青木宣篤のアドバンスド・ライディングテクニック【非セルフステアの世界:Part2】
ライディングテクニックの金科玉条として語られる、セルフステア。バイクが旋回する際にハンドルが勝手に切れるこの特性は、バイクに乗るにあたって絶対的に守るべき現象とされている。ライダーは、セルフステアを妨げないようにするべきだ、と。だが、ある速度域を超えると、セルフステアは弊害を起こし始める。高速域には、セルフステアを押さえ込む「非セルフステア」の世界があるのだ。いったいどのような世界なのだろうか?
【CAUTION】※プロフェッショナルレーシングライダーによる高度なテクニックを紹介しています。読み物として楽しむに留めていただき、くれぐれも実践はなさらないようにご注意ください。
肩でイン側のハンドルを押す
ハンドルをまっすぐにする「非セルフステア」状態を、ライダーはどのように作り出しているのでしょうか。
さまざまな方法がありますが、基本的にはイン側の肩からハンドルを押す、という動作になります。ヒジ先や手首だけに力を入れるのでは不足。左で紹介するようにヒジをロックして、肩ごとハンドルに体重を預けるようなやり方です。
セルフステアを妨げないためには、「腕を円状にするとよい」とよく言われます。しかしヒジが曲がった状態ではハンドルへの効果的な入力はできません。ヒジがサスペンションになってしまい、力が逃げてしまうからです。
非セルフステアでは、まったく逆。ヒジを絞るようなフォームになります。ただし、フォーム自体は人それぞれ。大事なのはイン側のハンドルにしっかりと自分の意思を入力する、ということです。
最近のレースシーンでは、ヒジを大きく開くフォームをよく見かけます。しかし注意深く観察すると、ヒジを開いているのはバンク角がかなり深くなってから。つまり、先に説明した「瞬間セルフステア領域」でこそ、ハンドルをフリーにするためにヒジを開いているのです。
コーナリングで、旋回の初期段階からヒジをガバガバに開いてしまっていては、ハンドルに入力することはできません。
【マルク・マルケス】
世界GP125ccクラスで1回、Moto2で1回、MotoGPクラスで6回と、計8回世界王者になっているスペイン人ライダー。昨季は負傷で欠場が続いたが、今季復活優勝した。