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高田速人さんのスポーツライディングブートキャンプ|Vol.7 いち早くコーナーから脱出する荷重コントロール

安全で効率の良い減速と加速を学んできた、Sport Riding Boot Camp。コーナリングの締めくくりとして、加速をテーマに取り上げることになった高田速人流の加速テクニックは、今回も“目からウロコ”の連発だ。

これまで高田さんは、コーナー進入時のブレーキングでは〝腕をつっぱる〞ことで、フロントタイヤのグリップを引き出し、コーナリングでバイクを〝曲げる〞ために荷重と抜重が重要だと教えてくれた。では、加速で何が必要かといえば、ポイントはシートへの荷重だという。やはり、ここでも〝荷重〞が肝なのだ。

「上手く立ち上がれないという人は、タイヤのグリップを感じとれていないという場合が多い。タイヤのグリップ感や設地感とは、タイヤが生み出す反力です。ブレーキをかけたり、荷重を載せたりすることで、サスペンションが縮みタイヤが潰れます。そこで発生する、押し返す力がグリップ感を生み出すんです。
コーナーを立ち上がる時、グリップ感がなければ、怖くてスロットルを開けられませんよね? そのせいで、思ったような立ち上がり加速を得られないという例が多いんです」 

では、加速体制でグリップ感を出すには、どうしたら良いのか? 高田さんは、ここで重要なのはシートへの荷重だと語る。

マシンを安定させて加速するには荷重コントロールが重要!

筑波コース1000の第4コーナー、高田さんの走行ライン。番号は上の走行写真の、おおよその位置を示す。各写真の解説と照らし合わせ、状況を理解して欲しい。バイクを“曲げ”たら、即加速体勢に入っていることがわかる
①コーナー進入時、まだブレーキを強く握りこんで“腕つっぱり”の状態。マシンのバンク角はかなり深くまで寝かせ込んでいるが、内足に荷重するステップワークでコントロール。荷重はフロントに載っている
肘が曲がっていることから、バイクを“曲げる”ポイントに向けて腕の力を抜き始めていることが見てとれる。ステアリングにしっかり舵角がついているのは、頭ごとコーナー出口を見据えて抜重した効果
コーナリングの課程で、バイクを“曲げ”ている瞬間。マシンの向きが完全に変わるまで加速し始めることはないが、駆動力に変化が出ない程度にスロットルを開け、加速体勢に入る準備を整えている
荷重がどっしりとリアタイヤに載り、完全に加速体勢に入っている。まだマシンは深くバンクしたままだが、実はスロットルは大きく開いている。クリッピングポイントに達した時には、ほぼ全開の場合もある
コースのアウト側ギリギリのライン目がけて加速。CBR1000RR-Rの大パワーに負けて、リアタイヤがスライドしはじめている。ここまでパワーを使うのは簡単ではないが、最終的にはこの領域を目指したい

「バイクを〝曲げ〞た瞬間に、車体にかかる荷重分布は、フロント寄りからリア寄りに移ります。タイヤのスライドを恐れて外足をやたらと踏ん張る人がいますが、加速に関しては効率が悪い。マシンをバンクさせるには、ステップ荷重が有効です。それは、ステップの先端がバイクのロール軸から最も遠い位置にあるから。テコの原理で、力点と支点が遠い方が少ない力で作用点の物を動かせるのと同じです。
加速では、リアタイヤを路面に対して押し付けたい。これは、ピッチング方向の動きですから、ライダーがマシンに荷重をかけられるポイントで、マシンの重心より高い位置にあり、ピッチ軸から最も遠いシートへ荷重することが有効なんです」 

では、どうすれば良いのかといえば、骨盤を後方に回転させるイメージで、尾てい骨をシートに押し付けるだけで十分な効果が得られるという。ここで気づいた人もいるだろう、そう〝腕つっぱり〞ブレーキングでの基本フォームと同じなのだ。ブレーキングとは違い、腕はつっぱらせずステアリングはフリーにしておく。そうしないと、マシンの二次旋回をスポイルする。マシンが加速体勢にある時、荷重のほとんどはリアタイヤに乗っているので、フロントはフリーな状態を保つ。そうすればセルフステアも活かせるのだ。 

加速というと、リアタイアに荷重をかけようと、着座位置を後ろに置く人がいる。リアに荷重する考え方としては間違ってはいないのだが、大切なのは着座位置ではなく、しっかりと荷重をかけられる乗り方だ。着座位置を無闇に前後させると、デメリットもある。一旦ステップ上で立ち上がり、そのまま腰を下ろした自然な位置がベスト、と高田さん。その状態から、骨盤を後方に回転させるイメージで、尾てい骨をシートの座面に押し付けることを意識する
着座位置を後ろにし過ぎた場合、荷重はリアタイヤを押し付ける方向に働かず、フロントのリフトを誘発しやすくなる。車体が不安定な状態を招くので要注意だ
着座位置が前過ぎると、リアタイヤへの荷重が足りずに、十分なトラクションを得られない。また、窮屈な姿勢をとることになるので、ボディアクションを阻害する
一見、適正な着座位置と姿勢がとれているようにも見えるが、尾てい骨が浮いた状態でシートへの荷重が足りていない。上半身も前のめり気味で、身体の自由度が低い

また、スロットルの開け方も重要だ。昔から、コーナーから速く立ち上がるためには、如何に早い段階からスロットル開けられるかがポイントだと言われてきた。その定説に高田さんは異を唱える。

「少しでも早く加速に持ち込もうとして、スロットルを開けるポイントが早いと、ラインがアウト側に膨らみ、曲がりきれなくなってスロットルを閉じることになります。最悪の場合はコースアウトです。バイクが旋回したら、スロットルを開けたい気持ちを抑えて、右手の操作に〝溜め〞を持つようにしてください。 
マシンが向きを変えたら、スロットルを開けるのは基本ですが、そこで準備期間を作ります。自分は、バイクを〝曲げ〞ている最中は、加速でも減速でもないレベルで、ごくごくわずかにスロットルを開いています。マシンの向きが完全に変わったら、そこでスロットルを開け始める。開け始めの段階でリアに荷重が移り、タイヤのグリップを確認したら、スムーズに可能な限り早く全開状態まで持っていきます」 

この時、注意すべきこともある。

「コーナーを立ち上がっていく時には、スロットルを開け始めてからは、ずっと開け続けていくように走りを組み立てることが基本です。途中でスロットルを閉じると、トラクションが抜けて旋回力が落ちますし、タイヤを路面に押し付ける力が弱まってグリップも落ちてしまう。サスペンションも不用意に伸縮するので車体に変な挙動が出て、マシンが不安定になる。速い遅いだけの話ではなくて、なにより危険なんです」 

いかにしっかり荷重できるか、スロットルを開け続けられるかが、効率の良い加速での要点というわけだ。

重要なのはシートへの荷重だ!

この3つの写真は、①から理想的な姿勢で加速した時、外足を外して加速した時、外足荷重を強く意識して加速した時のもの。外足を外した状態でも、しっかりとシートへ荷重しているので車体は安定している。外足への荷重でもリアタイヤは押し付けられているのだが、無理な姿勢なので、次のコーナーへのアプローチに問題が出ている。

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