのか?」というと、「コーナーの出口でどのラインを走りたいか」で決まります。入り口も中間も、この「理想の出口ラインに乗るためのライン」を走りたいんです。また、大前提のラインはアウト-イン-アウトですが、出来ていない人は意外と多い。ライディングパーティなどで先導ライダーのラインを見て、マネしてください。
A=Aoki:コーナー出口を見ると自然と曲がっていける
そもそもブレーキをリリースするのはクリッピングポイントか、さらにその先。では何をきっかけにするかと言うと、腰をズラすこととハンドル操作です。ただしこれはレース用テクニック。一般的にはコーナー出口を見ることがきっかけになります。出口に視線を送れば、自然と旋回の体勢が整います。
①コーナーを立ち上がったら
②目線はいち早く次のコーナーへ
③腰をズラして体制を整える
④次のコーナーにスムーズにアプローチ
Q2:バンク角はどうやって決めている?
A=Aoki:スロットルを早く開けられるバンク角を探っています。
スピードとコーナーのRに応じて自然と決まるものですが、意識的に決めるとしたら「どれだけアクセルを開けていけるか」です。コーナー出口でもっとも大きく、もっとも早くアクセルを開けられるバンク角かはどこか、を探っています。
A=Nakano:市販車ならステップが擦ったら限界かと…
こればっかりはマシンの性格とか特性によるので、私がアドバイスするのは危険かと(笑)。しかし、ステップが擦るのはある程度の目安ではないでしょうか。擦ったらそれ以上は攻めない方が無難です。
Q3:コーナリング中はハンドルに力を入れる? いれない?
A=Nakano:基本的にはセルフステア、レースでは入力することも
サーキットでもファンライドを楽しみたい方にはセルフステアがオススメです。ただタイムアタックする際は、グリップやバンク角に応じてハンドル操作し、微妙に曲がり方を調整することはありますね。
A=Aoki:ステアリングヘッドをまっすぐに保っています
フロントタイヤの切れ込みを抑え、寝かせて旋回力を高めるためにイン側のハンドルを押しています。「押す」というより「ステアリングヘッドをまっすぐに保つ」イメージ。難易度が高いので安易にマネしないでください。
Q4:ギアの選択は何が基準?
A=Nakano:トルク変動が少ない高回転域に合わせたい
車種やギア比によって違うので基準はないですが、サーキットなら私はリミッターギリギリまで引っ張ってパワーを最大限に使いたい。パワーバンド内ならトルク変動が少ないのでトラクションも安定してかけられますから、それに合わせてギアを選びます。例えばタイトなヘアピンなら基本は1速ですが、エンブレが強く効くなら2速。スピードを乗せていけるコーナーなら3速を多用するイメージ。公道ならパワーは必要ないですから、ギクシャクしない回転域とギアを選びます。
A=Aoki:パワーバンドに近い回転数になるギアが好み
例えば袖ケ浦フォレスト・レースウェイの最終コーナーなら2 ~ 4速で立ち上がることができますが、私なら2速を選びます。パワーバンドに近いエンジン回転数にしておいた方が瞬発力が得られますし、バイクを起こす力も加速力も高まります。それに何といってもエンジンは回していた方が楽しい(笑)。高いギアだとユルく走ることはできますが、面白みに欠けますし、気付かないうちに車速が上がるリスクもあります。ギア選びの基準は、楽しいか楽しくないか!(笑)
Q5:立ち上がりでスロットルを開けるタイミングは?
A=Aoki:最も遅くなった所が開け始めるポイント
「遅いなぁ……」と思ったらスロットルを開けます。これ、決して冗談ではありません。きちんとラインに乗ってブレーキングができていれば、もっとも車速が落ちたポイントが、向きがよく変わるポイント。ですからもっとも遅いと感じた所からスロットルを開けるんです。ただしコーナーによってはもっと早く開けて行くこともありますので、これがすべてではありません。
A=Nakano:向かっていく目標が見えたら開けています
安心できる速度でコーナーに入っていったとして、出口の先に向かっていく目標が見えたタイミングで開け始めています。その際、スロットル開度10%までの“付け始め”がすごく重要。まずジワッと開けて後輪グリップを作り、二次旋回に入ります。その後、出口の先に目標に向かってグ~っと開けていくという2段階の操作をしています。
Q6:走行会などでかっこよく写真に写るコツって何?
A=Aoki:荷重がかかっていればカッコよく見えるはず!
走りがちゃんとしていれば自然とカッコよく見えるものだと思います。フォームだけカッコつけるのではなく、バイクが自分のコントロール下にあり、しっかり荷重がかかっていればカッコよくなるはず!
A=Nakano:頭の位置を低くして重心を下げイメージで!
2021年3月号の巻頭特集「春に差がつく冬のトレーニング」でも紹介したように、ストレートでもコーナーでも頭の位置をグッと下げて、車体にしっかり荷重をかけることを意識すると良いと思います。プロライダーの写真を見て、マネから入るのも手ですよ。