ライディングフォームで怖さは軽減できる!
「スーパースポーツに対する過度な恐怖心は、ライディングフォームの見直しで克服できます!」
中野さんはこのように自信を持つ。
「そもそもライディングフォームというのは、理想の走りを実現するためにとても重要。ライパでも参加された方々にフォームチェックを実施していますが、もしもフォームが走りにそれほど影響を与えないなら、アレをやる意味はないですから」
そして、多くの一般ライダーをライパで〝診察〞してきた中野さんだからこそ、「何より気にしてほしいのは前後の着座位置!」と話す。「スーパースポーツはリア上がりの車体姿勢やシート形状になっていることが多いので、極端な〝前乗り〞になっている一般ライダーがとても多いんです。燃料タンク後端と股間の間にスペースがないと、直線で伏せるときにお腹がタンクにつっかえるし、ハングオフでイン側に体重移動して外足の内ヒザあたりでタンクをホールドすることも不可能。ライダーが自由に動けないので、結果的にバイクの挙動がおかしくなり、怖さにつながってしまいます」
これを克服するためには、「最低でもタンクと股間の間に拳が縦1個分収まるスペースを!」と中野さん。サーキットでヒザを擦るならこれでもまだ少ないことも。「一般ライダーに多いのは、静止状態のフォームチェックでは完璧なのに、実際に走ると前乗り……というパターン。走行中も定期的に自分の着座位置をチェックして、自由に動ける位置を探ってください!」
ちなみに中野さん自身、「なにか調子が悪いと感じたときは、ステップの上に一度立ち上がって座り直す」と話す。さらに、「公道でスーパースポーツを走らせていると、いつの間にか前乗りなんてことも……」と。一流のプロでもこういう感じなので、一般ライダーはより頻繁にセルフフォームチェックしたい。
動きやすい位置に座れれば怖さは軽減できる
バイクの上で自由に動けないことが、適正な操縦を妨げて怖さを生む要因になりやすい。とくに重要なのは、シートに座る前後位置。あまり後ろ過ぎても手が伸び切ってしまうが、前過ぎると燃料タンクに身体の動きをジャマされてしまう。「走っているときも定期的に確認を!」と中野さん
バイクに乗るときは毎回基準になるポジションを確認
プロライダーは、ピットロードからコースインするときなどに、適正な着座位置を“探って”いる。経験に基づく感覚的な要素も多分にあるので、一般ライダーが簡単にマネできない部分もあるが、まずはステップに立ってそこからスッと腰を下ろした場所を基準にすると、前後位置を把握しやすい。
直線でしっかり伏せればバイクとの一体感が高まり安心
「直線区間でしっかり加速することでペースが上がり、結果としてタイヤが温まって本来の性能を発揮し、サスペンションも動くようになるのでピッチングが生まれ、走りのリズムが掴めるようになります」と中野さん。そのためには、バイクをフル加速させて速度を上げても怖くないフォームを獲得することが大切。プロレーサーほど極端でなくてもいいからしっかり伏せて、マシンとの一体感を追求したい。そのためには、やや後ろに座ることも必須となる。
つま先をステップに置けばバイクの上でアクションしやすい
スポーツライディングでは、母趾球あたりでステップを踏んで入力し、シフトチェンジやリアブレーキ操作のときに“踏み替え”するのが基本。「そのほうがステップワークで力を入れやすいですし、そもそもハングオフのときには内側のステップをつま先で踏んでいないと、足をしっかり開けません」
グリップの握り方で動きやすさが変わる
肩から直線的に腕を伸ばすようにハンドルを握ると、ハングオンの際にイン側の肘が突っ張りやすく、低い姿勢を保ちづらい。また右コーナーでは、手首が返しづらくなりスロットルをうまく開けられない。「よく言われることですが、ハンドルは横から包み込むようなイメージで握るのが基本」という
コーナリング中は外側のヒジをタンクに添わせるイメージ
「ホールドしようと意識しすぎるのはハンドルに余計な入力をする可能性もあるのでNGですが、コーナリング中に外腕の内肘あたりを燃料タンクに密着させるようなイメージを持つことも、姿勢を低く保つのに効果的」と中野さん。手首やヒジを柔らかく使って実践したい。
外足のヒザの内側をタンクにしっかり押しつける
「ハングオフでは、外足の内ヒザあたりを燃料タンクにしっかり押しつけてホールドすることがとても大切」と中野さん。「そのためにはシートの適正な位置に座ることが重要で、前すぎると窮屈になって内ヒザホールドは不可能」とレクチャーする。旋回中も着座位置に注意。
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