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本質をズバリと説くライディングレッスン・青木宣篤のコア・ライテク【各種操作のツボ】

ライディングは、両手両足を駆使してバイクをコントロールするスポーツだ。だから「どう手足を使って操作するのか」は、ライテクの中心的な話題となる。しかし人の体格や筋力、柔軟性や可動域は文字通りの千差万別。万人に適応する操作法などない。ただし、押さえておきたいツボがあるのは確かだ。

【青木宣篤】長きにわたりグランプリで活躍。’97年、世界GP500ccクラスで新人賞獲得。ブリヂストン・MotoGPタイヤやスズキ・MotoGPマシン開発も務めた

情報に翻弄されることなく胸に留めてほしい真理

ライディングに関しては、諸説入り乱れながら、やけに細かい情報が飛び交っている。その最たるものが、各種操作に関するものだ。
 
実際、アオキファクトリーコーチングで一般ライダーの皆さんにレクチャーしていて「ブレーキレバーは何本指で握ればいいですか?」「ステップにはどう足を置けばいいですか?」といった質問を受けることは、非常に多い。
 
プロのレーシングライダーとして30年以上を過ごした私の経験上、ことサーキットにおけるスポーツライディングに限って言えば、結論はシンプルかつクリアだ。

「なんでもいいです」

答えはこれに尽きる。

各種操作とは、人の手足を使って行うものだ。そして人の体格や筋力や柔軟性や可動域は、人によってまったく違う。だから、その人にとって操作しやすい方法であれば、「なんでもいい」が真理だ。

「人にこう教わったから」「雑誌でこう読んだから」などという理由で、やりにくい方法にこだわる必要はどこにもない。

大事なのは、バイクをコントロールするために必要な力を、しっかりとバイクに伝えられているかどうか。そこさえ押さえておけば、あとはあなた次第、なのである。

右手(ブレーキング): 指は何本でも構わない

とかく争点になりやすい「ブレーキレバーは何本指で握るか」。「こうでなくてはならない」という決まりはない。ギュッと握ってフルブレーキングができれば、何本指でもOKだ。ただし、大事なのはしっかりと握り込むことができているかどうか。最近のバイクはレバー距離を調整できるので、できるだけ近付けた方が握り切れる]

1本指(人差し指)
1本指(人差し指)
2本指(人差し指/中指)
2本指(人差し指/中指)
3本指(中指/薬指/小指)
3本指(中指/薬指/小指)
4本指(人差し指/中指/薬指/小指)
4本指(人差し指/中指/薬指/小指)
1本指(中指
1本指(中指)

意識したいのは「握りつつ戻す」こと

ブレーキは減速のためのものであり、速度や姿勢をコントロールするものでもある。しかし、ただ握るだけでは、減速方向にしか操作していないことになる。微調整するためには、握りながらも戻すことを意識したい。ブレーキリリースの際も、ブレーキレバーのスプリング頼みではなく、自分の指の操作加減でしっかりコントロールする
ブレーキは減速のためのものであり、速度や姿勢をコントロールするものでもある。しかし、ただ握るだけでは、減速方向にしか操作していないことになる。微調整するためには、握りながらも戻すことを意識したい。ブレーキリリースの際も、ブレーキレバーのスプリング頼みではなく、自分の指の操作加減でしっかりコントロールする

右手(ブレーキング&スロットル):“人それぞれ”の極み

ブレーキングは、スロットルワークと重複する。私の場合、ブレーキレバーを握り始めてからスロットルを手から離すが、その時はスプリング任せでパッと全閉にしている。スロットルを戻してからブレーキをかけるライダーも多く、まちまちだ。

ブレーキング
スロットルワーク

足(ブレーキ&シフト操作): ステップの上で踊らせる

ステップへの足の置き方も、体格や柔軟性に左右されるので、人それぞれ。重要なポイントは、ステップ上で足を動かすこと。ドカッと足を置いてそれっきりでは、積極的なマシンコントロールができない。まずは「足は動かすもの」と意識してほしい

足(ブレーキ&シフト操作)
足(ブレーキ&シフト操作)
足(ブレーキ&シフト操作)

内足を外に開くのはNG

足(ブレーキ&シフト操作) 唯一やってはいけないのは、イン側のつま先を外に開くこと。内側にずらした体重を、効率よく車体に伝えることができないからだ。つま先を擦ってしまうという弊害もある

足(ステップワーク):基本はつま先立ち

ステップ上で足を踊らせるための基本は、つま先立ちだ。マシンホールドのパワーが増すし、足の動きの自由度も高まる。ただしこれも体格やシート高次第。土踏まずでステップを踏むのがちょうどいい場合もある。ペースが上がるほど、ステップへの入力の重要度が増すサーキット走行。自分なりに力を入れやすい場所を探そう。

足(ステップワーク)
足(ステップワーク)
足(ステップワーク)

左手&左足(クラッチ&シフト操作):今や過去のテクニック

最近のスポーツバイクの標準装備となりつつあるクイックシフターは、非常に優秀。クラッチを使うのは発進・停車の時ぐらいで、あとは機械任せの方がうまくいく。「クラッチワーク」という言葉自体が死語になりそうだ。

最近のスポーツバイクの標準装備となりつつあるクイックシフターは、非常に優秀。クラッチを使うのは発進・停車の時ぐらいで、あとは機械任せの方がうまくいく。「クラッチワーク」という言葉自体が死語になりそうだ
最近のスポーツバイクの標準装備となりつつあるクイックシフターは、非常に優秀。クラッチを使うのは発進・停車の時ぐらいで、あとは機械任せの方がうまくいく。「クラッチワーク」という言葉自体が死語になりそうだ

マネできる(かもしれない)操作の天才:ケーシー・ストーナー

ストーナーの走りはギュッと減速してグリッと向きを変え、ビュンと立ち上がるという「V字コーナリング」。そのV字度合いを天才的に尖らせていたのだが、操作自体は比較的オーソドックス。マネでき……ないな……

マネできない 操作の天才:ホルヘ・ロレンソ

ロレンソの走りは「旋回速度命」。MotoGPライダーの中でも特に深いバンク角でコーナリングしていた。その状態で操作をするのだから、ほんのわずかなミスが命取りになるほど極めて繊細。常人にはマネできない

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