青木宣篤のアドバンスド・ライディングテクニック【非セルフステアの世界:Part5】
ライディングテクニックの金科玉条として語られる、セルフステア。バイクが旋回する際にハンドルが勝手に切れるこの特性は、バイクに乗るにあたって絶対的に守るべき現象とされている。ライダーは、セルフステアを妨げないようにするべきだ、と。だが、ある速度域を超えると、セルフステアは弊害を起こし始める。高速域には、セルフステアを押さえ込む「非セルフステア」の世界があるのだ。いったいどのような世界なのだろうか?
【CAUTION】※プロフェッショナルレーシングライダーによる高度なテクニックを紹介しています。読み物として楽しむに留めていただき、くれぐれも実践はなさらないようにご注意ください。
下半身ホールドがすべての始まり
上半身を使ってバイクを操作するためには、下半身がしっかりとバイクをホールドしていなければなりません。テクニック②およびテクニック③で説明した動作は、下半身ホールドができていなければ不可能と言っていいでしょう。
バイクを操作するには、必ずどこかに力を入れる必要があります。そしてどこかに力を入れるためには、どこかに支えが必要なのです。
改めてテクニック③の悪い例をご覧いただきたいのですが、これは明らかにどこにも力が入っていません。体も支えられていないし、きちんとした入力もできていない。形だけのハングオフです。
見た目だけのフォームをマネするのではなく、いかに操作するかに重点を置き、そのためにフォームが形作られる、という十分が正しいのではないでしょうか。
スポーツライディングとは、バイクを自分の意思通りに操ること。意思を持つだけではなく、それをバイクに伝える技術を磨くことなのです。
公道で体感するなら高速の車線変更で
冒頭に注意書きを載せさせてもらっているように、非セルフステアは誰もにオススメするものではありません。もし実践したいなら、少なくともサーキット走行をしている方が対象となります。
しかし、当り前のようにバイクに起きている現象を活用しているだけのことなので、公道でも体感することは可能です。
もっとも分かりやすいのは、高速道路でのレーンチェンジでしょう。体重移動だけ、あるいはステップワークだけでレーンチェンジするのと、行きたい方向のハンドルを押して非セルフステア状態を作ってレーンチェンジするのとでは、軽快さが圧倒的に違います。
これがバイクを操ることのダイナミックな面白さです。怖くない程度に、ちょっとやってみてください。新しい世界が広がると思いますよ。